祝杯をあげて
アキラ視点
いいニュースが3つあった。
エリックとクララは呪術医の懸命な処置により、無事、呪いが取り除かれ退院した。
サリエリさんの肉体もアマデウス議員の家宅捜索により発見され、無事、元の肉体に戻すことに成功した。
停戦が政府より正式発表された。
以上だ。
ただし、戦争再開の火種は未だ残されており、予断を許さない状況だ。
一歩早いが、俺たちは関係者を集めて祝杯をあげることにした。
「乾杯!」
エリーゼが料理を披露してくれるとのことで、学園の食堂を休日に貸し切っていた。
「体、大丈夫なのか?エリック」
「ああ、あれから1か月。リハビリもうまくいって、明日には授業を受けられるくらいにはなっているかな。次に入れ替わり戦のチャンスがあったら、君に勝負を挑ませてもらう。負けっぱなしは悔しいからな」
「ああ、次も負けないぞ」
それを聞くとクスっとエリックは笑ってつけ加えた。
「君のおかげで自分の弱点が判明した。ロングトーンのトレーニングをリハビリ中もみっちりとこなした。今度はこちらが成り上がる番だ」
俺たちはグータッチをした。
俺たちはお互いを高めあえる、いいライバル関係になれているのかもしれない。
「それにしても、デザートのお菓子おいしいな。この黒いやつなんていうんだ?」
とアレグロが疑問を言うと、すかさずソナタが説明にやってくる。
「チョコレートだって。アキラの実家で作り方覚えたらしいからアキラくんは食べて感想を言わないと。あと、クッキーもおいしいの作ったから食べなさいよね」
そうか。こちらの世界では、チョコレートは普通のお菓子じゃないのか。
エリーゼは3日間、俺の実家に行ったらしいが、肝心の俺は戻れないでいた。
戻るための魔法を研究することが、今後しばらくの目標となる。
チョコレートとクッキーをそれぞれじっくりと頬張る。
「うん。おいしい」
デパートに売られていても不思議ではない味だ。
エリーゼもエリックと同様、自分の弱点を自覚し、克服しようとしている。
「良かった!エリーゼも喜ぶね」とソナタは言いつつきょろきょろとあたりを見回す。
「あれ?エリーゼは?」
「トイレに行くって言ったっきり戻ってこないんだよ」とクララ。
「ちょっと、心配だから探してくるね!」
女子トイレなので俺もついて行くとは言いにくい。
ソナタが部屋にトイレに向かってからしばらくして、「きゃあっ!誰か来て!」と呼び声が。
「エリーゼが!エリーゼが倒れてるの!きっと呪いだわ!呪術医を!」




