表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/100

君が歌えば美しい曲になる

エリーゼになったエリック視点

「みにくいあひるの子か」


僕はため息をついた。


白鳥変身魔法は、詠唱難易度としてはかなり高い。


それだけに、そのプレッシャーに打ち勝ったらかなりの名誉のことで学内に名声が知れ渡ることだろう。


だが、僕はその魔法を成功させたことが一度もない。


13歳のとき、声変わりになる前に腕試しのために挑戦したことがある。


だが、流れるように移りゆくハイトーンに声がついていかない。


女子寮に戻った僕はプレッシャーにさらされていた。


「ねえ?あんたできんの?そんな大役」


「こいつにできるわけないじゃない。早く下りれば?」


「魔法失敗したらブーイングしてやろっか?」


ううう。


地味に嫌味言われていじめられてる。


練習しなければ。


そして、見返してやらないと。


夜中に一人でボイトレをこなす日々がはじまった。


腹の奥底から声を出して、そして、練習!練習!練習!


だが、思ったように声のコントロールがうまくいかない。


高音を出すだけでも大変なのに、音階の変化がうまくいかない。


試行錯誤を繰り返し、悩みに悩んだある日だった。


ボイトレをしているところにアキラがやってきた。


「悩んでいるって聞いてさ。力になれることないかな」


「残念だけど、魔法初心者の君にお願いできることはないかな」


「そっか。ところで、楽譜描いてみたんだけど」


そういって、五線譜を手渡される。


「これ……?」


「白鳥に変身する魔法の練習曲作ってみた」


見てみると、なるほど、白鳥魔法と音階が似ているようだ。


「こんな高音の難曲はなかなかお目にかかれるものじゃないよ。僕が来た世界でいえば、モーツアルトの魔笛ってクラシック曲によく似たタイプの難しさだ。高音が乱高下してさ。ただ、音階に注目すると基本的に5音しか使われていない。こういうのをペンタトニックスケールっていうんだ」


音楽理論を語りはじめるもんだから僕はただふんふんとうなづくばかり。


「20世紀のブルースロック系の名曲の数々でギターソロでこんな音階になることはある。だけど、人間の声帯でこれを歌うのは正気なのかって僕も思うよ」


「まあ、詠唱しないといけないけどね」


「そこで練習曲というわけだ」


「この曲とこの曲がスケールの練習だ。そして、この曲が、僕が作曲した練習曲『ハイトーンドリーム』だ」


「ハイトーンドリーム?魔法詠唱じゃないの?」


僕が聞くと、アキラは首を横に振った。


「残念ながら、魔法詠唱のルールからは外れた音階の曲だから、たとえ歌えたとしても、魔法の効果はない。僕のやってきた世界では、音楽とは音を楽しむためのもので、生活のために覚えなきゃいけないものじゃないんだ。だから、効果よりも美しさが重視される」


「美しさ……」


「君が歌えばきっと美しい曲になると思うよ」


とにっこりとほほ笑む。


「それって……」


遠回しの愛の告白じゃ。


僕は男だ。


男である僕がそんなこと言われてドキドキするはずが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
声楽学園日記~女体化魔法少女の僕が劣等生男子の才能を開花させ、成り上がらせたら素敵な旦那様に!~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ