ノブレス・オブリージュ
エリーゼになったエリック視点
1時間目の授業が終わり、トイレに行こうと廊下に立ちあがる。
女子のトイレって行列できるから大変だよね。
おしっこ出すときも膀胱の力を抜く筋肉が男子とは微妙に違うし慣れないことばかり。
アキラともこれから人間関係作らなきゃいけないし前途多難だ。
そんなことを考えながら廊下をふらふらと歩いていたら、目の前に大きな男子と小さな女子が。
やばい、避けないとと肩をひっこめるが、お構いなしに大男はぶつかってきたので吹っ飛ばされる。
「痛ってーな!」
「わあっ!」
どうやら、僕は、「きゃあっ!」とかわいく悲鳴をあげられるほど女子力というものはないようだ。
しくしく。
「どこ見て歩いてるんだ!」
「ごめんなさい!」
向こうが悪いのは明らかだが、ついつい謝ってしまう。
「あっれー?エリーゼちゃんじゃん」
「ああっ!お風呂場で嫌味を言ってきた女!」
見覚えのある顔だと思ったら、嫌な形で面識がある相手であった。
「ブーレって名前があるんだけど?」
そして、男の方の顔も見覚えがあった。
「ショパン!」
僕、エリックは学年次席だったが、学年主席は目の前にいる男だった。
「噂には聞いているよ。入学して天狗みたいなこと言ってたら、負け組クラスに配属された哀れな女だって?」
「ぐぬぬぬ……」
「この場で土下座したら許してやらなくもないわよ。私はおバカ女なのにも関わらず調子に乗ったこと言ってすみませんでしたーって。おーほっほ」
さすがに、本来の自分ではないこととはいえ、ここまで言われたらさすがに悔しくなってきた。
「エリーゼ?なにかあったのかい?」
と、絶妙なタイミングでアキラがやってくる。
「きたきた底辺男!」
「そのダッサいのがあんたのペア?ぷぷぷ。かまいたちしかできないって聞いたんだけど!バカ女にお似合い」
わざとらしく煽ってくるので困っているとアキラはふたりに立ち向かった。
「僕を侮辱するのは構わないが、エリーゼをバカにするのは聞き捨てならないな」
「バカ女をバカって言って何が悪いんだ」
「学年主席だかなんだか知らないが、ノブレス・オブリージュって言葉を知らないかい?僕が来た世界のフランスって国の言葉なんだが、地位にはそれ相応の品格を伴わなければならない。残念ながら、君たちには品性と言うものを感じない」
「舐めた口聞きやがって、外に出ろ!決闘だ!」
アキラに勝てるわけがない。
このまま、僕のせいで彼が傷ついてしまったら……。
「やめときなよ!言われた通り土下座でもなんでもするから、この場は収めて!」
「止めないでくれエリーゼ。僕にもプライドがある。負けると分かっていてもね」
周囲のやじ馬の一人は生徒手帳を取り出し一文を読み上げた。
「学内規定50条の4、学生同士の決闘は、男同士でのみ、校庭にて許される!」




