負けは成長の糧となる
アキラ視点
エリックとクララが合唱魔法に頼った瞬間、僕たちは戦術を変えるチャンスと捉えた。
エリーゼから、事前に聞いたクララの弱点。
それは、ロング魔法のコントロール力に難があること。
なぜかは知らないが、旧知の仲であるかのように知り尽くしているようだった。
もし、それが本当ならば、彼らがロングマスターファイアーを唱えたタイミングこそが……。
「今だ！エリーゼ、カウンターアタック！」
僕は叫ぶ。
エリーゼは応えるように、冷静に「ウィンドスパイラル！」と呼び出し、僕はそれに合わせて「アドバンスファイアー！」を放つ。
二つの魔法が融合する。
向こうから跳んできたマスターロングファイアーは明後日の方向に飛んでいき、こちらの炎の旋風がエリックとクララを包み込む。
エリックたちは予期せぬ攻撃に一瞬戸惑い、その隙に僕たちはさらに距離を広げる。
「うまくいったわね、アキラ。彼らの攻撃リズムを崩すことができた」
エリーゼは戦況を分析する。
「うん、エリーゼのおかげだよ。でも油断はできない。エリックもクララも、これからが本当の勝負だろう」
これで、こちらの手の内、作戦という作戦は明かした。
相手がそれにどう対応してくるかだ。
エリックとクララは一時的にバランスを崩したものの、すぐに立ち直り、より激しい攻撃を仕掛けてくる。
僕たちはその攻撃に対抗するため、防御と回避の魔法を唱え、エリックたちの疲労を利用した攻撃のタイミングを伺う。
闘技場の空気は緊迫していた。
観客たちは息をのんで戦いの行方を見守る。
僕たちの攻撃が成功する度に、歓声が上がる。
「最後の一撃だ。アキラ、準備はいい？」
エリーゼは僕に確認する。
「ああ、いつでも行けるよ」
僕たちは最後の力を振り絞り、「フェニックスストーム！」の合唱魔法を放つ。
炎と風の力が融合し、巨大な鳳凰のような形を成し、エリックとクララに向かって飛んでいく。
「こんなもの！堪え抜いてやる！」
エリックは必死に防御するが、僕たちの魔法の威力は圧倒的で、彼らの魔法防具に大ダメージを与える。
試合の決着がついた。
審判が僕たちの勝利を宣言し、闘技場は歓喜の声で包まれる。
僕とエリーゼは互いに見つめ合い、勝利の喜びを分かち合う。
この瞬間、僕たちはただのペアを超えた絆で結ばれていたことを改めて実感する。
「やったねアキラ！」
「エリーゼのおかげだよ！」
汗をかきながら、ハイタッチをする。
座り込むエリックに手を差し出す。
だが、握手は拒絶された。
「そんなバカな……。俺が……。この俺が……」
負けを受け入れていないようだった。
エリックの拒絶は、彼のプライドが傷ついたことを示していたが、僕はそれを理解できた。
思えばこの世界に来てから挫折の連続だった。
だからこそ、ここまで僕は成長できたのだろう。
今度は、君が成長する番だ。
闘技場を出る際、僕たちは観客たちからの暖かい拍手を受けた。
その一つ一つが、僕たちの努力と勝利を讃えるものだった。
学園に戻ると、僕たちの勝利を祝う仲間たちが待っていた。
学園で負け犬だった僕が認められた瞬間だった。
