男同士の勝負
エリックになったエリーゼ視点
「さっき、知ったけど、私たちに挑んできた相手ってあなただったのね」
女子寮で、珍しくクララが話しかけてきた。
「ええ、エリックとはいろいろと因縁があってね。そしてあなたとも」
と、思わせぶりな答えをあえてする。
怒りだすと思いきや意外とケロっとした顔をしていた。
「あなたたちが、毎日努力してここまで這い上がってきたのは噂に聞いているわ。それは認める。言っておくけど、絶対に負けないわよ」
右手を差し出す。
握手を求めているようだ。
僕も右手を差し出しぎゅっと握る。
「私こそ負けないわ」
ひと時だったが、僕たちは女の友情を得ることができた。
本番当日は、あっという間に訪れた。
会場は闘技場。
会場は学生とギャンブラーで埋め尽くされて、歓声が飛び交う。
下馬評では当然とでもいうべきか、エリック、クララペアの勝ちを予想している人間が多かった。
アキラと僕、元の自分とクララが4人、広々とした会場で向かい合う。
アキラとエリックはおそらくは初対面だ。
「絶対負けないぞ」とアキラ。
「俺様には絶対にここで落ちぶれてはならない理由がある。男同士でいい勝負をしよう」とエリック。
「男同士」という言葉がひっかかった僕はじぃっと見つめるが、その視線は、わざと無視される。
審判が中央に立ってルールを説明する。
「この勝負は、魔法防具へのダメージの蓄積によって勝負が決まる。肉体にダメージが波及した瞬間にストップするから、合図があったら試合をやめるように」
ダートに4つのサークルの白線が引かれ、その位置に4人がそれぞれの思惑を抱えて立つ。
男が前衛で女が後衛で、それぞれ5mくらいの間隔になる。
やや近接距離と言ってもいいくらいの間隔だ。
この距離であれば、ベーシックファイアーなどは余裕で届く。
開始の合図の後にすべきは距離を離すことだ。
アキラに目配せで合図をすると、グーサインで返事をする。
審判が「よーい」というと、白旗を振り下ろす。
試合は始まった。
僕は、アキラは、それぞれ、かまいたちの魔法を詠唱する。
「Wow!」
それに対して、エリックが初手で唱えた呪文はシャウト呪文だ。
近接距離で強力なダメージを与える呪文。
「くそっ!」
直撃は免れたが、アキラは、中程度のダメージを負う。
状況を冷静に判断し、僕もアキラも、かまいたち呪文で距離を離す。
「どうした!逃げるのか?チキン野郎!」
僕の元の顔でそんな煽り文句を言われるとおかしな気分になる。
アキラは、挑発に乗らず冷静に距離をゆっくりと離しはじめる。
そして、呪文の詠唱を唱え、そして、解き放つ。
「アドバンスファイアー!」




