アメージンググレース
エリーゼになったエリック視点
「うん!おいしい!」
はじめて食べたチョコレートなるものの味に感動を覚えた、
「エリーゼちゃん。やればできるじゃない。文句なしの合格だわ」
褒められると照れくさい。
そうか。
変なオリジナリティに富んだ材料入れたり、量をどばーっと入れたから、毒々しいものが出来ていたのか。
魔法でアキラに教えていた基本を自分がお菓子作りでは守れていないというのはお恥ずかしいばかりである。
「ちょっとエリーゼちゃん。カラオケ行かない?」
「カラオケ?」
どうやら、歌を歌わないかと、涼子さんに誘われているようだ。
ハイテクルームに案内される。
「ちょっと、テストをする。好きな歌、チョイスしな」
ええっ。
歌でアキラとの関係を認めるかどうか決めるってこと?
「わかりました」
機械を渡されたので自分なりに操作する。
昨日、CDを聞いた曲の中から、覚えやすくて歌いやすいキャッチーなメロディー、それでいて、歌い手に技量が求められる曲をチョイスした。
「おお、その曲を選んだか。難しいけど大丈夫?」
僕はこくりとうなづいた。
この世界の信仰と密接に結びついた歌らしいが、純粋に美しい曲だと思った。
「Amazing Grace How Sweet the Sound」
お姉さんは、涼子さんは僕が歌い終わるまでじっと聞き入っていた。
「さすがだね。音楽で魔法を唱える世界から来たっていう話もまんざら嘘じゃないわけだ。音大でも通用する歌唱力だよ。ビブラートも心地よく効いていて文句ない」
「ありがとうございます!」
頭を下げる。
「よし、決めた!明日の発表会!あんたに出てもらう!」
「ええっ!」
突然の提案に驚いた。
アキラとの関係を認めてくれたのかと思いきや予想外の方向に。
「といっても、友達同士でやる小規模な発表会だよ。文化会館の小ホールでやるだけの。サマータイムってジャズ曲を歌う予定の子がいたんだけど、病欠になっちゃってね。代わりの歌手を探してたところなの」
「ぼ、ぼく、私にできますか?」
「それだけ歌唱力があったらいけるよ。ダメだったら私が責任取る。ドレスのサイズもあんたくらいの体格にちょうど合ったのあるから。さっそく電話かけるね」
お姉さんはどこかの誰かに「いい歌手見つかった」と連絡をする。
僕にそんな大役務まるのかなあ。
サマータイムは確かに昨日聞いたCDの中にあったし、確かに覚えてはいたが、さすがに練習しなきゃいけないと思い、何度も練習をする。
生活や出世のためではない純粋に娯楽のために作られた楽曲。
歌を歌うことの楽しみを僕は噛み締めていた。




