第12話 グレイトレモン
「本当に凄すぎますよ! 魔物がどの位置にいるのか完璧に分かるんですね!」
「この森には気配を隠さない魔物しかいないからな。ジーニアは色々なことに驚きすぎだ」
「だって、私達の前が勝手に開けていくようにしか見えないんですもん! これを驚かない方がおかしいですよ!」
既に森の中心部に辿り着いており、魔物も合計五十匹は倒したと思う。
全ての魔物を斬撃を飛ばして殺しており、ジーニアの目線では敵が勝手に倒れているようにしか見えないということもあってか、テンションがおかしなことになっている。
まぁ、森に入る前から少しおかしくなってはいたが。
「それよりもグレイトレモンはまだ見つかっていないのか?」
「ちゃんと探してはいるんですけど見つからないですね。時期じゃないとかあるんでしょうか?」
「その辺りも含めてさっぱり分からない。でも、時期じゃなくて採取できないのであれば依頼は出されないと思うぞ。それに受付嬢さんもおすすめしてこないはず」
「あー、確かにそれはそうですね! もう少し根気よく探して見ましょうか」
それから更にグレイトレモンを探して歩き回ること一時間。
少し開けた場所に出た時にジーニアが指をさしながら叫んだ。
「グレアムさん、見つけました! あの橙色の果物がグレイトレモンです!」
「ここまで見つからないと思っていたら、一気に見つかったな」
グレイトレモンの木はいくつも並んでおり、恐らく視界に入っている分だけでも百個くらいは成っている。
点々としていなかっただけでもありがたいが、できるならもう少し手前に生えていてほしかったな。
この森に大した魔物はいなかったし危険を感じることはなかったが、単純に変わらない風景の中を歩くのが大変だった。
「手前に生えていたものは全て採られていたんですかね? とりあえずこれで依頼達成ですよ! 初めて依頼を達成することができそうで嬉しいです!」
「俺もこれが初めての依頼達成だな。せっかくだし、少し余分に採取するか?」
「いいですね! 私達が食べる分と、受付嬢さんにあげる分も採りましょう。ここまで何もしていませんし、私が木を登って取ってきますね」
「いや、大丈夫だ。枝の部分だけ狙って斬るから、ジーニアは下でキャッチしてくれ」
「えっ! そんな細かいところをピンポイントで狙えるんですか?」
「人に当たったら危ないし、かなり練習したんだよ」
「戦闘中でしか使わない技だと思うのにその気遣いができるのは、流石グレアムさんです!」
俺はジーニアに指示を出して真下に誘導しつつ、グレイトレモンの枝部分を綺麗に斬っていく。
風が吹く度に実が揺れることもあって、道中で倒した相手に行うよりも難易度が高く、この作業は意外に面白い。
一種のゲーム感覚で斬撃を飛ばしてはグレイトレモンの採取を行い、計二十個のグレイトレモンを採ることができた。
依頼関係なしに売ることもできそうだし、もう少し採ることも考えたが……とりあえずこんなものでいいだろう。
「これで依頼は完了だな。あとは無事に冒険者ギルドに持ち帰るだけだ」
「ですね! 受けた依頼全てでてんやわんやしていたので、こんなあっさりとクリアできるなんて夢みたいです!」
「やっぱりパーティを組んだっていうのが大きいんだろうな。俺もジーニアがいてくれて助かった」
「本当ですか? 私、何にも役に立っていないと思うんですが……」
「いや、グレイトレモンを見つけてくれただけでも大きい」
「うーん。そうですけど、グレアムさんに任せっきりで申し訳なさが勝っちゃいます」
「なら、帰り道はジーニアが戦闘をするか?」
俺がそう提案すると、ジーニアの表情が一気に強張った。
この程度の魔物相手ならいつでもサポート可能なため、ジーニアに経験を積ませてあげることができる。
「ほ、本気で言ってます? 私、普通のゴブリンにも負けているんですよ!」
「俺がついているから大丈夫だ。最初は指示も出す。ジーニア、やってみないか?」
「うぅ……。グレアムさんにそう言われたら断れません! ご迷惑をおかけすると思いますが、戦わせてもらいます!」
俺の説得によって覚悟が決まった様子。
ただ覚悟を決めなくとも、この森にいる魔物くらいならジーニアでも余裕で倒せるはず。
問題は緊張だけだと思うが、ミスした時のリカバリーができるように俺が準備していればいいだけだ。
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