第10話 採取依頼
受付嬢さんは非常に良いのだが、冒険者の視線のせいで本当に居心地が悪いからな。
「グレアムさん、採取依頼で良かったんですか?」
「ジーニアを紹介してくれたのもさっきの受付嬢さんだし、確実に俺達のことを思って紹介してくれているから任せておけば問題ない」
「それならいいんですけど、討伐系の依頼を受けたそうにしていましたので気になってしまいました」
「ただジーニア頼りになるかもしれない。採取の依頼じゃ役に立てるか分からないからな。実際にグレイトレモンを知らないし」
「一緒のパーティの仲間なんですから、お互いに助け合えばいいんですよ! グレイトレモンなら私が知っています! お菓子の材料でも使う果物なので」
グレイトレモンは果物だったのか……。
俺一人なら、グレイトレモンを探すことができなかったかもしれない。
「ジーニアがいてくれて心強い。その代わり、道中で戦闘なら任せておいてくれ。ある程度の魔物なら戦えると思う」
「あの……一つ気になっていることがあるんですが、グレアムさんの実力ってどれほどのものなんですか? 私はお店での戦いを見て、めちゃくちゃ強いと思ったんですが」
どれくらいの実力と言われると非常に困る。
村では一番強かったし、両腕があった時は魔王軍を撃退して、エンシェントドラゴンも単独で倒したからな。
ただ今はエンシェントドラゴンに片腕を持っていかれてしまったし、所詮は小さな村の中で一番強かった程度。
大きな街で冒険者を目指すとなったら、村で一番強かった奴らが集まるだろうし、俺の実力なんて大して知れているはず。
「村の中では一番強かったぞ。でも、もう年齢も年齢だし、腕も一本失くしてしまった。冒険者の中で中の下くらいはあってほしいと思っているが実際は分からない」
「そうなんですか……。グレアムさんで中の下ってことは、冒険者って化け物の集まりなんですね。成り行きで冒険者になってしまいましたが、大丈夫なのか不安になってきました」
「まぁ何かあっても俺がジーニアを守るから安心してくれ。逃げるくらいの時間は稼ぐ」
「ふふっ、かっこいいですね! 私もグレアムさんの足を引っ張らないように頑張ります!」
ジーニアは嬉しそうにしてくれたが、口に出してから急に恥ずかしくなってしまった。
顔が猛烈に熱くなっているのを誤魔化すように、俺は歩く速度を上げて街の入口に向かった。
ビオダスダールの街を出てから、南東に進むこと約一時間。
小さな森らしきものが見えてきた。
「あの森がグレイトレモンの木があるという森か?」
「恐らくそうだと思います! なんか……結構深い森ですね」
俺とジーニアとでは森を見て思った感想が違うようだ。
村の周りは手つかずの森が無数にあったため、これくらいの森だと俺は小さな森だと感じてしまう。
ビオダスダールの街からも近いこともあって、結構な人が出入りしている形跡もあるしな。
「ジーニアは森に入るのは初めてか?」
「いえ、ゴブリンの討伐依頼を受けた時、北西にある森には行ったことがあります。ゴブリンと出くわして、すぐに逃げてしまったんですけど」
「そうだったのか。ジーニアも戦闘のセンスは悪くないと思うんだけどな」
少なくとも、昨日ボコボコに叩きのめした冒険者よりかはセンスはあると思う。
俺に短剣を突き刺そうとしてきた時の動きは、俺の重心が前に残っていることを見越して攻撃を仕掛けていたはずだからな。
多分ではあるが、目が非常に良いのだろう。
その目を扱うための技術や力がついていないだけで、格段に伸びるはずだ。
「本当ですか? グレアムさんに褒められるとお世辞でも嬉しいですね! でも……ゴブリンにすら勝てなかったのでセンスはないと思います」
「ゴブリンといっても色々な種類があるからな。強いゴブリンだったのかもしれない」
「そうなんですか? 私は一種類しか知らないんですけど、ゴブリンってそんなにたくさんいるんですね」
「俺が知っているだけで少なくとも三十種類はいるな。似たような見た目だが、一種類ごとに強さが異なるから油断できない相手だぞ」
「なんだか、私の知っている世界と違う世界の話をされている気分になります」
そんな会話をしていると、丁度前方から生物の気配を察知した。
かなり弱い気配のため、ホーンラビットのような弱い魔物だろう。
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