愛の告白
アキラ視点
「まだ奥深く潜る気かよ!?もう中級クラスへと勝ち抜きは決まったようなものじゃないか!」とアレグロ。
「どうしても耳コピしたい魔法があってね。その階層まで潜り込みたい」と僕が答える。
「へえ」
アレグロは僕の頭からつま先まで見渡す。
「いっちょ前に立派なこと言いやがって。何の魔法が欲しいのかは知らないけど頑張れよ!戦友!」
「ああ!」
「二人とも頑張ってね。邪魔者はここでお暇しますので、夫婦でごゆるりと」
と、ソナタはお見合いみたいなことを言い出す。
「なっ……!」とエリーゼが恥じらい丸出しのオーバーリアクションをしてくれたせいで、僕は却ってリラックスしてそのセリフを冷静に聞けていた。
「そ、ソンナンジャナイワヨ……」
エリーゼがロボットになってしまった。
「ふふ。アキラくんも頑張ってね。私たち、あなたたちのこと本気で応援してるんだから」
ダンジョン脱出の魔法をソナタは唱えると二人の姿はフェードアウトしていった。
気持ちを伝えるか。
「エリーゼ!」
「はいい!」
「あ、あのさ。僕たち、中級クラスになったら言おうと思ってたんだけどさ。来年も在学が安心して継続できるから、その、俺たち」
エリーゼが緊張でごくりと唾を飲み込む音がこちらにも聞こえる。
何を言われるかわかっているようだ。
「俺と!結婚してくれ!」
この世界では学内結婚というやつは珍しくない。
というか、ペアのうち1/10は在学中に結婚する。
俺が来た日本では、この年齢は、若すぎるということになるらしいが、この世界では、どうやら、違うらしいのだ。
俺もエリーゼと一緒に、大人と成長していきたい。
ふたりの子どもを作りたい。
これまでの冒険を振り返ってそう思うようになった。
「ア、アキラくん……」
くん付けで呼ぶなんて珍しいな。
いつもは呼び捨てなのに。
「私、私、心を整理したいので返事は保留にしてもらえますか。10日以内にお返事しますので」
「10日後だな?」
「はい。自分自身の在り方と、将来と向き合わないといけないから……。ごめんね。私自身の問題を解決したいの。アキラが嫌なわけじゃない」
「わかった。ごめんな冒険中に」
「気にしないで。うん。男の子がそんな気持ちになるのは私もわかってたことだから。それなのに思わせぶりな態度取っててこっちこそごめんね。こんな日が来ることを真剣に考えるべきだったわ」
僕は思った。
もし、エリーゼが拒絶したらどうなるんだろうか?
ペアが解消されることはないだろうが、気まずい思いを抱えながら学生生活を送ることになるのだろうか。
向こう見ずなことをしてしまったと少しだけ反省する。
そして、行くこと地下32階。
見覚えのある顔が前方にいることに僕たちは確認した。




