第3の魔法
エリーゼになったエリック視点
アキラと僕は、洞窟探検レースにおいて、圧倒的なキリンクラス1位を勝ち取り、文句なしのフェニックスクラスへと昇格となった。
同じく、アレグロとソナタも堂々の2位でフェニックスクラスへと昇格。
残す目標は、上級クラスであるドラゴンクラスへの昇格を残すのみになった。
それと同時に、どうしても洞窟でゲットしたかった3つの魔法を手に入れた。
一つは、機械に乗り移った魂を人間の体に戻す魔法。
これでサリエリさんの体さえ取り戻せば助けることができる。
一つは精神入れ替わりの禁呪の効果を無効化する魔法。
これさえあれば男にいつでも戻れる。
これは、僕が今まで望んだ待ち望んだ魔法のはずだ。
だが、僕は葛藤していた。
果たして本当に僕は男に戻りたいのか。
アキラは僕と結婚してくれと言った。
僕はアキラのことが嫌いではない。
それどころか強い好意を持っている。
だが、彼の告白を受け入れるということは、彼と男と女の関係を持つということとイコールだ。
言うまでもなく僕の正体は男だ。
果たして僕に彼を受け入れられるだろうか。
アキラに愛を確かめたいが、自分の正体がバレると死ぬという呪いも同時に課せられている。
それを免れる例外は、妊娠したとき、つまり、僕らの体が新しい体に固定されるときだけだ。
アキラが僕を妊娠させることができれば死を免れることができるのだ。
アキラの好意はきっと本物だ。
だけど、どこまで本気なのだろうか。
それがわからないまま、告白を受け入れていいものだろうか。
彼を騙していることにならないか。
怖い。
いや、それよりも大事なことがある。
僕は男としてのアイデンティティを持ちながら、女として生きることができるのか。
彼に寄り添い彼の伴侶として生きることは、僕の人生にとってどんな意味を持つのかを真剣に考えなければならない。
真剣に考えるか。
考えるためには材料が必要だ。
僕は耳コピした第3の魔法の詠唱の準備を整える。
この魔法が、僕の未来の運命を決めるカギを握る大魔法だ。
アキラは、日本から、コウフという街からやってきた。
だが、その生まれ育った町に戻るすべはない。
僕は今、そのコウフという街へ旅立つことができる。
一生に1回、3日間だけ日本に行くことができる。
アキラがどんなところで生まれ育ったか。
僕はこの目で確かめたいと思った。
魔法の詠唱が終わると異空間の穴が開き、僕の体はふわりと宙に浮かび、スカートは風ではためき、そして、吸い込まれていった。




