橋は燃えていた
アキラ視点
アレグロは手早く手綱をバトンタッチすると魔法馬車を走らせ橋を渡った。
時間との勝負だ。
急ぐしかない。
「妙だな」
アレグロはつぶやく。
「俺たちを朝刊に間に合わないようにするのが賊の目的だとするならば、馬を攻撃するのが最善手だ。乗車している人間を狙っても意味がない」
「なるほど。だとすると、戦力分断するのが、敵の作戦というわけか。ショパンとブーレは俺たちにとって強力な戦力。だから、護衛対象から引き離す必要があった」と返す。
「引き返して2人を乗せた方がいいんじゃないかしら」とソナタ。
「そうだな」と冷静になり引き返すことにした。
「橋が……」
橋が燃えていた。
馬が怖がって近寄らない。
「ずいぶん大掛かりな罠を仕掛けてくれる」と俺。
「でも、これで、罠ってことははっきりしたわね。次の罠に警戒しながら、ゆっくりとしたペースで新聞社に向かってもいいんじゃないかしら」とエリーゼ。
「いや、アマデウス議員の差し金の線は濃いが、本当の山賊の可能性も捨てきれない。推測はあくまで推測。急ぐのが最善手であることには変わりはない」
俺そういうとアレグロと手綱を握る役を交替した。
「緊急事態だ。もし、最悪、馬車から全員脱落しても、クライスさんが一人で馬車に残されても、新聞社にたどり着くようにしておく必要がある。クライスさんに魔法馬車の手綱魔法の詠唱の手ほどきを!」
「ああ、わかった」とアレグロ。
「できますか?」
「やってみます」
おそらく、予想が正しければ、クライスさんを賊は孤立させに来るはずだ。
アレグロもソナタも、俺もエリーゼも脱落させた後で、命を狙う。
誰も脱落しないことを考えるのが最善手だが、最悪のケースも想定する必要があった。
「ワイドウィンドバリア!」
馬車に対して、エリーゼがバリアを張るので俺も伴唱して効果範囲を広げる。
敵が同じ手を使ってくるとは限らないが、もし、同じ手を使って来たときに対策をしないのはマヌケのすることだ。
馬車を走らせると。案の定、橋に近づいたあたりで、風の刃が、アレグロへソナタへ再び飛んできて、バリアが保護する。
「やはり、戦力分断作戦か」
「危ない!!」
矢が飛んでくる。
なるほど、風の防御がダメなら、物理攻撃ね。
アレグロがシャウト魔法で撃ち落とす。
風がダメなら物理、物理がダメなら、火で来るかもしれない。
全属性の攻撃を広範囲で保護する魔法。
そんな都合のいいものがあればいいのだが。
そんなことを考えていたその時だった。
「火だ!」
火炎放射が、アレグロとソナタをめがける。
2人は馬車から脱落した。
分かっていたのに、予想できたのに。
やはり遠回りすべきだったか?
歯がゆい気持ちになった。




