白馬の王子様
アキラ視点
僕の体が軽々と宙に舞うが、何とか吊革につかまる。
他のメンバーもしゃがんだり、頭打って痛そうにしていたり反応はそれぞれだが、怪我と言うほどではない様子。
「いったいなにがあったんだ?おい!運転手!」
サルサさんは汽車の運転席の方に歩いていくので、僕たち4人もそろりそろりとついていく。
すると、魔物の群れが電車にわらわらと近づいてくる。
魔物といっても30体だろうか。
「数だけならば俺達でもあしらえる可能性があるレベルだが、問題は内訳だな。高位モンスターが居なければいいが」
とアレグロは冷静な分析をする。
言われてモンスターの種類を僕は僕で確認する。
緑の背の低い生物が視認できる。
それは、普段、プレイしているファンタジーゲームや洋画などで見かける生き物だった。
「ゴブリンだったら勝てるんじゃ?」
と気休め程度のセリフを試しに言ってみるが当然のように強い訂正が入る。
「バカね!メイジホブゴブリンじゃない。そう簡単に勝てる相手じゃないわ。グレイトキマイラもいるわ。冗談じゃない。私たち学生にこんなのと戦えっていうの?」
ソナタが悲観的に分析する。
そのとき、サルサさんが運転席から帰ってくる。
深刻そうな顔をしている。
「ダメだ。運転手が即死だ。畜生。誰がやったんだ。ペッパーのやつはどこにもいないし一体どうなってやがるんだ?」
「僕ならここですよ」
背後からペッパーさんが、サルサさんにショートソードで切りつける。
「ぬぐあっ!」
「させるかっ!」
アレグロが、脇に準備していたレイピアを抜き、対抗する。
フェイント程度の突きであったが、ショートソードの軌道を若干そらせる役割を果たすには十分であった。
しかし、ソードは少尉の背中を切り裂く。
「なんのつもりだ。ペッパー!」
「悪いが、そこの小娘の命をいただく!」
小娘。
この場に居て、そう呼べそうなのはエリーゼかソナタのいずれかだろう。
「お願いだから私のことを守ってね。白馬の王子様」
エリーゼが冗談めかして言う。
「ぼ、僕なんかにそんな力が」
「私が指示したときに、ベーシックファイアーを発射すればそれでいい。大丈夫。あなたならできる。私が保証するわ」
アレグロが呪文を詠唱すると、氷の刃が生成される。
「食らえ!ベーシックアイス!」
自分だってベーシック呪文を使ってるじゃないかと突っ込みたくなるところだが、加勢に入ってくれていること自体はありがたい。
ペッパーめがけて飛来するが、呪文で氷柱を真っ二つに切り裂いた。
「くくっ。学生風情が俺に勝てると思うなよ」
ペッパーは不敵な笑みを浮かべていた。




