第116話 作戦
目的地である山岳地帯に辿り着く間に、とりあえず全員とは会話をすることができた。
初対面であった王都を拠点とする冒険者も、ジュリアンが仲介してくれたお陰でスムーズに会話することができ、パーティ名は全て頭の中に叩き込めている。
それと……この場にいる俺達以外の全員がSランク冒険者ということもあり、俺が積極的に守るという意識を持たなくていいのが非常にありがたい。
「とうとう着いてしまいましたね……! 魔物の大群が近くにいるのが、もうはっきりと分かります」
「ここに来る途中から、なんか地響きみたいなのを感じるもんね! その地響きが大きくなってるし、気配だけじゃなくて地面の揺れからも分かる!」
「明確にとんでもない数の魔物がいることが分かるのは本当に初めてだ。俺は無駄に冒険者歴も長いし、ギルド長になってからも修羅場は潜ってきたつもりだったんだがな」
アオイの言う通り、魔物達の行進によって地面が揺れているのが分かる。
気配も明らかに近づいており、あと数十分も経たずに先頭を進む魔物が見えてくるはず。
魔物の報告から時間もなかったことから、大した作戦は立てられていないだろうが……。
一度、サリースに話を聞いた方がいいだろう。
「サリース、何か作戦があるのなら教えてくれ。可能な限り実行させてもらうし、ここにいる人達ならできるはずだ」
「……すまない。正直、数も膨大過ぎて何も思いついていないんだ。高所は取ったつもりだから、上から遠距離で攻撃する――ぐらいだな」
「作戦はなしで、各々に任せるって感じか?」
「ああ。すまないがそうなるだろう。投石や落石、それから落とし穴や数を集めて弓で射殺すことを考えてはいたが、如何せん時間がなさ過ぎて何の準備もできなかった」
サリースは心の底から申し訳なさそうな顔をしている。
同タイミングで報告を受けた俺は時間がなかったことをよく知っているし、サリースが作戦を立てられなかった分、俺達が先陣を切って突っ込んで風穴を開ければ敵の指揮系統を崩せるはず。
隊列をバラバラにしてしまえば、高所からの遠距離攻撃がより有効になるし、そうなれば高所からの遠距離攻撃だけでも作戦として機能するだろう。
「人材を集めただけでも優秀だ。後から援軍も駆けつけるんだろ?」
「ああ。まだ王都に待機している連中には弓を持たせるつもりで動いている。副ギルド長に指示を任せているから、準備が整い次第駆けつけてくれるはずだ」
「それなら大丈夫だろう。俺が突っ込んでぐっちゃぐちゃに荒らしてくるから、サリースが言っていたように他のみんなには遠距離攻撃を徹底するように伝えておいてくれ」
「…………すまない。グレアムには一番危険な役割を任せてしまうことになる」
「大丈夫だ。交流戦で見せた通り、俺はそこそこ腕が立つからな」
「ふふ、これほどまでに他人を頼もしいと感じたことはないよ。本当にありがとう」
深々と頭を下げてきたサリースに手を上げて答え、俺はいつ魔物が見えても大丈夫なように戦闘の準備を始める。
戦闘の準備と言っても軽く体を動かすだけであり、集中力を高めることに全神経を使う。
「グレアム! 魔物が見えた!」
ストレッチを行いながら精神統一を行っていたところ、アオイが指をさしながら大きな声を出して叫んだ。
この場にいる全員がその指した先に視線を向けると、その方向からこっちに向かってくる魔物の姿が見えた。
「戦闘を進んでいるのはボーンソルジャーか。……いよいよ始まるな」
「わ、私達はどうするんですか?」
「突っ込むつもりだ。二人も俺についてきてくれると助かる」
「えっ!? あの魔物の群れに突っ込むつもりなの!?」
「ああ。そんなに心配しなくても大丈夫だ。俺が二人を全力で守りながら戦う。二人は防御に意識を割かずに気兼ねなく暴れ回ってくれ」
「えー!? 急にそんなこと言われても……」
「――分かりました。こんな機会滅多にありませんし、グレアムさんが全力で守ってくれるという言葉を信頼します! 思いの限り戦わせてもらいますね!」
「むむむ……ジーニアがそう言っちゃうと私もやらないといけないじゃん! ……もう分かったよ! 私とジーニアが怪我したらグレアムのせいだからね!」
「ああ。全部俺のせいにしてくれていい。それじゃ――行くか」
後ろを進んでいる魔物の姿も見え始め、その膨大すぎる魔物の数に周囲の冒険者達が固まっている中、俺達はゆっくりと魔物達に向かって進んで行く。
二人を付き合わせてしまうのは申し訳ないが、囲まれても対処するために助力が絶対に必要。
単純な実力で言えば、ジュリアンやバッテンベルクに頼むのが普通なのだろうが……俺が信頼できるのはジーニアとアオイの二人だけ。
あとギルド長も信用はできるが、ギルド長にはこの場所に残って指揮を執ってもらう方がいいからな。
そんなことを考えながら、俺はゆっくりと歩きから徐々に速度を上げ――視界に捉え続けているボーンソルジャーの群れに向かって突っ込む。
そして一定の距離に近づいた瞬間、一気に加速して飛ばす斬撃で魔物達の隊列に風穴を作り、俺はその風穴から一気に群れの中へと突入。
この俺の突撃から――千を超える魔王軍との戦闘が開始されたのだった。
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