クラス分け試験
アキラ視点
「ペア番号200110、アキラ・スズキとエリーゼ・オブルス」
「はい!」
僕たちは、クラス分け試験を受けていた。
この試験の成績によって、僕たちは、エリートクラスに入れるか決められる。
試験内容は仮想戦闘だ。
最新コンピュータ技術と具現化魔法の組み合わせによって作られた、仮想空間に僕たち生徒は放り投げられ、チュートリアルドラゴンと戦わされる。
「ああ、くそっ!」
「惜しかったわね!よく頑張ったわ!」
模擬戦闘を先に済ませたペアが仲良しそうに悔しがっているのを姿を背にして、僕たちは、ヘッドギアを装着し、意識を放り投げる。
目が覚めると、サンドボックスゲームから出てきたようなドット絵ライクのポリゴンデザインのドラゴンが目の前で火を噴いていた。
その一方で、エリーゼと僕は、リアルの世界に忠実な肉体を得ていた。
周囲は草と水のブロックが積みあがっている。
おそらくは湿地帯をイメージしてデザインしているのだろう。
この模擬戦闘で使っていい魔法は、事前申請されているもの1つずつのみだ。
僕はかまいたち、エリーゼは、星霊癒合を使う申請をした。
「ま、せいぜい頑張ってね」
気の抜けた声援が飛んでくる。
「言われなくても頑張るよ」
かまいたちの魔法を詠唱する。
風の刃が飛んでいき、ドラゴンに当たる。
あれ?反応がない。
ゲーム特有のダメージ表現、飛び出す数字のようなものが表示されるわけでもなく、ダメージモーションのようなものがあるわけでもない。
効いていないのか?
再び、詠唱し、ドラゴンの間近に近寄り、風の刃を確実に当てる。
やはり、反応はない。
「バカね。かまいたちが効くわけないじゃない。チュートリアルドラゴンは風属性。同じ属性の攻撃をしても威力は半減するだけ。義務教育で習った常識でしょ?」
なるほど。
確かに、小中学生の頃に遊んだコンピュータゲームの中にはそのようなゲームデザインが施されているものがいくつかあった。
だが、あいにく僕はこの世界の住人ではないし、それ以前にナーシャ達もそのような教育を受けている風ではなく独学で魔法を使っていた。
教育の地域間格差。
僕がやってきた日本においても、問題になっているが、ピンと来ていなかった。
それが、今になって自分自身の身にずしんとのしかかる。
「どうして魔法を登録するときに教えてくれなかったのさ!」
「聞かれなかったからかな?何か考えがあるのかと思って」
そう言われてしまえば、それ以上責めようがない。
だが、それにしてもやる気がなさすぎだろう。
少しでも向上心があるのなら、かまいたちを登録しだしたときに、むしろ、僕を責めて怒りだしてもいいくらいだ。
まるで、クラス割り当て試験の結果なんかどうでもいいかのようなやる気のない態度。
なぜだ。
僕の成績次第で彼女の学園生活の行方も決まるのに。
なにか彼女には秘密がある。
だが、それが何かは僕は知る由もなかった。




