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辺境の村の英雄、四十二歳にして初めて村を出る  作者: 岡本剛也
第3章

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第112話 急報


 杖を机の上に置いた後、次は後ろの棚を探り出したサリース。

 取り出したのは黒いとんがり帽子で、かなり埃を被っている。


「あった、あった。二つ目はこの帽子だ」

「その帽子? あまり身に着けたくない形の帽子だし、埃を被ってるってことは長年しまっておいたものなのか?」

「ああ。このグランドウッドの杖もそうだが、私が……いや、私の仲間が冒険者時代に使用していたものなんだ。だから埃は被っているが、決して使えないものではないぞ」

「使えるものだというのは分かる。というか、仲間との大切な品なのに俺に渡していいのか?」

「もちろん。こうして棚の中で埃を被っているより、実際に使われた方がいいだろうからな。それに思い出の品ではあるが遺品って訳ではない。気にせず選んでくれ」


 笑ってそう言ってくれたサリース。

 そういうことならば、特に気を使わずに遠慮なく選ばせてもらおう。


「分かった。好きなものを選ばせてもらう。ちなみに、この帽子はどんな帽子なんだ?」

「この帽子はとこしえの帽子と言って、魔力の回復を早めてくれる帽子だ。防御力も低いし、非常に被りにくい帽子ではあるが……効果はかなりのものだぞ」

「魔力の回復を早めてくれる帽子か。魔法使いには最適の装備だな」

「ああ。グランドウッドの杖もとこしえの帽子も、私のパーティの魔法使いが使っていた装備だ。魔法職には本当に最適だと思うぞ」


 攻撃魔法しか使えなくとも、グランドウッドの杖があれば回復が行える。

 そして、とこしえの帽子を装備していれば魔力の回復が早まる。

 ……相乗効果を考えたら、二つとも欲しくなる逸品だ。


「最後の三つ目の装備も同じ魔法使いが使っていた装備だ。えーっと……どこにしまっていたっけな」


 次はクローゼットを探し始めたサリース。

 すぐに見つけることができたようで、クローゼットから引っ張り出したのは少し錆びた青銅の盾だった。


 三つの中では明らかに質で劣っている。

 ただ、何かしらの特殊な効果が付与されている盾のはずだ。


「見つけた。これが最後の品なんだが……この盾は奇跡の盾というものだ」

「奇跡の盾? パッと見た限りではただの青銅の盾にしか見えないな」

「材質は青銅だから間違ってはいないな。ただし、この盾は面白い効果がついている」

「面白い効果?」

「ああ。魔力を流すと硬化するんだ。更に魔法も防げるようになる」

「へー……そんな盾があるのか。聞いたことすらなかった」

「元々は普通の青銅の盾として作られ、そして普通に売られていたみたいだからな。そんな中、とある冒険者がこの盾の特殊な効果に気がついた」

「そんな効果が付与されているのに、有名な魔道具師が作ったものとかではないんだな」

「同じ工程で作られた無数の青銅の盾を調べたようだが、この効果が付与されている盾はこの一つだけだったらしい。故に奇跡の盾と名付けられたみたいだ」


 生まれた経緯も非常に面白い盾。

 効果は言わずもがなだし、この奇跡の盾に関して言えば俺も使いどころのあるもの。

 ……まぁ片腕しかないため、盾を構えると武器が構えられなくはなるが。


「最後の品も欲しくなる逸品だな。相乗効果が凄まじいから、全て欲しくなってしまう」

「ふふ、この三つの元の所有者は同じだからな。この三つを装備することで一気に強くなることができる。……ただ、流石に三つ全てはあげられないが」

「そんな贅沢を言う気はない。一つ貰えるだけでもありがたすぎる」


 どの品も金では買えないレベルのもの。

 それを一つくれるというのだから、お礼を伝えることはあっても文句を言う気など更々ない。


 それで何にするかだが……本当に迷うな。

 俺が使うとしたら確実に奇跡の盾。


 ただ俺をこれ以上強化したところでって感じもあるし、そもそも片腕の俺には盾はいらない。

 それを考えたら魔力が豊富な人もいないし、杖か帽子だろう。


 …………実用性を考えたら、グランドウッドの杖だな。

 帽子は俺も使えなくもないが、このとんがり帽子を身に着けることはまずない。

 ならば、だれでも使える杖が一番実用的なはず。


「決まった。このグランドウッドの杖を――」


 俺がそこまで言いかけたところで、部屋の扉が勢い良く開いた。

 ノックもなしに、扉をぶち破る勢いで入ってきたギルド職員らしき人物。


 ノックもせず、そして無駄に音を立てて扉を開けたことに対し、サリースは眉をひそめている。

 俺らがいる手前怒りはしなかったのだが、普段だったら確実にチクリと言われていたはず。


「ノックもしないで入ってきてどうした?」

「南の方角に大量の魔物がいるとの目撃情報が入りました! で、冒険者に調査依頼を出したところ――千に近い数の魔物の軍が王都に向かって進んでいるとのことです!」

「な、なんだと!?」


 千に近い数の魔物群れ。

 自然に発生することはまずあり得ない数だ。


 そうなると、考えられるのは理由は魔王軍の襲撃ただ一つ。

 答えが出た瞬間に、嫌な思い出がフラッシュバックし肌がヒリつく。

 これは……死闘になることを覚悟した方がいいだろうな。



ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!

『ブックマーク』と、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです<(_ _)>ペコ

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