第18話 不忍神教団
「いい戦いっぷりだった。昨日はゴブリンに怯えていたとは思えないほど、すっかり戦いにも慣れてきたな」
「グレアムさんのお陰です! 本当に危険な時は指示に従っていればいいって安心感もあって、自由に楽しく戦えています。戦うことにドハマりしそうですよ!」
「楽しいと思うのは良い事だが、あまり油断はし過ぎるなよ。俺でも助けられないことだってあるからな」
「はい。命は大事ですので十分に気をつけて戦います! ……それより、例の大人数がいる地点ってまだなんでしょうか? もう結構歩いてきてますよね?」
「あと十五分くらい歩いた先にいるぞ。ただ何か戦闘を行っているようなのが少し気掛かりではある」
「何かと戦闘? 魔物とでしょうか」
「魔物っぽい気配だな。人間側の気配の数が減っているし、少し急いだほうがいいかもしれない」
戦っているであろう魔物の方の気配も大したことがないのだが、四十人以上いても対応できていないのが一切連携の取れていない動きで分かる。
気配も徐々に消えており、魔物にやられていることが分かるため少しだけ急ごう。
あくまでも大事なのはジーニアの命のため、支障が出ないように少しペースを上げ、大人数が集まっている場所に向かった。
道中で出会った魔物は俺が一撃で仕留めながら進み、気配を感じ取った場所に辿り着いた。
気づかれないように遠くから見ているのだが、何だか俺が思っていたのとは様子が違うな。
気配が弱いから困っている一般人かと思っていたが、ここから見た限りでは【不忍神教団】にしか見えない。
「うわっ! 本当に大勢の人がいましたね。山岳地帯の入口からこんな先まで感知したって凄すぎませんか?」
「それより、俺が思っていたのと少し様子が違った」
「え? どういうことですか?」
「多分だが、あそこにいる人達は【不忍神教団】の連中だと思う。木で柵を囲っている中に盗品のようなものが見える。それと、恰好も如何にも盗賊って感じの衣装だ」
基本的に黒い装束のような服で、大半の人間がターバンで顔を隠している。
一般の人間の可能性もあるけど、わざわざこんな怪しい恰好はしないだろう。
「そうなんですか!? 【不忍神教団】だとしたら近くにマークみたいなのありませんか? 特徴的なマークを掲げているんです」
「あー、大きな目を背景に両手を合わせたようなマークの旗がある」
「うわっ、間違いなく【不忍神教団】のマークです! でも、なんで南にいるはずなのにこんな山岳地帯にいるんでしょうか」
「分からないが、南と北の二手に分かれて襲うつもりだったのかもな。強い力を持つ人間も見当たらないし、別動隊ってところだろう」
「なるほど……。それでグレアムさんはどうするんですか? 助けるんでしょうか?」
そこが一番の問題である。
掲げているマークが【不忍神教団】のものと分かった以上、別動隊とはいえ悪い人間の集まりなのは間違いない。
ただ、悪い人間とはいえ同じ人間。
襲っている魔物は普通のゴーレム三体と大したことない魔物だし、サクッと助けてあげても良い気もする。
「半数近くやられているようだし、手出ししないことを条件に助けてあげてもいいかなと思っている。ジーニアはどう思う?」
「確かに悪い人間とはいえ、見過ごすのは寝覚めが悪いですもんね。グレアムさんが助けると決めたなら反対はしませんよ」
「なら助けようか。あれだけ派手にやられていたら、俺達に反抗する力もないだろうし」
「でも、肝心の魔物の方は大丈夫なのですか? 襲っている魔物に見覚えがありまして、ゴーレムっていう凶悪な魔物なはずなんですけど」
「ミリオンゴーレムなら骨が折れるが、普通のゴーレムなら何ら問題ない。ジーニアは俺の後ろで見ていてくれ」
「分かりました。戦いを見て勉強させてもらいます!」
物理攻撃に高い耐性を持ちながら、魔法を完全無効するミリオンゴーレムでない限り、俺が苦戦を強いられることはない。
普通のゴーレムも斬撃が多少効きづらくはあるが、魔法が超特効だからな。
今のところは刀でぶった斬るつもりだが、いざという時のために魔法をいつでも使える準備をしておく。
俺は左腕があった場所に念のための魔力を這わせながら、襲われている【不忍神教団】の下に歩いて向かった。
「まずは右のゴーレムから倒せと言っているだろ! だから――無駄に近づくなッ! 遠距離から攻撃を……くっそ。なんでこんなところにゴーレムが現れやがったんだ!」
リーダーらしき男が必死に指示を飛ばしているが、半数以上やられているせいでパニック状態となっており、指示に従わずに特攻しているような状態。
その無駄な特攻のせいで新たに二人がやられ、リーダーらしき男の目は諦めの色が見えたのがこの位置からでも分かった。
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