童貞を捨てて
アキラ視点
俺はエリーゼと一夜を過ごし、童貞を卒業した。
日本では高校生同士の恋愛など、隠れてこそこそやるものなのに、ここでは、ずいぶんと堂々と経験してしまったな。
エリーゼは、女の体で生きることを受け入れたが、俺も俺で、日本には戻らず、エリーゼの生まれ育ったこの世界で生きることをエリーゼを妻とすることを受け入れることに決めたのだ。
翌朝、髪をとく彼女を尻目に、行動を開始することにした。
アマデウス議員は、このまま、手をこまねいているとは思わない。
エリックが、医務室に居るという情報は確実につかんでいるだろう。
医務室の先生が受け入れるまでに、学園内でひと悶着があったと聞いた。
学園内まで政治闘争が持ち込まれているくらいなのだ。
このまま、待っているだけではじわじわと真綿で首を締めるように窮地に追い込まれるばかりだ。
情報収集。
時間は限られていて悠長なことは言ってられないがそれがまずは第一手だろう。
まずは、エリック本人にどこにアマデウス議員を告発するための証拠品を隠したか聞いたが、教えてもらえなかった。
それはそうだろう。
俺が証拠品を取りに行ったところで、そこに敵襲を受けて葬られたら証拠品ごと永遠に亡き者になる。
人間としては信用されているみたいだが、実力はそこまで信用されていないということだろう。
あるいは、危険に巻き込みたくないという気遣いかもしれない。
だが、エリックがのどから手が出るほど欲しがっている証人、クライス。
彼女を連れてきたら、彼も証拠品を持ち出して新聞社に駆け込むことだろう。
クライスは、アマデウスの元秘書と聞く。
彼女の居場所を知っている人間が学園にいるかもしれない。
誰が味方として信用できて、誰が信用ならないか。
医務室の先生から、確実に味方になってくれる先生リストを譲り受ける。
「危ないことするんじゃないよ」と忠告を受けながら。
だが、多少、危ないことをしなければ、危機を乗り越えられないことも確かだった。
結論から言うと、先生たちからは、めぼしい情報を得ることができなかった。
有益と言えるのは、社会の先生から得られたこの発言だけだった。
「クライスは議員の闇取引の証拠を押さえていたが、命の危険を感じて消えた」
うすうすわかっていたことに対して、説得力が増した程度だろうか。
これ以上の情報を得るためには、エリーゼの故郷、つまり、アマデウス連邦議員のおひざ元に行くしかないようだった。
ちょうど、長期休暇がはじまるところだ。
俺は荷物をまとめると、一人旅立つことにした。
エリーゼを危険に巻き込みたくないからな。
「待ってー!」
学園を後にしようとする俺をエリーゼが追ってきた。




