ペッパー軍曹の目的
アキラ視点
「いえ……。敵も相当深手を負っているわ。このまま一気に畳みかけて、敵の魔法部隊を撲滅しましょう」
エリーゼはせき込みながら、敵情分析をする。
「ロングアイスだ……」
アレグロは呟いた。
「敵はフレイム用の防御しか張っていない。ロングアイスで敵の司令塔のキメイラを不意打ちで叩く!」
「ナイスアイデア!」
アレグロの提案にエリーゼは親指を立てる。
アレグロは手早くベーシックアイスを唱えると、ソナタはハーモニーを加える。
氷柱が、遠方に飛んでいく。
敵のキメイラは慌てて周囲に指示を飛ばすが間に合わず、吹き飛ばされる。
「ぎいっ!ぎいっ!」
司令塔を失ったゴブリンたちは四方八方に散り散りに去っていった。
「アレグロやったな!」と僕が駆け寄ると
「へへ、キリンクラスの俺たちでもこれだけできるんだってドラゴンクラスの連中にも見せてやりたかったぜ」
と、アレグロは鼻の下を指でこすりつつ、こちらにも賛美の言葉を投げかけてくる。
「しかし、お前らのロングファイアの威力と飛距離はすごかったな。アドバンスファイアくらいの威力があるんじゃないか?基礎技術だけでここまで戦えるんだな。俺たちも見習わないと」
すっかり、リラックスムードになったところだが、何かを忘れていないかと僕は思った。
僕は、そもそもの戦いの発端に記憶をたどり寄せる。
「まだ……油断しない方がいい!」
「その通りだ」
低い声に僕は振り返る。
ペッパー軍曹だ。
魔法の詠唱が聞こえる。
地面から、薔薇のようないばらだらけの植物が生え、アレグロの体を縛り付ける。
「ぐっ……放せ。くそっ。魔法が唱えられない……だと?」
「驚いたよ。君たちキリンクラスの生徒を十二分に仕留められるだけの魔物を召喚したつもりだったんだがね。まさか、ここまで健闘するとは」
「サルサ少尉は!?」
「安心しろ、やつにはとどめまでは刺していない。あくまで俺のターゲットは君だからね」
ペッパーの指先に居たのは、エリーゼだった。
「エリーゼ・オブルス。君と君のお父上は深く知りすぎたようだ。ここで戦死したことにしてもらう」
「あっ!?そういうことか」と口を滑らせてしまう。
エリーゼの悲しい過去。
父親が暴こうとした真実。
それを封印しにやってきたのだ。
このような学校のカリキュラムに割り込んで仕掛けてくるということはよほど、学園内に口が利く人間がいるに違いなかった。
「さて、どいつから料理してやろうかな?」
今、魔法を唱えられるくらい動けるのは、僕とソナタだけだ。




