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第176話 フーロ村の人たち


 ナギとランとの最後の模擬戦も終え、早い気もするが俺はビオダスダールに戻ることにした。

 魔王軍に関しての有力な情報も得られたし、何よりフーロ村のみんなが元気だったのが一番の吉報。

 

「グレアムさん、もう行っちゃうんだぁ……! もう少しゆっくりしていけばいいのに!」

「そうそう。中々帰って来られないでしょ?」

「ゆっくりしたいのも山々だけど、色々とやらないといけないことがあるんだ。フーロ村は平和になったけど、国の中心部は逆に危険が増えているからな」

「そうなの? 鬼人族の話じゃ、そんな感じはしなかったけど!」

「他方から戦力を集めているって言っていただろ? 魔王軍が様々な魔物を見境なく招集していることもあって、魔物の動きが活発化しているんだよ」

「へー。魔王の領土付近の動きはなくなったけど、逆に魔王の領土から離れた場所の魔物が活発になっているって感じなんだ」

「そういうことだな。幹部クラスの魔物も出張っているみたいだから、色々と目を光らせないといけない」


 まぁ幹部クラスといっても、俺がフーロ村で相手していた魔物と比較すると非常に弱い魔物。

 恐らくだけど、エルダーリッチワイズパーソンやフェンリルロードといった名がある魔物は全て俺が倒したため、弱い魔物を幹部に据えるしかないのだと思う。


 これまでの魔王軍の動きとクーガーからの情報を照らし合わせると、魔王が何とかして魔王軍を復興させようとしているのは伝わってくる。

 ただ、魔王軍との死闘を経験した身からすれば、魔王軍の復興は絶対に避けたい。

 これからは魔王軍の邪魔をすることも視野に入れ、今後の動きを決めていくことになる。


「そんな状態なんだ。フーロ村だと本当に外部の情報が入ってこないから、他の村や街がそんなことになっているなんて知らなかった」

「俺もフーロ村で長年過ごしていたから、ここに情報が入ってこないことはよく知っている。ここまでの道のりを考えても、迷って辿り着く――なんてことすらあり得ないからな」

「ここってそんなに辺境の場所にあるんだ! 私達はそのことすら知らないからなぁ!」

「この間も話したと思うが、最寄りの村まで歩いたら一週間。走っても三日以上かかるからな。それに道のりは険しいし、フーロ村に近づくにつれて魔物も強くなる。常人じゃ途中で死んでしまうのは確実」

「フーロ村の付近の魔物が強いのも初めて知った! それだけ遠かったら、わざわざ来る人なんていないよね!」


 わざわざ来る人――というか、そもそもフーロ村は完全に忘れ去られている村。

 何十年……いや、何百年と外部から人が来ていないだろうから、忘れ去られても仕方がないとは思うが。


「ね。フーロ村付近の魔物が強いってことは、中心部に行けば魔物は弱くなるの?」

「この辺りの魔物と比べたら驚くくらい弱いぞ」

「そうなんだ! てことはさ、グレアムよりも強い人とかっていないの?」

「今のところは出会っていないな。村の中で強いだけと思っていたが、この国の全体で見ても強い方の人間だということには俺も最近気が付いた」

「へー! 全部グレアム一人で倒してたし、絶対におかしい強さだと思ってはいたけど、ちゃんと最強だったのは安心したかも!」

「確かに。私達もそれなりに強い方?」

「めちゃくちゃ強い方だと思うぞ。フーロ村付近の魔物を倒せる人も早々いないだろうからな」

「なんか嬉しいかも! 比較相手がグレアムだったから、まだまだ強くないと思っていたし!」

「ん。グレアムは強すぎる」


 二人は俺を褒めてくれているが、俺の年齢くらいになったらナギとランの方が強くなっている可能性は大いにあると思う。

 こういった話をしていて改めて思ったが、俺も含めてフーロ村の人たちの強さはおかしいと思う。


 近くにいる魔物が強いから、生きるために強くならなくてはいけないというのもあるんだが、それにしても強さの平均値が非常に高い。

 何も指導していない子供たちの身体能力が既に高いからな。


 親が強いから子供に受け継がれているだけという考えもできるけど、世界を知ったからこそ他に理由がありそうな気がしてきた。

 まぁ文献とかが残されていない限り、いくら考えても分からないだろうけど。


「とりあえず二人はちゃんと強いから安心していい。認めているからこそ、フーロ村を任せられるんだからな」

「なら、最後の模擬戦は勝たせてほしかった。魔法を使わなければ私達が勝ってた」

「そうそう! 花を持たせるのが普通じゃん!」

「俺なりの花を持たせたんだ。それじゃ――俺はもう行くからな」


 このまま話していてもキリがないため、大人げなく魔法を使ったことをつつかれたタイミングで去ることにした。

 別れは尾を引かせれば引かせるほど、悲しくなってしまうしな。


「……グレアムさん、無事でいてくれて良かった! また帰ってきて、元気な姿を見せてね!」

「私達も若い芽を育てる。ちゃんと育ったら、連れていって」

「間隔を空けずに戻ってくるよ。後進の育成を楽しみにしている」


 ランとナギにお別れの言葉を告げてから、俺はフーロ村を後にした。

 旅立った時と同じく、ナギとランだけでなく村のみんなが見送りに来てくれ、以前のような悲しい気持ちではなく――。

 俺は清々しい気持ちで、ビオダスダールに旅立つことができたのだった。


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