勝負パンツ
エリーゼになったエリック視点
「むむむむむ……」
「お客様何をお求めですか?」
「い、いえ、なんでもないです……!」
僕はランジェリーショップで気さくに声をかけてきた店員さんに挙動不審な反応を示す。
店員さんは怪訝な顔をして去っていく。
アキラが魔法を成功させるためにはテンションが上がらなくてはならない。
テンションがあがるためには僕のおパンツを見せなきゃいけない。
見せパンを勝負パンツを僕は休日を使って買いに来ていた。
僕は女ではない。
だから、男におパンツを見せること自体に抵抗はないし恥ずかしくもないはずなんだ。
だけど、このずきりとした胸の痛みはなんだろう。
そうだ。アキラにはしたない女だと思われたくないんだ。
いい子に見られたいんだ。
いやいやっ。
まるでこれじゃあ、まるで僕がアキラを異性として意識しているみたいじゃないかっ。
乙女心に似た得体のしれない黒い感情が僕の心に渦巻いていた。
結局、ランジェリーショップでは、紐パンやTバックを買ってしまった。
「いや、アキラは、子どもっぽいパンツの方が好きかも、ううん。さすがに大人っぽい方がいいかも、でも、かわいいものが好きなことには変わりないよね」
結局は、子ども用のパンツコーナー、普通の婦人用パンツコーナーをめぐり、クマさん、ウサギさん、白ショーツ、縞パン、いろんなパンツを買い漁ってしまった。
「何してるんだ僕ー!」
男がこんなもの買い漁るだなんて変態以外の何者でもない!
しかも、ペア男子に見せるためのものだなんて!
でも、魔法のためなら仕方ないんだ、サリエリさんを助けるためだもの!
明日からどうしよう。
毎日、一つずつパンツを試していって、アキラの魔法の成功率をデータとして取る。
パンツごとの膨大なデータを元に散布図を書き、標準偏差を計算し、ロジスティック回帰分析を行い、どのパンツがもっともアキラが興奮するかをKPIとして効用を最大化するのだ。
な、なに考えてるんだ僕!
データを取るためだけにどれだけアキラにパンツ見せるつもりなんだ!
変態だ!痴女だ!
そんなことしたら、アキラに変態女として嫌われちゃう!
悶々とした思いを抱え、僕の休日は終わった。
「おはようエリーゼ報告があるんだ」
嬉しそうな顔をするアキラの顔をまともに見れない。
「どうしたの?」
「巻き舌、パンツ見なくても成功するようになったよ。コツを掴んだのかな?あれ?どうしたのエリーゼぼーっとした顔をして」
僕の休日の過ごし方とはいったい……。
しくしく。




