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第120話 スズメ


 魔王軍の第六陣は虫系の魔物で構成されたインセクト軍。

 上からだとよく分かるが、弱い魔物は一塊となっていて比較的強い魔物は軍の弱点を補うようと配置になっている。


 これまで戦った軍も配置がしっかりとしていたし、後ろで誰かが指示を行っているのは確実。

 まだまだこの軍のトップは見えないが、魔王に近しい魔物であることは間違いない。


 ちなみにだが……第六陣の主な魔物はアイスシザー、イービルフライ、アーマーアントの三種。

 この三種の魔物を補うように配置されているのがヴェノムセンチピードであり、そしてこの軍を指揮しているのが――パラサイトマタンゴ。


 パラサイトマタンゴだけは虫系の魔物ではないのだが、自身の胞子で虫系の魔物を操作することができるため置かれているのだろう。

 高い知能を持たない虫系の魔物がしっかりと隊列を組めているため、既にパラサイトマタンゴが操作している可能性すらある。


 高い位置から一通りの魔物を観察していると、先頭を走っていたサリースの攻撃を皮切りに戦闘が開始された。

 既に冒険者を引退してギルド長に転身しているというのに、切り込み隊長を担うとは本当に肝が据わっている。


 攻撃を行った後も後ろに下がる気配はなく、ドンドンと魔物を斬り裂きながら進んで行っている。

 流石は元Sランク冒険者なだけあって、今のところやられる姿が想像できない。


 他の冒険者達も現Sランク冒険者であり、士気も驚くほどに高いため大量にいる虫系の魔物に負けていない。

 先頭を突き進むサリースに続くように魔物達を倒しており、俺のサポートがなくとも何とかなりそうな勢いだが……俺にできることはやるべき。


 更に見晴らしのいい高所に移動してから、強敵であるヴェノムセンチピードに狙いを定める。

 人も密集しているため、使う魔法は【浄火】一択。


 【浄火】の中でもどの魔法を使うかだが……【浄化・夜雀よすずめ】が最適だろう。

 魔力を練りながら詠唱を開始。


 標的であるヴェノムセンチピードに狙いを定め、俺は【浄化・夜雀よすずめ】を放った。

 黒の混じりの浄火で形成されたスズメが一斉に飛び立ち、ヴェノムセンチピード目掛けて上空から突っ込んでいく。


 機動力があり、数も多い【浄化・夜雀よすずめ】。

 普通のスズメなら捕食対象だろうが、浄火で形成されたスズメは狙う側。


 近づく【浄化・夜雀よすずめ】に気がつき、対処しようと体をうねらせたヴェノムセンチピードだったが――速度を緩めることなく、猛スピードで突っ込んできた【浄化・夜雀よすずめ】に対応できずに直撃。

 ぶつかったところから一気に燃え上がり、死ぬまで消えることのない炎によって燃やされた。


 夜雀を選んだことも含めて完璧。

 魔力の消費はかなり大きくはあるが、狙いどおり各所に配置されていたヴェノムセンチピードのほとんどを焼き殺すことに成功。


 アイスシザー、イービルフライ、アーマーアントの三種には難なく対応できているし、残る脅威はパラサイトマタンゴのみだな。

 パラサイトマタンゴも【浄火】で焼き尽くしたいところだが、虫系の魔物を操作して壁のようにしているため、この位置からでは狙うことができない。


 【浄火・狛犬】を使えば、何とか掻い潜ることもできるかもしれないが……成功率を考えたら行うべきではないだろう。

 まだまだ魔王軍は奥におり、無駄な魔力の消費は抑えたいからな。


 ここからは【ファイアアロー】でアイスシザー、イービルフライ、アーマーアントの三種を射ることだけに集中し、パラサイトマタンゴについては冒険者達に任せるとしよう。

 そうと決まれば、無心となって射抜くのみだ。




□□□




「本当に凄いですね……! 下で戦っている俺達全員合わせても、上からサポートしているグレアムさんの方が確実に魔物を多く倒していますよ!」

「それだけじゃなく、強敵を狙って倒してくれているからな。グレアムさんを休ませるって意気込んできたはいいものの助けられっぱなしだな」

「落ち込んでいる暇はないぞ! 奥にいるパラサイトマタンゴだけはグレアムの位置からでは狙えない! あいつは私達で仕留めなきゃ、第六陣を退けたとは言えないからな!」


 そう声を掛けたのはサリースであり、緩みかけていた冒険者達の心が再び引き締まった。

 ただ、どう切り崩すのが正解なのかはサリースにも分かっておらず、このまま真正面から突っ込んでも被害が大きくなるだけなのは火を見るよりも明らかだった。


 それだけパラサイトマタンゴは強力であり、討伐推奨Sランクの厄介な魔物。

 近くにいる魔物を意のままに操り、人間に対しては胞子による毒での攻撃。


 その上単純な戦闘能力も高く、パラサイトマタンゴの独壇場とも言えるこの状況下だと、Sランク冒険者が束になっていても厳しい戦いになるのは明白。

 そんな八方塞がりの状況で――手を上げたのは【白の不死鳥】のジュリアンだった。


「私が特攻隊長として自爆覚悟で突っ込みます。死ぬことができる私が適任——ですよね?」

「……ジュリアンに任させてもいいか?」

「ええ、大丈夫です。グレアムさんとの戦闘を切っ掛けに、面白い力の使い方を思いつきましたので期待していてください」


 ジュリアンはそう言って笑うと、軽く【白の不死鳥】の面々と会話をしてから――パラサイトマタンゴが形成している魔物の塊に突っ込んでいった。

 サリース達も遅れを取らないよう、先頭を走るジュリアンの少し後を追ってパラサイトマタンゴの下に向かった。



ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!

『ブックマーク』と、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです<(_ _)>ペコ

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