ウサモフとの契約
アキラ視点
「お前は、何者だ」
仲間の一人が当然の質問を問いかける。
「僕の名前はウサモフ。異世界で知恵ウサギと呼ばれている動物だモフ」
「貴様、なぜ魔法を唱えることができる?」
「ある偉大なる魔術師が、僕を異世界から連れてきて召喚獣になるように改造したモフ」
「その魔術師の名前は?」
「アイネ・クライネ博士」
「著名な研究者じゃないか」
周囲は驚いた表情をするが、僕だけがぼんやりとしていた。
「誰それ?聞いたことがない」
「お前、アイネ博士も聞いたことがないのかよ」
常識だろって言わんばかりのあきれた顔で僕の顔を覗き込む。
「アイネ・クライネ博士は著名な研究者だったが、人間の体を入れ替える禁呪の研究に手を出したことにより、学会を追放され、不遇の晩年を送ったとされている人だ」
「博士は、動物を召喚獣にする魔法の研究もしていてね。それによって生み出されたのが僕さ」
ウサモフは補足するように言った。
「よくわからないけど、契約のようなものを結べば、君を召喚獣として使役できるってこと?」
「そうモフ。契約者を僕も探してさまよっていたモフ」
話が早いとばかりにウサギが契約を促す。
「やめておけ」と仲間が釘を刺す。
「召喚獣の契約は1人1体までしかできない。そんなどこの馬の骨かわからないやつと契約したら一生後悔することになる」
「でも……かわいいじゃん」
僕は直感を信じることにした。
「決めた!君と契約をする!」
「そうと決まれば話は早いモフ。これを読むモフ」
契約呪文書を手渡されたのでそれを僕は読み上げる。
僕はウサモフとの契約を済ませた。
その後はバイラスを見つけることができずに意気消沈のまま男たちは村に帰った。
「ただいまー。ごめん。思ったような成果が今日はなかったわ」
しかし、ナーシャは目を輝かせていた。
「おめでとう!アキラ!」
「へ?」
「あなた、ミラヴェニア魔法学校に合格したのよ。補欠だけど」
その言葉の意味を理解するのに僕は数秒かかった。
「うそだ」
「本当だってば!じゃじゃーん」
ナーシャは僕の前に合格証書を突き出した。
「ええっ!」
そこには確かに合格の二文字が書かれていた。
「こんな辺鄙な村から合格者が出るなんてなあ。今日はお祝いだ!酒池肉林で大騒ぎするぞ!」
村長は、誇らしげに胸を張り、若者に酒宴の準備を命じた。
その晩は、隣村の村長や見知らぬ人たちバイラスの肉を持って集い、どんちゃん騒ぎとなった。
すごい試験に合格したんだと、僕はそのときになってはじめて実感したのだった。




