第196話 安全重視
冒険者ギルドに辿り着いた。
街の中にダンジョンがあることもあってか、冒険者ギルドは街のド真ん中に構えている。
さらに、王都と比べても倍はある大きさで、この街の中心がダンジョンであることを、まるで冒険者ギルドが示しているかのようだった。
しばらくの間、冒険者ギルドに目を奪われつつも、俺たちは中へと入っていった。
「外観もすごかったけど、中はもっとすごい! 最新の技術が詰まってる感じがするね!」
「確かにすごいな。魔法壁に魔法陣、硬度の高い材質の扉……あの先にダンジョンがあるんだろうが、絶対に魔物を通さないという強い意志を感じる」
「街の中にダンジョンがあるのに、これだけ人で賑わっている理由が分かりますね。城門も要塞みたいでしたし、他の街よりも安全と言えるかもしれません」
「実際に安全なんじゃない? 強い冒険者とかも集まるだろうしさ!」
ダンジョンが冒険者を呼び、その冒険者を相手に商売をするために商人が集まる。
冒険者は商売相手として優秀なだけでなく、用心棒としても頼れる存在だ。
賑わっていて、どの街よりも安全となれば、一般の人々も足を運ぶだろうし、人が集まれば新たな商売も生まれる。
安全を最重視したことで、ダンジョン街でありながらもここまで発展したのだろう。
「リュネットは相当な切れ者のようだな」
「王都に集まっていたギルド長の中で、唯一頭が良さそうだったもんね! 色々考えてそう!」
圧巻の冒険者ギルドを見て、そんな感想を言い合いながら、俺たちは受付でギルド長室の場所を尋ねることにした。
面倒なやり取りを挟むことも覚悟していたが、リュネットが事前に話を通してくれていたようで、すんなりとギルド長室まで案内してもらえた。
「リュネット、久しぶりだな」
「グレアムさん、ジーニアさん、アオイさん。ダンジョン街まで足を運んでいただき、ありがとうございます」
「そんなに遠くなかったし、用意してくれた馬車がふわふわだったから、全然気にしなくていいよ!」
「ですね。私たちにとっては、むしろいい機会をいただけたという感じです」
「そういうことだ。来たくて来た部分もあるし、本当に気にしなくていい。それより、呼び出した理由はなんだ?」
深々と頭を下げるリュネットに、三人で声をかける。
形式上は呼ばれて来たかたちだが、実際には俺たちも来たくて来たのだからな。
「そう言っていただけて助かります。今回、ダンジョンに現れたある魔物の討伐をお願いしたくて、こうしてお声をかけさせていただきました」
ダンジョンに現れた魔物の討伐……?
突然、変な魔物が出現したということだろうか?
あるいは、未踏の階層にいる魔物の討伐という可能性もある。
ダンジョン街には【バッテンベルク】を含め、多くの冒険者がいる中で、わざわざ俺たちに依頼を出したということは、相当な強敵であるに違いない。
「とある魔物? 未踏の階層にいる魔物の討伐か?」
「未踏の地であれば、わざわざ依頼は出しません。中階層にて未知の魔物が出現し、その魔物による被害が大きいのです」
「中階層に現れた未知の魔物か。俺たちはそいつを見つけ、討伐してくればいいんだな」
ダンジョン内で死んでも復活できるということは、王都のダンジョンで経験して知っている。
そのため死者は出ていないだろうが、全滅すれば装備を含めたアイテムをすべて失うため、被害は甚大だろう。
「その通りです。グレアムさんとも面識のある【バッテンベルク】も、その魔物にやられています。詳しい情報を持っているはずですので、まずは【バッテンベルク】から魔物についての情報を聞いてください」
「分かった。詳しい話は【バッテンベルク】から聞かせてもらう」
【バッテンベルク】がやられているとは意外だった。
王都で手合わせした際も、強者の部類に入る冒険者パーティだった。
その【バッテンベルク】がやられたということは、その未知の魔物はやはり相当な強さなのだろう。
「報酬については、こちらでいろいろと準備させてもらいますので、期待していてください」
「やったー! どんな報酬がもらえるんだろう!」
「報酬の前に、依頼を達成できるかを考えないといけないだろ」
「でも、グレアムがいれば達成できるじゃん!」
「ははは、すごい信頼関係だね。もうすでに、依頼して良かったと思えているよ」
「信頼というか……ただの事実ですからね!」
「そう! グレアムが負ける姿なんて想像できない!」
「それを信頼って言うと思うんですが……違いますかね」
ジーニアとアオイは真っ直ぐな目でそう言い切った。
リュネットは楽しそうに笑い、どこか安心しているようにも見える。
みんなの期待に応えられるよう、今回の依頼も失敗はできないな。
その後リュネットと軽く雑談を交わし、話を聞くために、俺たちは【バッテンベルク】のもとへ向かうことにしたのだった。
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