アサシンゴブリン
アキラ視点
「フレイムシールド!」
エリーゼが素早く3秒ほどで呪文の詠唱を終えると、目前に半透明の盾のアイコンのようなものが表示される。
「あつい!」
「我慢して!」
熱湯風呂に入ったかのような熱気が体を通り抜けたが、火傷するほどではない。
炎を直撃したにしては軽傷と言ってもよかった。
これが、フレイムシールドと魔法防具の効果だというのか。
「ナイスフォロー!」とアレグロが遠くから声援を飛ばす。
「私、女声魔法得意なの!」
まるで、球技スポーツの選手同士の掛け声さながらである。
「ぼーっとしてないで!もう一発、ロングファイアーを飛ばすわよ」
と、サッカーの司令塔のような役割を手早く彼女はこなす。
しかし、今度は相手のメイジゴブリンもフレイムシールドを詠唱している。
こちらの攻撃も思ったようにダメージが通らない。
「あきらめないで、弾幕張るよ!相手に攻撃の隙を与えないために攻撃を継続するの!」
声が枯れそうなくらいにベーシックファイアーを唱える。
それにしても、エリーゼがこんなに有能な司令塔だとは思わなかった。
こんなに的確な指示が飛ばせるなら、チュートリアルドラゴンと戦うときも本気出してくれたらよかったのに。
「やっぱりだめね。この体だと威力が半減だわ。もっと、普段からボイトレしておかないと……」
本気を出したらもっとすごいかのような言いっぷり。
大したものである。
お互いにシールドを張り合い、敵の攻撃もこちらの攻撃も大してダメージが通りにくくなる。
中長期戦の様相を呈して来たかと思われたその時である。
敵の攻撃に変化が生じる。
最初は、僕の方に狙いを定めていたが、エリーゼの方に攻撃するようになったのである。
どうやら、誰がこのフィールドを支配しているのか敵も把握し始めたのである。
「くっ。女の体はか弱い……。こんなにダメージが通りやすいなんて」
何もしてあげられない自分が歯がゆい。
ひたすら、ベーシックファイアーを唱えるしかない。
背後から気配がしたので声を出す。
「危ない!」
「へ?」
背後からアサシンゴブリンが近づいてきて、暗殺魔法を唱える。
エリーゼの脇腹にダメージを与える。
アレグロが手早くシャウト呪文で倒す。
「大丈夫か?!」
「腹膜にダメージが……声が出しにくい」
「私が回復するわ……。ダメね。この傷は、私の実力だと回復に1時間はかかるわ」
ソナタが歯がゆそうに言う。
「エリーゼの魔法頼りにここまで戦ってきたというのに……。一体どうすればいいんだ!」
アレグロは悔しそうに地面をたたいた。




