ストリートファイト
エリックになったエリーゼ視点
「くそっ!気に入らねぇ!」
ショパンは学校から離れた路地裏でごみ箱を蹴散らした。
「あのちんちくりんのへなちょこ野郎め!俺に恥をかかせやがって、俺様のプライドは傷つけられたぜえっ!」
ご乱心のようだ。
調べたところによると俺の復讐のターゲットの又甥ということらしいが……。
とりあえず、姿を現してやるとするか。
俺、上陸。
「やれやれ、品のないやつだと思っていたが、ここまでとはな」
「き、貴様はエリック・モリス!」
「自分より格下と思い込んでいた相手に傷つけられたから、モノにやり場のない怒りをぶつけているわけか。情けない奴だな」
「やるか?先公もいないしな!ちょうどいい!ストレスのはけ口を探していたんだ!この場でボコボコにしてやるぜぇ」
煽ってみると怒りだしてファイティングポーズを取る。
実にわかりやすいやつだ。
「お前みたいな弱いもの相手に力を誇示してチョーシに乗ったオトコはアタシ…じゃなかったこの俺様は心底むかつくんだ」
「格下が偉そうにほざきやがって。忘れたか?俺様は学年主席だってことを」
「チュートリアルドラゴン相手の点数稼ぎ(RTA)がうまいだけの小物じゃないか。ただ、システムの穴を突いたハッキングがうまいだけ」
「言ってくれたな。貴族のお坊ちゃんよ。俺様はストリートボクシングに混じりながら育ってきたんだ。てめぇのような甘ちゃんとは違うぜ」
アドバンスファイアを唱えてくる。
対して、俺様はアドバンスアイスで相殺する。
「そんな!この俺様の炎はそんな生半可なお坊ちゃんに受け止められる代物じゃないはず」
「この俺様は血反吐を吐く思いで、男声魔法を練習して来たんだ」
この強靭な男の体を手に入れるために、庶民の俺はエリートの体を手に入れるために禁呪にも手を出した。
いつか来る復讐の日のために!
「食らいなっ!マスターファイアー!」
「な!なんだと!それは高校生レベルの呪文ではないはずっ!」
「お前のような凡人と同じトレーニングをしているとでも思ったか!勝つためならどんな魔法でも覚えて見せるっ!」
炎はショパンを包み込んだ。
「うぎゃああああああっ!」
俺は背後を振り返った。
「クララ!そこにいるんだろ?」
「は、はいっ!」
俺のペアは震えていた。
「この愚か者に回復魔法を。さすがにここで退学になるのは本意じゃないしな。証拠隠滅をしてくれ。この程度の火傷ならばなんとかなるはずだ」
「心の傷は?」
「回復しなくていい。この俺様に恐怖を植え付けてやりたい」
「鬼畜……」
「ふっ。引いてしまったか?」
「でも、刺激的でかっこいい。今までのやさしいエリックとは違う魅力。まるで王子様みたい」
王子様か。
元女子としては複雑なところもあるが、言われてみるのも悪くないものだ。




