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月へ飛んでいく

エリーゼになったエリック視点

「エリーゼといいます。はじめまして。よろしくお願いします」


頭を深々と下げた。


「そんなかしこまらなくてもいいのよ。エリーゼちゃん。アキラがいつもお世話になっています。さあさあ上がって上がって」


と、アキラの母に促されるまでに上がる。


畳という慣れない敷物のある部屋に座布団を敷かれ、そこに座るよう促されるので正座する。


「あの子は元気でやっとるか」と父親が優しそうな声で。


「は、はい。日々のボイトレで、一流の魔法使いに育ちつつあります」


「そうかそうか」と言いながら、玉露なる飲み物を飲むよう僕に勧める。


品のある陶器に緑の液体が入れられており、この世界では高級品であることを察する。


苦いけれど、目が冴える感覚がする。


どうやら、僕はこの家に歓迎されているらしいことがわかり安堵する。


「エリーゼちゃんが来てくれてうれしいわ。まるで娘ができたみたいで」


「い、いえ。恐縮です」


「私はその子、まだ認めてないから」と口を挟んだのは姉の涼子さんだった。


家の中に案内してくれたから、てっきり、歓迎してくれているのかと思ったが、そうは問屋が卸さないようだ。


「こら!涼子。せっかく遠いところからやってきてくれたのに何という言い草だ」と父親。


ぷいとそっぽを向いて去る。


「ごめんね。あの子、アキラのこと大好きだから、あなたに対抗心を燃やしているみたいで。いい子なんだけどねぇ」と母親。


アキラの部屋に案内される。


部屋の中には、音楽に関する雑誌やレコードやCD、ミニコンポという音楽を再生するための機械が置いてあった。


「あの子、ジャズという音楽が好きでねぇ。うちのお父さんから譲り受けたスタンダードナンバーなんかが置いてあるよ。エリーゼちゃんも音楽の世界から来たんだよね?この部屋で好きに音楽流してもいいから、ベッドもアキラのやつを使って寝ていいからね」


そう言ってお母さんは部屋から出ていった。


アキラのベッド。


思わず布団を抱きくんくんと匂いを嗅ぐ。


アキラの匂いがして安堵に包まれる。


はっ、僕は変態か。


こんなところ、人に見られたら……。


CDプレイヤーなるものを自分なりに操作してみて、適当な曲を流してみる。


メロディが流れた瞬間、僕の心はアナザーワールドを旅していた。


fly me to the moonという曲らしい。


どこか、ハイトーンドリームと似た響きがあった。


どうやら、この世界では、音楽は、生活や出世の魔法のためではなく、もっぱら、娯楽のために提供されているというのは本当らしい。


僕は、宝の山に夢中になり、晩御飯をごちそうされた後も、夜遅くまで多くの音楽を耳に焼き付けた。

本作に登場する実在の楽曲は著作権保護期間を過ぎたものです

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声楽学園日記~女体化魔法少女の僕が劣等生男子の才能を開花させ、成り上がらせたら素敵な旦那様に!~
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