第20話 歓声
【不忍神教団】の構成員の声が大半の中、誰よりも声を張り上げているのはジーニア。
気絶するのではと思うぐらいの叫びっぷりで少し心配になる。
浴びせられる大歓声に少し恥ずかしくなりつつも、俺はジーニアとリーダーらしき男のいる場所に戻った。
「凄いです! グレアムさん、本当に凄いですよ!! 私、ここまで興奮したの初めてです!」
「そんなことはない。ジーニアもいつかはできるようになる」
実際にこの場には実力者がいなかっただけで、俺自身今の動きに満足できていたかと問われたら首を捻らざるを得ない。
両腕を使えていた頃はもっと速かったし、動きとしてはやっぱりいまいちなんだよな。
今回は普通のゴーレムだったから良かったが、パーティメンバーであるジーニアをしっかりと守れるようにするためにも、年齢を理由に怠けることはせず強くならないといけない。
「いやいやいやいや、今の私では全然そんな未来が見えないですよ!」
「俺もこの域に達したのは三十を超えてからだ。元々できた訳じゃないし、努力次第でなんとでもなる」
「やっぱり努力が何より必要なんですね……! 私も精一杯頑張ります!」
「ああ、頑張れ。ジーニアが求める限り、俺もできる限りの指導はするつもりだ」
「――と、話しているところ悪いですが、助けてくれて本当にありがとうございました! あなたのお陰で命拾いすることができました!」
ジーニアと熱い話をしていた中、タイミングを見失っていたリーダーらしき男が無理やり会話に入ってきた。
心情的には話の良いところで邪魔するなと言いたかったところだが、一人放置していたのは悪かったか。
「いや、助けると約束したからな。それよりも俺との約束は覚えているよな? もし約束を破るって言いだすようなら……」
「――も、もちろん約束は守らせて頂きます!! も、もう【不忍神教団】からも脱退しますし、私だけじゃなくてこの場にいる他の構成員達も同じ意見だと思います! だ、だから、どうか手荒な真似だけはご勘弁ください!!」
地面に頭を擦り付けながら、脱退宣言までしてきたリーダーらしき男。
戦闘が始まる直前はボロクソに文句を言ってきた訳で、ここまで態度が変わるとつい疑ってしまうな。
「その言葉、本当か? ゴーレムと戦う直前に文句を垂れていたのを俺はちゃんと聞いているぞ」
「い、いや、あれは……。す、すいません! 死ぬかもしれないって思っていた時でしたので、色々な感情が口に出てしまっただけなんです! 本当にもう【不忍神教団】からは足を洗いますので、どうか信じてください!」
おでこから血が出るくらい地面に擦り付け始めた。
言葉も本気のようだし、ここまで頭を下げるなら……信用してもいいのかもしれない。
「……分かった。まずはお前の名前を教えてくれ」
「私の名前ですか? 私はマックス・ラドクリフと申します!」
「マックスだな。名前はしっかりと覚えさせてもらった。もし俺との約束を破るようなら――皆までは言わなくても分かるよな」
「わ、分かってます! 絶対に約束は守ります! あれだけのお力を見て、約束を破るなんて恐ろしい真似は絶対にできません!」
「そうか。なら信じさせてもらう」
俺はマックスに手を差し出し、握手を交わした。
「ありがとうございます! 助けてもらったこの御恩は一生忘れません! あなたのお名前は何というのでしょうか」
「俺はグレアムという名前だ」
「グレアム様ですね。グレアム様……。完璧に覚えました! 王都に来る機会があった際は顔を見せてください。私が案内させて頂きます」
「機会があったらよろしく頼む。それより、マックスはこれからどうするんだ?」
「とにかく今いるメンバーを束ね、一度王都に戻る予定です! そこからはすぐに【不忍神教団】を抜けます!」
別に抜けろとまでは約束させていないのだが、悪い組織なら抜けた方がいいだろうし止める必要もないか。
「それじゃ特に護衛とかはいらないな。俺達は別の依頼が残っているからもう行かせてもらうぞ」
「はい、ここから先は大丈夫です! 本当にありがとうございました!」
「約束さえ守ってくれればお礼なんていらない。それじゃ俺達は行かせてもら――」
話をここで切り上げ、ジーニアと共にこの場所から離れようとしたのだが、【不忍神教団】のテントの一つが跳ねるように動いており、口ごもっているような感じで非常に聞こえづらいが、助けを呼んでいるようにも聞こえる。
これは流石に怪しすぎるし、このまま放置して帰るってことはできないな。
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