調理実習かけっこ
アキラ視点
「調理実習かけっこ!?なにそれ」
「知らないの?有名な学校行事だよ?調理実習で女子が作った魔法ブーストクッキーを食べて男子が走って1位を決めるんだよ」
ソナタに説明されたが、あまりにもぶっ飛んだ行事のため、半ば信じられないでいた。
「知らないのか?」とアレグロもはやし立てる。
日本から異世界にやってきた僕は、当然ながら、この世界の常識を知らない。
だから、彼ら彼女らに一度、嘘をつかれてしまっていても信じるしかない。
「つまり、どういうこと?女子が作ったクッキーの魔力と男子の走力が合わさって順位を決めるってこと?」
「だから、そう言ったじゃん。しかもさ。このレース、クラス入れ替え戦も兼ねてるんだよ?」
「クラス入れ替え戦?」
「1位になればなんと、フェニックスクラスに行ける。逆にフェニックスクラスの子たちの最下位がうちのクラスに落ちてくるけどね」
「へー、なんかお笑い芸人の大手事務所の劇場勝ち抜き戦みたいなシステムだな」
「お笑い芸人?」
ついつい、うっかり、こっちの世界では通用しない言葉を使ってしまった。
「い、いやなんでもない。とにかく、勝てばこの学校に残留できるってことだよね?」
「そういうこと。だからみんな張り切ってるんだから。それはそうと、エリーゼは?」
「あれ?いつもならこの時間帯には来てるんだけどな」
「お"ーばーよ"ーゔー!」
ゾンビみたいな青白い顔をしてエリーゼが現れた。
せっかくの美人が台無しだ。
「ど、ど、どうしたの?」
「徹夜で夜中まで料理の特訓してた。絶対フェニックスクラスに成り上がってやるんだから」
「で、上達したの?」
「大丈夫。魔法力たっぷり、愛情もたっぷりよ」
愛情と言う言葉にドキリとする。
「あ、愛情って」
「はっはっは。冗談冗談。ちょっとドキッとした?」
と、僕の肩をぽんぽんと叩く。
なんか少し、巻き舌かかったしゃべり方になっていてちょっと面白いお姉さんみたいになっている。
「大丈夫?今からでも仮眠とった方がいいんじゃ?」
「大丈夫大丈夫」
と目を血走らせていた。




