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このために異世界にきたんだ~異世界を転々としまくった俺が最後に幸せになる話~

作者: 十月猫熊

俺は、昔、地球という星の、とある国に住んでいた、少しオタクな会社員だった。


田舎から上京し、小さなアパートで独り暮らしをして、毎日仕事に行っては自宅に帰る日々。

そんな毎日の楽しみのひとつは、スマホの中でのゲームやマンガや小説だった。


その中でも特に気に入っていたのは、異世界でモフモフに囲まれて暮らす話や、この世界での料理を異世界で広めて…といった、あまりシリアスではないスローライフな物語。

エッセンス的に恋愛がちりばめられていたりして、ストレスを感じずに読めるところが好きだった。


だというのに。


ある日、仕事帰りに家に帰る途中、飛び出してきた猫を助けようとして、トラックにひかれる、というまさかの事態に陥った。


そして、死んだと思ったら…ここはどこ?という山の中にいたのだ。


そう、どうみてもテンプレ祭りだ。


やった!これで思う存分モフモフができる!

それとも、実家でさんざん姉の手伝いをしてきたお菓子作りの経験や、自炊してきたことが活かせるのか?!


いや………待て待て、落ち着け俺。


喜ぶ前に、既に読んだことのあるマンガや小説や、遊んだことのあるゲームの世界なのか、知らない世界なのかをまず確かめねばなるまい。

BL世界の悪役令息の可能性だってあるしな?


俺は落ち着いて、山の中を見渡し、そして、次に自分を見下ろした。


ん?ちょっと待て…スローライフを楽しむにしては、俺、やけに体がムキムキしてないか…?


少し動揺した俺の前に、第一村人ならぬ、第一異世界人が現れた。


テンプレ祭りであるからには、最初に接触した異世界人といい仲になる可能性は高いわけで…ここは美少女か?!と見つめた先にいたのは。


…やった、美女だ!と思ったのは一瞬だけで、…男だった。


現実は甘くない。


BLっていうものがどういうものなのか気になって、ちょっとは読んだけど…え?まさか。

ここ、BLの世界?


そう思って改めて我が身をよく見れば、地球での体よりも背も高くてがっしりとした体つき。

そして目の前の男性は中性的な、イケメン…。

しかも、王子だという。


ますます、BLなのか、そうなのか?と怯える俺だったのだけど、直後にとんでもないことが発覚して、どうでもよくなってしまった。


俺が、ハードだからなー、と、全く読まないわけじゃないけど避けていた、ガッチガチの魔物と魔王がいるシリアスな世界で、俺は勇者召喚された勇者で、王子はともに戦う仲間、だというのだ。


ちょっとした召喚魔法の手違いで、俺が神殿じゃなくて山の中にでちゃった、と神託が下って、王子が直ぐに転移魔法で迎えに来てくれたっていう話だった。


そうそう、テンプレ祭りなので、もちろん異世界人でも言葉は通じるし、聞きなれない単語を聞いても異世界転生特典によって、それがどういう意味なのか、何を示しているのかが分かってしまう。


とまあ、そういうわけで。


BLだのモフモフだの旨いものだの悠長なことは言っていられない、常に死を意識した毎日の中で、俺は王子他数人の仲間たちとともに、魔王を倒してこの世界に平和を取り戻した。


最初にさらっと神託が…って言ってた通り、この世界は、神様が過干渉の世界だった。


まあ、そのときは、そういう世界もあるんだね、と人ごとのように思っただけだったんだけど。


平和を取り戻したことだし、余生をどう過ごそうか、まさかこれからBL展開始まるのか?とかびくびくしていたら。


地球から飛ばされたときのように、いきなり、すこーん、とまた異世界に飛ばされてしまった。


「はあ?ここどこ?」


今度はちゃんと神殿らしきところに出た。


そして、俺は魔王を倒したりするのに、めちゃくちゃ戦ったから、筋肉凄いことになってて、ガチムチのマッチョの剣士な見た目になっていたんだけど、それがそのまま継続してた!ちょっとだけ若返っただけで!


で、そこで、第一異世界人と会う前に…神様と話す機会を得た。


神様いわく…自分の思い描く世界を創ろうと頑張るのだけど、毎回どこか詰めが甘くなるのだとか。

で、さっきまで俺がいた世界では魔物や魔王が湧いちゃって、困ったあげく、そこそこ上手く回ってる世界から俺を盗み出してきて、働いてもらった…という話。


いや…盗んだとか。

勘弁してくれ。

俺は盗品か…。


まあ、俺の感覚で言わせてもらえば、神様というのは、俺が読んでいた小説やマンガの作者みたいなものだった。


で、こういう世界を創ろう!と張り切って作っていくのだけど、そのうち、あれれ?思ってたようにならない?ということになったりするらしい。


うまくいかないのが結構初期だったりすると、その世界をつぶしちゃうのだそうだけど、さっきまでいた世界みたいに、そこそこ上手くやれてると思ってるやつは、なんとかテコ入れして、どうにかしよう、と思うらしい。


で、さっきまでいた世界が落ち着いたし、いい働きを見せた俺には、今度はこの世界で働いてほしいというのだ。


「いや、俺、見返りなくない?」

俺にどんなメリットが?!と膨れていたら…。


俺が最初に思い描いていたような、モフモフスキーには天国となるだろう世界を今まさに計画中だ、というのだ。

で、その世界ができた暁には、そこで思う存分モフモフと戯れ、料理を作ってスローライフできるようにしてくれ、幸せに暮らせるように約束すると…。


「乗った!」


そのときの俺は若かった。

神様の感覚とヒトの感覚が違うとか、思い至っていなかった。


…で。

その世界でのゴタゴタを片付けると、次の世界へ…を続け続けて…。


おっぱいの大きいお姫様とイイコトをさんざんした世界もあったし、そんな余裕もない深刻な世界もあった。


壮年といわれる齢まで過ごすことができたこともあったけど、その世界が落ち着いたら余生を楽しむ暇もなく、また次の世界へご案内。


とにかく、死んで生まれ変わるわけじゃないので、記憶がひたすらに蓄積されていく。


そして新しい世界でスタートする時には、いつもハタチそこそこの若者の姿になっているのだ。


というわけで…果たしてどれだけの異世界のテコ入れしてきたんだか、異世界を渡り歩きすぎてもう分からなくなってきた頃。


ようやく。


手伝ってもらった世界のうちのいくつかはやっぱり駄目になったけど、おおむね上手くいきそうな世界を厳選して残すことができたし、俺のご褒美のためのモフモフ天国の世界も大体できたから、と、伝えられて、この世界に飛ばされた。


まあ、神様にはことあるごとに、人気のあった異世界もの小説やマンガの世界観とかを設定を教えてやっていたので、だいぶそれを参考にしたことで、設定が破綻する世界を淘汰できたらしい。


だから、この世界も、しばらく見てみたところ、おおむね上手くいっているようだった。


そして、この世界での俺の立ち位置は、なんとこの世界に存在する『神』。


俺がこの世界に飽きるまで、もしくはまたどこかの世界のテコ入れに行くまで、不老不死でいられる。


そして、絶大な魔力を持っていて、異世界を転々とする間に身に着けた、強大な魔法のお陰で、天候も操れるし、町一つくらいなら一瞬で消し飛ばせるし…っていう…。


まあ、俺って勇者的存在だろ、と思っていたけど、それもここまで突き詰めると、確かにもはやヒトではないよなーと遠い目をすることになったのは、誰にも言っていない。


で。

創造神によって、この世界を統治する神様ですよ、と大々的に派手にこの世界に遣わされた俺は、まあ、神殿で至れり尽くせりの生活をすることになった。


でも、そういうのって…飽きちゃうんだね…。


今までは飽きる前に次の世界に飛ばされていたから、なんというか、この世界にもあとどれくらいいられるのかな…と常に思っていたし、口にしなくてもそう思っているところがまたなんか憂いのある表情とかになるらしくて、お陰で女性にはモテモテだったのだけど。


神様となると、もうモテモテとかいう話じゃないし。

自ら進んで体を献上します、というのがまたこの世界の女性たちにとってのステータスになるようになっちゃったりもして。


でも、モフモフスキーの天国、ではあった。


俺達同様の人族と、獣人族というのが暮らしている世界だった。


獣人たちは、ほぼ人の形で耳としっぽがある程度から、全身毛だらけの獣の姿なのに、二足歩行して、人と同じ言葉を話せるのもいるし、体は人間なのに頭だけ動物っていうのもいたし、普段は全く人と同じ姿をしているのに、獣の姿に変身できる、というのもいた。


まあ、俺がどっかで読んだことのあるタイプは全部あったというわけだ。

そういえば、かなり初期に、創造神に熱く語ったことがあったので、取り入れられたらしい。


それで、一通りの獣人さん達とモフモフイチャイチャをした結果。


お前さてはエセモフスキーだったな?!と糾弾をうけても甘んじて受け入れるしかない結果となった。


普段は人型で、獣に変身できるタイプが一番好みだったのだ。

神様が、選り好みをしちゃいかんよね。


という訳で。


地球での、とある神話の神様もやってたなーと頭の片隅でちらりと思いながら…。

強力すぎる力をわざわざ自分で封印して、ただの人のフリをして、俺は神殿を飛び出した。


神様としての俺の力が必要になった時は、この石に向かって呼びかけてねー、すぐに戻ってくるから。

…というものを神殿に残して、俺はこの世界を隅々まで楽しんでみようと思っていた。


あの神話の神様は、お、美少女はっけーん!って人間の女の子を手籠めにして子供産ませて、奥さんの女神にめっちゃ怒られたりとかしてたけど。


俺は奥さんの神様もいないしね、かといって、さすがにいきなり乙女を手籠めにしたりはしないのですよ。

地球人時代のモラルが残ってるのかな?


で、俺は、色欲重視ではなくて、食欲重視の旅に出た。


この世界に来て最初のころに、お菓子…大好物だったクッキーとかマドレーヌとかフィナンシェとかの他にも、ポテチとかせんべいとか羊羹とかも伝えたし、なんならフライドチキンとかハンバーガーとかも伝えてしまったので…嗜好品に関してはかなり充実している。

異世界で料理といえば、のカレーもちゃんと再現できてるし、とんかつもラーメンもある。

基本的な思いつく限りの料理は伝えたと思っている。


この世界の食文化に干渉したのが、元、食に小うるさい日本人ならではだなーと思いながら、世界中にそれらの料理が浸透しつつあるのを、食べ歩きして楽しんでいた。



そして、とある港町で。


今日は何を食べようかな、と歩いていた俺の目の前で、可愛い女の子が小さな食堂の入口に開業の札を引っ掛けた。


少しつり目のくりっと大きな目が印象的な女の子にまず目を惹かれ、そのまま眺めていると、さらに店の前に、黒板に白墨で書かれたメニューが立てかけられた。


今日はここにしよう。

そう思った。


ここはラーメンがあったのだ。


本当に、何気なくそれを注文して…一口すすった俺は、目がカッと見開いたのが自分でも分かった。


港が近いのと、少し行くと山になるからだろうか…。

これは魚介と豚骨のダブルスープ!

遠い地球の記憶を呼び覚ます。

好きだったあの店の味に近い……。


俺はその町に滞在して10日間、毎日食べに通った。


載っている具材は地球でのときとは違うけれど、これはこれでありだな、とここの店主の試行錯誤の結果に頷く。


今日もスープの最後の一滴まで飲み干し、余韻に浸っていると、おずおずと店員の女の子に声をかけられた。

いつもくるくるとよく働くな…と思って見ていた、あのつり目のかわいい子だった。


「旅の剣士様、うちのラーメン、気に入っていただけましたか…?」


俺はもちろん即座に頷く。

気に入っていなくて10日も通うわけがない。


俺は昭和の名作漫画に出てくる、某小池さんかというほどに…実はラーメンもこよなく愛していたのだ。


ラーメンの食べ歩きと、ネット小説やマンガとの相性はいい。

ラーメン屋への電車移動中も、待ち行列の間も、小説やマンガやゲームは俺のお供だった。


そんな過去の記憶を久しぶりにまざまざと思い出させてくれる、こんな食べ物との出会いは…数百年ぶりだろう。


「えへへ、嬉しいです。お父ちゃんと二人で、何年も試行錯誤して最近たどり着いた味なんです」


「ああ…本当にこれは素晴らしいよ」


俺はこの親子にチャーシューを教えることを思いついた。

豚骨を扱ってるんだから、肉だって入手できるはず。


俺の提案に、父子はすぐに飛びついた。


食堂のオヤジさんは、早くに妻を亡くし、男手一つで食堂を切り盛りしながら子育てをしてきたらしい。なので、他の町のことすら知らないようだった。


旅の途中で食べたということにしたチャーシューのことを、…まあ、地球は異世界の旅のスタート地点だけど…興味津々で聞き、それを再現するまで、俺はまたこの食堂に毎日通うようになった。



ちなみに、この世界を創った神に、俺の元の世界を覗き見してたんなら分かるよな?食材や何やら、ちゃんと再現しとけよ?とちゃんと脅し…もとい、念押ししておいたのだ。


だからこその、俺の好きな料理がこの世界で再現できて、広まっているわけなのだけど。


そんなわけで、この食堂でも醤油は既に使っていたので、チャーシューの再現は結構すんなりといった。


ついでに、他の国の話などをする俺の話を、目をキラキラさせて聞く父子と過ごすのは…久しぶりに楽しかった。



そしてある日、父子から、実は人ではなく、猫系獣人なのだ、と打ち明けられた。


国によっては、獣人の方が下に見られることがあるので、他国からきたように見える俺が、どう思うかと気に病んでいたらしい。


獣人と人間の間での差別とか、確かに良くある設定だからうっかりそれも話していたらしく、この世界では、そこまで再現されてしまったらしい。

うっかりしたな…。


でも、へえ、それがどうしたの?という反応だった俺に、父子はホッとした笑顔を見せてくれた。


そうして。


チャーシューもこの食堂の名物となり、ラーメンの具材だけでなく、チャーシュー丼も大人気となった。


もうここにいる理由もなくなったな…そう思っても、一向に俺の足はどこかへ向かおうとしなかった。


いつしか…俺はそのつり目の娘に夢中になっていた。


とにかく、可愛い。あざといほどにかわいいのだ。


俺はオヤジさんに頭を下げて、娘さんをください、をした。


そして、そのあとで、その娘本人に求婚をしていなかったことに気が付いて慌てた。


「あの、その…俺の伴侶となってくれないだろうか…」


しどろもどろの俺の求婚に、娘…リリーは顔を赤くしてはにかみながら…はい、と答えてくれたのだった。



まあ父子にしてみたら、俺の見た目はどう見ても尋常じゃない腕前であろう剣士だ。

身分の高い人に違いないから…と距離を置こうとしていたのに、こちらがさっぱり旅立つ様子を見せないので…リリーは俺への恋情で苦しくなっていた、と後に打ち明けられた。


俺は不老不死なので、そのことについてはどうしようかなーと思いつつ、まあ、その時考えようっと、と先送りにすることにした。


で、宿を引き払い、その食堂に住み着いて、オヤジさんと一緒になって、料理をするようになった。



「はあ……リリーたん…今日も可愛さ爆発だな…」


手元では大量のねぎを仕込みの為に刻みながら、その目は店内の掃除をする愛しい妻にくぎ付けだ。


「ああ、リリーたんが拭いてるあのテーブルになりたい…」


「はあ…ムコ殿、今日は昼からは隣のおばちゃんが手伝いに来てくれるって…」


「ええ?じゃあ、夜営業の仕込み終わったら、リリーたんとお出かけしてもいい…?」


オヤジさんの言葉を最後まで言わせずに食い気味に返す。


正式に結婚したことになった俺たちは、いまや新婚さんなのだ。


クールなイメージだったらしい俺が、嫁にメロメロになっているというのは近所でも評判になっているらしいが、正直どうでもいい。

一秒でもリリーたんと一緒に居たいのだ。


いや、一緒にいるっちゃあ、今も一緒にいることになるのかもしれないのだけど、そうじゃなくてくっついていたいっていう意味の方で。


「いや、夜営業の仕込みもやってくれるって言ってるから…その今やってる仕込みが終わったら今日はあがっていいから」


「ありがとうございます!」


俺は一秒でも早く仕込みを終わらせようと、久しぶりに自分に素早さを上げる魔法をかけて、あっという間に終わらせた。


「では遠慮なく。……リリーたぁん、お休み貰ったよ!」


え?と掃除道具を片付けようとしていたリリーたんをさっと片手で横抱きにして、反対の手で掃除道具をしまい、俺達の自室に転移した。


店の三階が今の俺達のスイートホームだ。


「リリーたん、もらったお休みだけど、どうしようか。前に言ってた海辺の散歩?それとも山に登って、景色を眺める?」

「私は…ダーリンがいれば…どこでも…」


まだ俺の腕の中で抱かれたままのリリーたんは、とろんとした顔をして俺を見上げる。


俺は獣人じゃないけど…この世界、ちゃーんとつがい設定もあるのだ。

で、俺はこの世界の神なので…ありとあらゆる獣人にとって、番と感じさせることができる。


だから、こうして密着すれば、番の匂いに当てられて、こんな可愛い姿になってしまうのだ。


まあ、この世界に来て数百年はこの設定のお陰でさんざんとっかえひっかえ楽しませてもらったんだけど…。

でもそのせいで、飽きちゃったんだよね。


でも。

こっちが可愛い、好きって思っている娘にとろけられると…たぎる。


ラーメン食べ歩きとお菓子や料理作りとネット小説とゲームとマンガに明け暮れていた、異性に興味の無かった当時の俺。


お前は、実は意外と肉食だったぞ?と教えてやりたい。


「リリーたんがどこでもいいなら…まずは一回、リリーたんを食べさせて?」


「ああん。夕べもしたのに…」


リリーたんが発情期じゃない今は、寝る前に一回か二回、美味しくいただかせてもらっている。


こっちは神だからね、その気になったら一週間でも十日でもやり続けられちゃうんだけど、さすがにそれしたらリリーたんが死んじゃうから。


普通は発情期じゃないのなら、するのは月に一回かどうか、らしい。


ヒトには発情期が無いから、逆にいつでも盛っている、というのをオヤジさんも知ってるからか、娘が毎晩あんあん鳴かされているのを大目にみてくれているようだ。

いや、実際には結界でちゃんと音漏れ防止はしてて、聞かせてないけど。


それよりも。毎晩一回か二回に我慢してとどめていることに、気が付いてもらえたのかもしれない。


俺は慣れた手つきでリリーたんの服をくるくると剥ぐ。


「ねえ、リリーたん、お願い、いつもの…」


「うん…」


リリーたんは少し恥ずかしそうにしながら、その体を猫に変えてくれる。


全く獣人のつくりはどうなっているのかわからない。

普段は俺の肩くらいの背の高さもあるリリーたんは…猫になると地球での家猫くらいの大きさになってしまうのだ。


リリーたんは普段は麦わら色の髪に、青い目をした美少女だ。


でも、猫になると、体が白いのに、足先が靴下をはいているように麦わら色で、耳と尻尾も先の方だけが麦わら色だ。目の色は青で変わらない。


「あああーリリーたんのこの白い毛はどこからくるんだろう…白い肌なのかなー、はーたまらん」


リリーたんは長毛種なので、それはもう、もっふもふだ。


「あああああああああああああ」


俺は奇声を上げながら、ころりとひっくり返したリリーたんのお腹に顔をぐりぐりと押し付け、顔面でもそのモフモフを堪能する。


そして、すうううーーとお腹に顔を埋めたまま、匂いをかぐ。

ああ至福…。


匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、肉球をぷにっと押す。

反対の手では、毛並みを撫でて、その感触を楽しむ。


「ああ、リリーたん、最高だよ…」

「にゃ…」


リリーたんの最高なところのもう一つが、猫化している間は、言葉が話せないことだ。

ああ、なんて可愛いんだ!


地球で生きていた頃、実家で買っていた猫たちは、結構穏やかなコで、肉球をぷにぷにして爪を出し入れして遊んでいてもあまり怒らなかった。

仕方ないなあ、という雰囲気で、しばらくはやらせてくれたものだ。

でもしつこいと、シャーっとひっかかれたりして。


でもリリーたんだと、ひっかかれる心配はない。


リリーたんの両手の肉球を押して、爪を出したり引っこめたり、肉球の匂いをかいだり、耳をぱくっと咥えて、体中をしつこくくすぐっても…ひっかかれない。


「にゃ、にゃー…」


しっぽの付け根をとんとんしてやって腰砕けにさせた後で尻尾をしごきあげてやると、リリーたんはくたっとしてしまう。

それがまた可愛くて、またお腹に顔をうずめて毛をわしゃわしゃとさせて…。


「あ」


リリーたんがヒトの姿に戻った。


俺は、猫のリリーたんを思う存分味わっているときは、そっちの気が一切ないんだけど…リリーたんにしてみると俺から全力の愛撫を受けていることになる。


そして、辛抱たまらず、になると、人の姿に戻ってしまうのだ。


そして、その戻った時の姿が…それはもう、妖艶で。


どちらかというと普段は元気系美少女という感じのリリーたんが、こんな色気を…?と誰にも見せないけど、多分みんなが驚くほどに色気を駄々漏らせて、煽ってくる。


そして、それを見ると、俺はその気モードになるのだ。


「もう、もう…お願い…」

「ダメだよ、お楽しみはこれからでしょ」


リリーたんにしてみたら、我慢の限界になってヒトの姿に戻ってしまうのだけど、俺としてはようやくこれから始まるところなのだ。


ぷるぷるの唇に吸い付いてキスもしたいし、それ以上もしたいし、にゃ、じゃなくてあんあんいう可愛い声も聞きたいし。

まあ、にゃ、もいいけどね。


他の世界で、さんざん美女といわれる女の子達を抱いてきたけど。さらにいうなら、この世界に来てからもかなり…。


でも、言わせてもらおう。


リリーたん、サイコー!


こんなこと聞いたらリリーたんは怒るかもしれないけど、なんていうか、リリーたんって、米みたいな感じ?

毎日食べても全然飽きない。

それに対して妖艶な美女って、フォアグラの乗っかったステーキみたいなもの、っていうか…。


ああ、リリーたん好き…。

きゅうっと抱き着いてくるりりーたんに、胸の奥から愛しさがこみ上げる。


神殿にいたときは神気をまとっていたからだれも孕まなかったけど、今は神気もしまってあるし、リリーたんに孕んでもらえるかも?


うん、そうだ。リリーたんと俺の子ども、見たい。欲しい。


「リリーたん、今日、3回してもいい?」


「ああん、好きぃ…」


「そんなこと言うと10回に変更だよ?」



そうして、無事に、次の年にはリリーたんと俺の子が生まれた。


しばらく試行錯誤したけど、見た目を老けさせる偽装の術もすぐに確立した。



リリーたんが可愛いおばあちゃんになって、死んじゃって、俺は泣きながら一回は神殿に戻ったけど…。


この世界が俺のご褒美の為の世界だってこと、思い知ったよ。


だって、リリーたん、死んでもすぐに生まれ変わってくれるんだよ!


この世界における神様の位置付けの俺には、リリーたんが生まれ変わったら、すぐに見つけ出せる。



数えきれないほどの異世界を救ったご褒美の世界で、俺は本当に幸せになった。


神様、ちゃんと嘘はつかないで、約束守ったんだな!


おわり


最後までお読みいただきありがとうございます。

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