チキンレースとアスレチック
エリーゼになったエリック視点
地下8階の全力疾走のおかげで僕たちは、先頭グループに追い付いた。
「ようやく来たな!待たせやがって!」とアレグロは軽口を叩いてくる。
「告白なの?ようやく告白なの?」と聞いてくるのはソナタ。
どうやら、前のフロアでのやり取りは丸聞こえだったようだ。
モンスターを退治するフロア、謎解きのフロア、アスレチックフロアなどが続きつつも、僕たちはそれをクリアし続けた。
「ライオン役はお前らがやれ!」と、1番人気のラルゴが言い放ちにやりとする。
アキラは少しおどおどと迷っていたようだったので「やりなよ」と僕が勧める。
「君の圧倒的実力を見せつけてやるんだ。大丈夫、君ならできる。僕が保証する!」
最初は目が泳いでいたアキラの目が座った。
「わかった!」
アキラを先頭に数々のフロアをクリアしていく。
すると、周囲も少し焦り始めてきた。
「お、お前ら、どれだけ奥まで行く気なんだ!この先は、危険フロアじゃないか!もういい俺たちは抜けるぜ!」
と、地下16階で脱落したのが1組。
「もういい!20階は超えただろ!キリンクラスの新記録で満足しろ!」
「そうよ!そうよ!」
地下23階のアスレチックエリアで2組が脱落する。
ライオン役の能力は、男声魔法の使い手によって左右されるが、それについてくるハイエナ役は女声魔法の使い手の能力によるところが大きい。
謙遜しないで言うと、今、ついてきている女声魔法使いの中で圧倒的に歌唱力が高いのは僕だ。
僕に次いで、ソナタ、テヌートが続くが、僕と大きな実力差の隔たりがあるという点では大差ない。
それでも必死で2組とも僕たちについてくるのには理由があった。
上位2組までなのだ。
中級クラスであるフェニックスクラスに登れるのは。
ここで脱落するかしないかが次学年に進めるかどうかにかかっているから必死になっているのだ。
モンスターエリアは単にライオンが強敵を倒すだけ、謎解きも答えを真似すればいいだけ。
ハイエナ族にとって、脱落ポイントになるのは、アスレチックエリアだった。
身体能力がそれほどなくても女声の浮遊魔法でカバーできるとはいえ、ロングトーンと声量を求められ、適切な位置での息継ぎを行う離れ技が求められた。
浅い階層には、皆、ついてこれたが、徐々に苦しくなってくる。
「無理するなよソナタ!ここが俺たちの最後のチャンスじゃないから」
「わかってるわ!もう少し頑張れそうだからついていくだけ」
チキンレースは続いていき、ついに地下29階で音を上げたのはラルゴ、テヌートペア。
「もういい!テヌートよくやった!これ以上やるとお前の喉が壊れる!」
「くっ……。わかったわ、悔しいけれど脱落する」
そして、僕たち2組の勝ち上がりが決まった。
ほっと、胸をなでおろすアレグロ。
だが、当のアキラは「さて、さらに奥深く潜るよ」とさらなるやる気を見せるのだった。




