巻き舌魔法エクソシズム
エリーゼになったエリック目線
「アキラは古語の発音の中でも巻き舌苦手でしょ?」
僕は巻き舌を表す古語の発音記号を公設青空ホワイトボードに書く。
「む……確かに。僕は日本人であってイタリア人じゃないからね。カンツォーネのシンガーじゃないし」
僕にはよくわからない固有名詞を時々アキラは持ち出す。
「これまで巻き舌を使う魔法なんて使ってこなかったし」
「そう。だけど、ダンジョン攻略には巻き舌は必須のスキルだよ」
「まじか」
「地下8階と地下33階には何がある?」
僕が質問するとアキラはフロアダンジョンガイドをペラペラとめくる。
「えっと……ウィスプ大量発生フロアとワイト大量発生フロア。つまり……アンデッド?」
「そう、アンデッドが強敵として立ちふさがるフロアね。いずれも★がそれぞれ2と3ついている。難関フロアだよ」
「つまり、アンデッドを倒す魔法に巻き舌が必要になってくるってことか」
「ご名答。浄化魔法、エクソシズム。これを探検会までにマスターしてもらうわ」
図書館の魔法大辞典からコピーしてきた五線譜をアキラの前に差し出す。
「古語の発音も旋律も難しい。だけど、成功したら、アンデッドを一掃する絶大な効果がある」
「なるほど……トレーニングとはこれのことだったのか」
アキラは魔法の詠唱をはじめる。
音感は完璧、リズム感もある。
いけるか。
「出でよ!エクソシズム!」
だが、巻き舌で失敗する。
「ダメか……」
落ち込んだのかがくっと手を地につける。
「驚いたよ。これだけ難読の楽譜を巻き舌以外は完璧に読めるなんて。普通はできないよ」
褒めるべきポイントは素直に褒めておく。
褒めなきゃ成長するものも成長しない。
「まだだ……もう一回」
アキラは立ち上がり、再び詠唱をはじめる。
2回3回……唱えたが、やはり巻き舌で失敗する。
17回目のことだった。
風が巻き起こり、僕のスカートがふわりとめくれる。
「ふえ?」
お恥ずかしながら、水玉おパンツを見せてしまった。
アキラは照れながらも詠唱を続ける。
「出でよ!エクソシズム!」
アキラの魔法は初めて成功した。
「やったねアキラ!信じてたよ」
親指を立ててグッドのサインをする。
「やった!マスターしたんだ!」
「よし、連続で成功させるぞ!」
だが、失敗は繰り返される。
そして51回目!再び風のいたずらが……
「風のバカ!もう!今日は風がきついなあ」
「よし!成功したぞ!」
「へ?」
再び、アキラはエクソシズムを成功させる。
むむむ?
必然か偶然か?
なぜか僕のおパンツが見えたときに限って魔法詠唱を成功させる。
「なんかテンションが上がると成功するみたい」とアキラ。
なっ!なんだと?
エクソシズム成功には僕のおパンツを見せなきゃいけないだと?




