シティーアドベンチャー
アキラ視点
図書館の郷土資料のコーナー。
この町の成立までの歴史があれこれ書かれていた。
湖の綺麗な水を目当てに農民が集まって農村になったこと。
近隣の国の興亡にともない、時流に乗って交通の要所となり商人が集まって街になったこと。
ごく普通の街の歴史だ。
取り立てて面白い情報がないかのように思われた。
当てが外れたかと思ったが、気になる本があった。
『幻のエラック城』
なんだこれは。
この世界において、古代と呼ばれた時代に、このあたりは王国の城下町として栄えたと書かれてある。
だが、その城跡は町の中にも山の中にも残っていない。
その存在は幻とされているという。
折り目がついているページがあった。
誰かが熱心に読み込んだのだろうか。
そこには4行詩が書かれていた。
『月が照らす夜、湖面に映る光、
城現る時、秘密が開く扉
風が囁く古の言葉、水の歌うメロディ
結ぶは運命の糸、隠されし道を照らせ』
これは!
「エリーゼ!この街に伝わる音楽はあるか?」
「私がエリーゼになったのが最近だからわからない。だけど、民謡の本があるわよ」
『エラック民謡』
「古代語で書かれたメロディ。明らかに何らかの魔法の効果がある。だけど、なんの効果があるのか不明とされている」
「もしかして!」
俺たちはエラック湖へと向かった。
網を張っていた漁師を捕まえて話を聞く。
「満月の夜、湖上に不思議な光が浮かぶのを見たよ。光の中心には、普段は見えない何か大きな建物のようなシルエットがあったよ」
「ありがとうございます!」
満月の夜まであと2日あった。
もし、情報が間違っていなかったら、満月の夜にあの湖で魔法を唱えたら、城が浮かび上がる。
そこに、クライスさんが隠れているはずだ。
俺は協力者を募るべく、持てるコネクションの限りを尽くして魔法の手紙を書いた。
馬車を船を手配した。
やることをやった俺はエリーゼとやることをやることにした。
「アキラったらエッチなんだから。ばか」
ふとももをもじもじさせながら、上目遣いでそんなことを言う。
はじめての時は、彼女の方が余裕がある顔をしていたが、今度はこちらが男の余裕を見せてやることにした。
「もう……。すっかり私に夢中になっちゃって。かわいい。ふふっ」
そんなことを言ってる彼女の顔もどこか満足げだった。
そんなこんなで2日はあっという間に過ぎようとしていた。
だが、満月の日が来る日の朝、エリーゼがちょっと飲み物を買ってくると言って出ていったきり戻ってこない。
何かあったのだろうか。




