第199話 ブレンビア
ロコランテからブレンビアまでは意外と近く、三時間ほどで到着した。
街の規模は小さく、ギリギリ村ではないといった感じ。
ただ、ほのぼのとした雰囲気を感じられ、フーロ村味があるから俺は嫌いじゃない。
そんなブレンビアの街の雰囲気を味わいつつ、ロコランテと同じようにまずは冒険者ギルドを探すことにした。
あまり大きくない街のため、冒険者ギルドがあるのかどうか不安ではあったが、どうやらこの街にも冒険者ギルドはあるらしい。
これまで訪れた冒険者ギルドとは違い、大きな掘っ建て小屋のような建物の前の看板に冒険者ギルドと書かれている。
この街の中では一番大きな建物なのだろうけど、建物の質はかなり低い。
とりあえず、中に入ってみることにした。
ギルド内は思っていたよりもちゃんとしており、受付や依頼用のボードも設置されてある。
人の数は少ないながらも、ちゃんと冒険者らしき人がチラホラと見えるため、ちゃんと機能はしているようだ。
「いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ。ここは総合受付となります」
ビオダスダールや王都では、受付ごとに役割が分かれていたけど、ここは総合受付のようだ。
こちらとしては分かりやすいからありがたいな。
「いきなりですまないが、俺はとある魔物を探している。流星魔鳥という魔物なんだが、何か知っている情報はないか?」
色々探りを入れても仕方がないため、俺は直球で質問を投げかけてみた。
平穏な雰囲気だったのだが、流星魔鳥という名前を聞いた瞬間、場に緊張が走ったのが分かる。
周囲にいた冒険者たちもこちらを見ており、朗らかな笑顔を浮かべていた受付嬢も渋い表情。
この反応だけで、手配書の情報は間違っていなかったと確信できた。
「……もちろん存じております。ロコランテ近辺に現れる魔物でして、非常に危険で厄介な魔物ですね」
「知っているなら良かった。是非、流星魔鳥の情報を教えてくれ。俺は流星魔鳥を討伐すべく、ビオダスダールからやってきた」
「流星魔鳥を倒すため、王国五大都市の一つであるビオダスダールからわざわざお越しになられたのですか? ありがとうございます! 流星魔鳥には長年困らせていましたので、本当にありがたい限りです!」
緊迫した空気が流れていたのだが、ビオダスダールからやってきたという言葉だけで一気に空気が晴れやかになった。
ビオダスダールが五大都市というのを知らなかったけど、王都に集められたのは主要都市の冒険者とはギルド長から聞いた気がする。
とにかく、ビオダスダールの街の規模が大きいお陰で、話をスムーズに進めることができそうだ。
「そういうことなら、早速情報を頂きたい。まず流星魔鳥はどこに出現するんだ?」
「ここから北に進んだ先にある、デナリフェルマウンテンという場所を棲家にしております。ただ、この山からは頻繁に下りてきまして、公道で人を襲っていますので……わざわざデナリフェルマウンテンまで行かずとも、公道を北に進んだ先で数日張っていれば出くわすことができるはずです」
「そこまで滞在する予定はないから、デナリフェルマウンテンという場所まで赴かせてもらう。次に流星魔鳥の特徴についてを教えてほしい」
「流星魔鳥は毛の色が鮮やかな青色の鳥の魔物です。体長は五メートルほど。見た目は鷹にも似ておりまして、鋭いくちばしと爪を持っています」
「五メートルほどの体色が鮮やかな青色の鳥の魔物か。その魔物を狩ってくればいいんだな」
上空に逃げられたら厄介そうだが、重力魔法で落とせばいいだけ。
先日、ワイバーンゾンビと戦っているし、倒すのにそう苦労はしないだろう。
比較して、流星魔鳥の方が強そうであれば、ジーニアとアオイを連れてくることも考えよう。
飛行する魔物との連戦になってしまうが、いい機会なのは間違いないからな。
「滑空してくる速度が凄まじく速く、それゆえに流星と名付けられております。捕まり、上空まで運ばれたら助かりませんので、くれぐれもお気をつけください」
「ご忠告感謝する。気をつけて挑ませてもらうよ」
俺はお礼を伝えてから、早速デナリフェルマウンテンへ向かおうとしたのだが、受付嬢に呼び止められた。
「少しお待ちください。正式に依頼としてお願いしたいので、冒険者カードの提出をお願いできますか?」
「いや、報酬を受け取る気がないから、正式な依頼は出さなくて大丈夫だ」
もちろん、討伐した流星魔鳥の素材は頂くが。
ということで、俺は冒険者ギルドを後にしようとしたのだが、受付嬢は頑なに折れない。
……依頼として出してもらい、報酬は受け取らずに帰ればいいか。
「分かった。依頼として受けさせてくれ。これが俺の冒険者カードだ」
ここで時間を使いたくないという気持ちもあったため、言われた通り冒険者カードを提出したんだが、受付嬢は固まってしまった。
何かまずいことがあったのかとも思ったが、理由はすぐに判明した。
「B級……冒険者……?」
「B級では受けられないみたいな決まりがあるのか?」
「い、いえ! ですが、B級冒険者ならこの街にも……いえ、なんでもありません」
ほぼほぼ言われてしまったが、全部は言わずにいてくれた。
あれだけ大物面しておいて、B級冒険者だから失望させてしまったようだ。
これでも最速のB級昇格なんだけども、俺の風貌は完全なベテラン冒険者。
いかにもなベテラン冒険者が、B級だったら失望されても仕方がない。
まぁ自分で言うのは少し抵抗があるが、実力は確かだと思うし、一度期待させたからには結果で返そう。
依頼の手続きをしてもらってから、俺は今度こそデナリフェルマウンテンを目指して出発したのだった。
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