課外授業
アキラ視点
彼女の真意を知りたくて、翌日の授業の日の始業前、彼女に話しかけた。
「大事な話があるんだ」
「私も大事な話があるー」
泣きそうな顔をしてきたのは意外なリアクションだった。
「言いにくいんだけど、生理になっちゃって。ナプキンのつけ方あってるかな?」
「はあ!?」
思いもよらぬことを相談されて僕は困惑してしまった。
というか、男子に普通相談することじゃない。
「寮の同室の女の子に相談すればよかったんじゃないかな?!」
「それが、入学してから、ずっと、私、いじわるしてたみたいで、仲がすごく悪くなっちゃって、話しかけにくいの。おなかいたた……」
「そ、そんなこと言われても、僕もいくら姉がいるとはいえ、そんな知識ないしな。ちょ、ちょっと待ってて、誰か探してくるわ」
教室を飛び出すと、国語の先生がいたので耳打ちする。
「ええっ。わ、わかった。私が面倒見るわね」
エリーゼはトイレに連れていかれて事なきを得たようだ。
彼女の体調はあまり良くないようだったので、重たい話は後日することにした。
国語の授業がはじまると思っていたが、迷彩服を着たガタイのいい男が教壇に立った。
「突然だが、学長の許可をもらって、カリキュラムの内容を変更する。ご存じの通り、魔族との戦線は日に日に拡大している。君たちの中にも卒業したら、従軍するものもいるかもしれない。そこで、5月1日から3日間かけて戦争関係の施設を社会見学してもらう。そのときの班分けを行う」
「質問いいですか?」
と、女子生徒の一人が素早く質問する。
「なんだ?」
「社会見学は全クラスですか?」
「いや、キリンクラスだけだが、何か不満があるのか」
「いえ、聞いただけです」
迷彩服がにらみを利かすと、女子生徒は声を小さくして慌てて着席した。
そのやり取りをみて、僕は学徒出陣のニュースを思い出していた。
エリートコースを進む生徒たちはこれまでどおり戦地から遠く離れた安全地帯で教育を受け、僕たち、落ちこぼれクラスはいずれ徴兵するのだろう。
このような情勢を理解していたからこそ、男子生徒も女子生徒も必死になって上位クラスに行こうとペアを探していたのか。
この世界のシビアさを改めて思い知らされた。
僕たちは、2ペア4人の班を組み、戦争博物館を見学に行くことになった。
「博物館って危なくないんですか?確か魔物出現多発地帯が近いんじゃ?」
と質問を僕はぶつける。
「はっはっは。大丈夫さ。魔物がよく出る場所は汽車で通り過ぎるだけだから。まあ、雰囲気を見に行くだけだよ。安心していいよ」
その言葉は信じるに足るものでないことは、やがて、僕たちは思い知ることになる。




