黒幕アマデウス博士登場
新キャラサリエリ視点
薄暗い部屋に灯火魔法がわずかに照っている。
鉄材や木材、樽などが乱雑に置かれている。
こうして歩くだけでも、チャリチャリと金属音がする。
火をくべていたのか燻製のようなにおいがする。
土埃が舞う部屋の中、俺の前に一人の白い顎髭を蓄えた老人が現れた
これが、どうやら俺の会いたかった相手のようだ。
「あんたがアマデウス博士か」
「いかにも。お主は、アミナ村出身だと聞いたが、名前はなんだったか?」
「サリエリだ」
「左様か。さて、本題だが、自ら機械人間になることを志願したと聞くが誠か」
「いろいろ中間のあれこれすっ飛ばしすぎだろ。まあいいや、そうだよ。人生嫌になってな」
「そうか。じゃあ、さっそく手術魔法をーー」
「まてまてまて、ちょっとは背景を過去を聞くとかなんか人情味のある会話ないのか」
「わしは、お前さんの過去に興味はない。興味があるのは実験の成否だけだ」
「あーそうかよ。じゃあ、煮るなり焼くなり好きにしてくんな!自暴自棄になってることは違いないんだ!」
「女か?」
と老人はささやく。
「なぜ、わかった」
「ロケットペンダントを大事そうに触っていたらな」
「まあ、好きな女が、ナーシャが隣村の男と婚約して人生が嫌になったってとこだな」
「くだらんな。色恋など人生にとって障害物でしかない。わしの至高の目的、大禁呪を編み出すことに比べたら塵のようなものでしかない」
「なんとでも言えばいい。俺にとってナーシャはすべてだ」
「まったく、理解できない価値観だが、わしの目的に協力してくれれば、その悲恋への復讐を認めてやってもいい」
「ほほう?」
案外、ものわかりのいい爺さんだと思った。
「で、実験したい禁呪ってどんなやつなんだ?」
「わかりやすくいえば、人間の魂を機械に移し替える。ゴーレムやロボットのような人造兵器に人の心を移し替え、精密なコントロールが効く兵器として戦ってもらう」
「そいつは、倫理抵触とかいうやつで、魔法警察が黙ってないってやつじゃないのか?」
「賄賂で黙ってもらってはいるが、やつらにはロマンというやつがわからんのだよ。最強の兵器を編み出せば、魔族にだって楽勝になるというのに」
「おっと、魔族にいけにえをささげて金を受け取っているという噂でもちきりの連邦議員さんの口から出たセリフとは思えねぇな」
「それは、噂だけで裏付けがない」
「巷じゃ、ジャーナリストを殺して口封じしたと信じられているぜ。さらに、その娘の命も狙っているってな。確かエリーゼとかいったか?」
「貴様、わしに逆らう気か?」
「いや、モラルもへったくれもない純粋な悪人だから気に入ったって言ってるんだ。要はさっさと俺を改造して、爺さんの悪事の仲間に入れてくれって言ってるわけだよ」
「よかろう」
俺は目をつむり、爺さんの魔法の詠唱を待つことにした。




