ゲームのルール
エリーゼ視点
飲み物を買いに外の店に行くことにした。
ふと、何か誰かに見られている違和感を感じた。
警戒心を強める。
右か左か。
きょろきょろを見回す。
上を見上げた時だった。
誰かが屋根から降りてきた。
しまった!暗殺者だ!
後悔したときには遅かった。
ナイフが私の首に刺さりこむか。
そう、思った瞬間だった。
「させるかあっ!」
もう一つの影がやってきて、暗殺者を蹴飛ばした。
私も暗殺者もそれぞれ別の方向へ飛ばされていった。
「はっ!」
我に返った私はかまいたちを唱えて、その場を離れ、さらに物理防御魔法を唱えることにした。
「お前はっ!」
見たことのある顔。
ワグナー!
かつて、救急魔法で命を助けた暗殺者!
影はかなわないと見るや、私とワグナーの元を離れてそそくさと逃げ出した。
「エリーゼ。あんた、アマデウスに命、狙われてるよ。図書館に行ったことも秘書を探していることも全部バレてるぜ」
「助けてくれてありがとう」
「なあに、借りを返しただけのことだ。これでトントンってやつだな。あんた、議員のことを嗅ぎまわるなら、最後まで徹底的にやりなよ。攻撃は最大の防御ってやつだ。中途半端にやると、さっきみたいに命の危険が増える。絶対に秘書を見つけて新聞社に駆け込むんだ」
「そこまで狙いがバレてるだなんてね。ってことはアマデウスにもばれているってことか」
「まあ、そういうことだ。じゃあな」
ワグナーは去っていった。
アキラにこのことを話したら、冷静な顔をして言った。
「毒食らわば皿までだ。相手にばれているなら仕方ない。ばれているなりのベストを尽くすまで」
頼もしい。
「それより、お客さんだ。どうやら役者は確実にそろいつつある」
アキラの言葉を合図にドアの影からひょっこり2人が姿を見せた。
「よう。元気だったか、エリーゼ」
「すっかり大人の顔になったわね。仲睦まじそうでなにより」
「アレグロ!ソナタ!」
久しぶりに合う元クラスメイトにじーんとなる。
「危険だけどいいの?」と聞くと「友達の危機に何もせずにいられるか!」と返ってくる。
そうか。
私にはこんなに素敵な仲間がいたのね。
アキラは地図を広げ、この街とミラヴェニアにそれぞれ×印を書き、線で結ぶ。
「ゲームのルールは簡単だ。城からクライス秘書を救い出す。そして、ミラヴェニアにある新聞社の社屋まで魔法馬車で護衛する」
「なるほど。それまでの間に、クライス秘書が殺されたら、ミッション失敗ってわけね」
「そういうことだ。そして、このミッションを成功させるには俺たち4人では足りない」




