結婚式!そして明日へ
エリーゼ視点
青い空、白い雲、鳩が飛び交う。
今日は、アキラとの結婚式。
ウェディングドレスを身に包む。
あれから2年か。
生命の危機をアキラとエリックに救われ、私は、娘フォルテを出産した。
すくすくと育ち、1歳と8か月だ。
お父さん、この体になってからのお父さんが、私の手を引きアキラの元へ連れていく。
魂は、別人になっているとはいえど、娘を嫁にやるのは、堪えるようで昨晩泣きはらしていた。
タキシード姿のアキラが出迎える。
似合わなくて笑ってしまいそうになる一方で馬子にも衣裳だなと感じた。
教会の席には、親族一同、友人一同が集まっていた。
アキラの姉、鈴木涼子さんの顔にふと目を止める。
「こうして、こっちの世界とあっちの世界が簡単に行き来できるようになったわけだから、アキラと簡単に連絡できるようになかったから、『声楽学園日記』いらなくなっちゃった」
そう言って、大事なノートを昨日渡してくれたのだった。
「最近の日記読むとさ。あいつ、エリート街道に進んで、モテて調子に乗ってるみたいだから、思いっきり尻に敷いてやりなよ。今のところ、あんたに一途みたいだけど、浮気されないように気を付けてね」
そう。
私とアキラは、異世界転移の魔法をついに見つけることができたのだ。
1年の文化祭のあの日、私はアドリブの音階で新魔法を編み出した。
それと同じ要領で、既存の物質転移魔法と同じスケールであれこれ魔法を試したら、日本とミラヴェニアをつなぐことができるのではないかと、3年間試行錯誤してきたのだ。
そして、魔法をようやく見つけることができたのがほんの1か月前。
日本のアキラの実家と連絡が取れると、新しい親戚の顔合わせも兼ねて、正式な結婚式をしようと言う話になった。
式はつつがなく進み、新郎新婦がキスする場面になった。
毎日のようにアキラとキスをしているが、さすがに衆目は恥ずかしい。
目を閉じて顎をあげると、唇をついばまれる。
アキラのスケベ。
昨晩も2人目作ろうだなんて言って僕に私にあんなことやこんなことをして、終わった後も甘えちゃって!
ううん。
本当にスケベなのはそんなアキラのことが大好きな自分だ。
ああ、私はいつからアキラに夢中になったんだろうか。
入れ替わって初日、ショパンに対決を挑んだときには、既にいいやつだとわかっていた。
社会見学の日、合唱魔法を唱えたあの日にはもう、彼の隠れた才能は見抜いていた。
やはり、決定的だったのは文化祭。
ロマンチックな星空の下、ハイトーンドリームの練習を重ねたあの日々だろうか。
ダンジョン探検会で正式に告白され、その後、甲府の実家にご挨拶に行った。
その他にも色んなことがあった。
湖の下の古城から、秘書さんを救い出し、新聞社に駆け込み、歴史の証言者となった。
数々の冒険を重ねて私たちは強くなった。
僕は、かつて男だった、
女という役割は、あくまでロールプレイにすぎない。
だけど、アキラの前で妻を、そしてフォルテの前で母をロールプレイする毎日は幸せだ。
君がいたから女として生きようと思った。
君がいなければ、きっと男に戻ろうとしただろう。
式は、終わり披露宴に。
見慣れた学園の友人たちが出迎える。
「俺、卒業したら進路はトレジャーハンターな!」
「相変わらず、ガキなんだから!そんなガキなあなたに着いていってあげるわ。バカだから心配だし」
アレグロとソナタは相変わらず仲良く掛け合いをしている。
「魔法省の職員になる。官僚として成り上がってやる」
ショパンも彼らしい進路を取る。
「俺は警察官僚になる。アマデウス議員のようなやつが再び現れないようにしたいからな」
エリックらしい進路だ。
元の自分としては誇らしい。
クララは、軍の音楽隊に配属されるという。
私は魔法の研究者、アキラは召喚獣の保護官を目指す。
みんな、それぞれの夢を抱き、この春、学園を巣立とうとしていた。
それから、1週間後、卒業イベントを兼ねたダンジョン探検会が開催された。
「オッズは、アキラ&エリーゼペアが1.7倍、圧倒的に1番人気だな。対抗は、3.5倍のエリック&クララペア。ショパン&ブーレペアは8.5倍。お前ら、注目されてるみたいだよ」
アレグロは新聞を読み上げる。
「私たちはどうなのよ!」とソナタが突っ込むと
「うるせえ!107倍でい!ぎりぎりでドラゴンクラスに上がれたんだから仕方ねーだろ!」
どっと笑いが起きる。
「さあさあ、スタートの時間だよ。全員入り口に集まって!」
わらわらとスタートラインに集まる。
このイベントは、真剣勝負でもあったがお祭りでもある。
「位置について!よーい!スタート!」
完
アキラとエリックとエリーゼのお話はこれで終わりです!
最終回までお読みいただきありがとうございました!
下部にある評価を面白さに応じて入れていただければ嬉しいです!




