魔族ザラストロ
ザラストロ目線
人里離れた暗い森の中、そこに俺たち魔族の住処がある。
人間どもを虐殺した後に帰還する安住の地。
フクロウが鳴く静かな場所だが、たまに命知らずの人間どもが訪れる。
「魔卿タルティーニ!ここで会ったが100年目だ!お相手願おう」
男女2人ずつの2組か。
人間どもの間ではそこまで珍しくないパーティー構成のようだ。
「命知らずがまたやってきたか。あいにく、タルティーニ様は所用でいなくてな。この門番のザラストロ様が相手をしてやろうか」
「ザラストロ!貴様は人間のアマデウス博士と結託し、生贄を受け取っていたと聞いたが本当か!?」
なるほど。
我々の悪事は人間どもの間で広く周知の事実のようだ。
アマデウスのやつめ、人間にばれないようにこそっとやれと言っておいたのに。
「いかにも。とはいっても俺はタルティーニ様に命令されて、生贄を受け取る窓口係にすぎんがな」
「ならば、皆の仇だ!討ち取ってくれる!」
やれやれ、命が惜しくないやつばかりか。
人間というやつは合理的判断ができないくだらない生き物だ。
一人ずつ、手をもぎ、足をもぎ、悲鳴をあげていくのを楽しむ。
「やめてくれ!死にたくない!」
「いい声だ。もっと苦しめ。もっと苦しめ」
しかし、4体のおもちゃはすぐに動かなくなる。
「なんだ。もう終わりか?もう少し楽ししませてくれるかと思ったら、退屈しのぎにもならん」
さて、今の時刻は15:34か。
確か、サリエリとかいうくだらん人間が結婚式を襲っている頃合いの時刻だ。
タルティーニ様とアマデウスに監視を頼まれていた事案だ。
どれ、やつがうまくやっているか試しに見てやるか。
魔水晶に声楽を詠唱し、結婚式の様子を見る。
なにか変だ。
サリエリが、機械人形が倒れていた。
「な、なんだと!?やつがやられただと?」
おかしい、普通の人間にあの機械人形は倒せるはずがないのに。
しかも、その傍らで人間の女が何かの詠唱をはじめようとしている。
自爆装置を解除しようとしているのだ。
「早く自爆させねば!」
慌てて俺は自爆魔法を、やつを自爆させる魔法を唱え始めることにした。
「エル フエグ ロント アム」
そのとき、何者かが住処に侵入したという警報が鳴り響く。
「くそっ!こんな忙しいときに何者だ!」
腹心が報告にやってくる。
「ザラストロ様!人間のようです!」
「人間くらい排除せぬか」
「それがめちゃくちゃ強くて……!」
部下はそれだけ言い残すと、突然体が歪み爆発した。
「ど、どうしたことだ?そんなことが……」
さらに次の瞬間体に衝撃が走り、水平線が逆転する。
「痛いっ!」
侵入者に魔法で殴られたことを自覚したのはしばしの時間が経った後だった。
「くそおっ!何者だ!」
「俺様はエリック・モリスだ。そして、パートナーのクララだ。貴様ら魔族を根絶やしにきた」




