スカートめくり
エリーゼになったエリック視点
医務室。
白衣の先生はいないので勝手に使わせてもらう。
僕は治療魔法を唱えて、アキラの傷を癒していた。
傷ついた服も可能な限り修繕魔法でなんとかしようと努力するが、さすがに女声魔法を子どもの頃使いこなしていた僕でも完全修復は難しい。
「ありがとう」
「お礼を言うのはこっちだよ。まさかアキラがあんな無茶をするなんて……」
「ははは。後先考えずにあんなことやっちゃった」
「あの魔法どうやったの?」
「あ、あれか、こぶしを利かせてこんな風に」
風が巻き起こり、僕のスカートが、制服の音符スカートが巻き上がる。
水玉のおパンツをみたアキラは目をそらす。
スカートめくりされただと?
だが、僕は男だ。
そんなことをされたところで恥ずかしくとも何ともない。
だが、ここで正体が男だと疑われるのは困る。
恥じらってるふりだけでもしておかなければ。
「きゃあっ!」
「ご、ごめん」
なんか謝られてしまった。
ここで怒っておいた方が女子っぽく見えるか。
それっぽいこと言わないと!
「もうっ!女の子にこんなことしちゃダメなんだから!こんなことするの、私だけにしてよね」
「!!」
な、なんかワードチョイス間違えてしまった!
アキラのやつ、めっちゃ照れてるし。
ドキドキさせるつもりで言ったつもりじゃないのに!
変なムードになってる!?
そうだ、話題を変えよう。
「アキラってどこから来たの?」
アキラは自分は異世界から、魔法のない世界から来たと自己紹介した。
だから、音楽の素養はあるけれど、魔法の素養がないのか。
不思議に思っていたことで、いろいろと合点がいくものがあった。
「異世界に戻る魔法だったら、もしかしたら3年生のドラゴンクラスで教えてくれるかもしれないよ」
と、出所の情報が怪しい情報をアキラに言ってみた。
カリキュラムを見た限り、応用転移魔法のようなものは教えてもらえるようだ。
だが、それが、異世界に行けるとまでは書いていなかった。
「本当に?絶対、ドラゴンクラスに進級できるように努力するよ!約束する!」
ぱあっと明るい笑顔を浴びせられる。
純粋な男を悪い女が騙しているかのような構図に若干の罪悪感は覚えたが、いずれにせよ、この世界で生きていく上で、魔法の素養を身に着けておいて損はない。
「じゃあ、夜中に特訓しましょ?」
「特訓?」
「アキラは音楽センスはあるけど、魔法のイロハを知らない。弱点を補う形で私が直々にトレーニングしてあげるわ。アキラはきっと伸びる。才能がある。ドラゴンクラスにだって行ける」
おだて半分だが、まんざら嘘でもなかった。
臨機応変に魔法を操り、コブシ?という技術を駆使するセンス。
アキラは今はまだ魔法の世界ではひよっこでしかない。
だが、彼が金の卵であることは、僕の、魔法の英才教育を受けてきた自分の第六感が告げていた。
そして、エリーゼのやつをいつか見返してやるんだっ。




