最強のコンビ!究極の魔法!
アキラ視点
カウンターテナー。
男性にも出すことのできる女声に相当する高音域だ。
カウンターテナーの声が出せる男性は、アルト魔法、ソプラノ魔法など、女声魔法を使いこなすことができるという。
「カウンターテナー魔法が唱えられるというのか。エリック」
「ああ、もともとこの体の持ち主だったエリーゼは、声変わりを迎えても女声魔法をあきらめることができなかった。だが、ひそかに、声帯を鍛え、カウンターテナー魔法を覚えた」
「いつそのことを知った?」
「ついぞ3日前かな。パーティーの前にこっそりと教えてくれたんだ」
いけるかもしれない。
ダンジョンには2人1組で潜らないと弾かれる魔法が施されていた。
だが、それは、男女のペアでなくてはならないとまでは決められていなかった。
「アキラとエリック。学園で最強の2人がタッグを組めば、奇跡はおきるかもしれない。地下130階に潜れるかもしれない!」
ソナタが目を輝かせて言った。
「いくぞ!」
気合を入れ、僕たちはダンジョンに向かった。
「アキラ。言っておくが、足は引っ張るなよ。足手まといだと思ったら遠慮なく置いていくぞ」
「言ってくれるじゃないか。悔しいが、実力不足だ。何としてでもついていく!」
俺たちは地下に潜った。
バトルエリア、謎解きエリア、アスレチックエリア。
次々にやってくるギミックの数々。
休憩をとりつつ、一つ一つクリアしていく。
最初は息が合わず、ちぐはぐなコンビだったが、地下90階に潜る頃には、奇妙な信頼関係で結ばれていた。
エリックは階段の踊り場で俺と彼自身を回復する。
「やるじゃねぇか。さすが俺たちを倒しただけのことはある」
「君を超えるために、彼女はエリーゼは頑張ってここまで僕を育ててきたからね。なんとしてでも彼女を助けたい」
「それは俺も同じことだ。なにせ、元の自分の身体だからな。こんなところでくたばられては困る!それに、お前たちに負けたままで終れないからな」
数々の難関を潜り抜けた俺たちは地下130階に到達する。
「なるほど。これが、魂を体に定着させる魔法の旋律か。男声魔法と女声魔法の合唱魔法だな。古語の発音はそれほど難しくないが、巻き舌を2か所完璧に読み上げないといけない。確か、お前の苦手分野じゃなかったか?女声パートはカウンターテナーでなんとか代用できそうだ。男声パートは音楽的に高度なセンスが求められる。女声魔法も俺の弱点である歌声の伸びが求められる。お前らに負けてから、毎日ロングトーンを俺はこなしてきたんだ。アキラ。俺も最善の努力はするが、お前が頼りだ」
「任せてくれ、俺も巻き舌は必死で訓練してきたんだ」
魔法の旋律を耳に焼き付ける。
そして、ダンジョンを脱出し、エリーゼの元へ向かう。
「病状は?」
「苦しそうだわ。このままじゃ、死んでしまうかも。呪文は手に入れたの?」
「任せてくれ」
俺は、エリックはそれぞれ、声を重ね、魔法をエリーゼに向けて唱えた。
助かってくれ!




