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「怪我したの?」


「大丈夫、治したわ」


そう言って立ち上がるが、いまだにディルは心配そうな顔で見てきた。


「ディル様ひどいですわ〜」


突き落とされた女性がゆっくりと立ち上がる。


「っ」


私は彼女の目に涙が溜まっていることに気づいた。


「あの、大丈夫ですか-」


「ディル様〜、お詫びとして今日はディナーに付き合ってくださらない?」


私の言葉を遮り、涙目で彼に訴えに行く。


「ごめんね、今...君アーシェのこと無視したよね?」


その声はひどく冷たかった。自分の背筋が凍る。


「え...ディル、様?」


女性も予想していなかったのかプルプル震えており、今にでも崩れ落ちそうだった。怯えている彼女は何故かディルから目を逸せないまま恐怖に涙が出る。


「よくないなぁ」


ガシッと女性の胸元の服を掴むとそのまま女性を持ち上げた。


「うっ...ディ...ル様」


苦しそうに顔を歪めている女性を見てすぐに私の手が出る。


「ディル!やめて!」


パッと反射的にディルの手が離され、女性は床に落とされ、激しく咳き込む。周りに女性の友達冒険者が集まり水を飲ますなどして彼女を落ち着けていた。


「どうして止めたの?」


女性を冷たく見つめていた瞳は私を捉えた瞬間優しくなる。


別人だと思うほどに。


「よくない、から。そんなしょうもない理由で人を傷つけるなんてだめだわ」


「...優しいね」


少し間があった後、完璧な笑顔を私に向ける。すると、先ほどの女性が私に向かって怒鳴る。


「なんで!?どうしてよ。私の方があんなやつより何十倍も綺麗だし強いのに?!あんな新人冒険者のどこがいいの!!」


怒鳴りすぎたせいか、息が切れている。


「ねぇ、足りなかった?」


私に向けている笑顔を一瞬で消し彼女をまた睨む。


「っ!」


「今は何もしないよ。隣にアーシェがいるから。命拾いしたね、君も。次アーシェのことを悪く言ったら...何が起きるかわかってるよね?後ついでに、アーシェは新人冒険者かもしれないけどランクは君よりよっぽど高いよ」


「そんなわけ-」


冷めた目のまま先ほど私から取った冒険者カードを掲げて見せる。女性は素早い速度で血相を変える。


「「Sランク!」」


周りにいた女性の冒険者の仲間も驚愕に目を見開いた。彼女たちが放った言葉はギルド中に広がり人が集まってくる。


「初日でSランクなんて初めて見たぜ...すげぇ」


「こんなちっこいのが...おいおい嬢ちゃ-」


冒険者の一人が私に手を伸ばす。


「触らないで」


そう発言したのは私じゃない。冒険者の腕を掴んで止めているディルだった。


「アーシェ」


「は、はい...じゃなくて...な、何?」


「行くよ」


カードを彼の胸ポケットに入れると彼は私の手を引いてギルドから出た。


「急にどうしたのよ...」


「...別に」


絶対何かあるとわかっているが彼が言いたくなければそれでいい。それよりもギルドにはなんにせよ戻らなければいけない。


....私にはお金がないのだから。せめて今日の宿代は欲しい。食事代もあと奢ってくれた焼き鳥のお金を返さなければ。


「ディル、じゃああなたは先に行ってて。私ギルドに戻って依頼を受けてくるわ」


「え、依頼?」


「そうよ。お金が必要だもの」


そう言って彼の握りから手を解くとギルドへ戻る。


「ちょっと待って、僕も行く」


「...」


結局彼はギルドから離れたいのか離れたくないのか。


私はギルドの依頼ボードの前に立った。何故か私の周りだけ人が少ない。というか皆私を避けているような気がする。まあ、そんなことよりもお金が必要な訳で、気にしないでいい依頼を探す。


「殺すことは無理だから...だからと言って薬草採取はもらえるお金が少なすぎるわね...」


「...アーシェ」


「何かしら?」


「...殺せなかったらこれからお金なんて稼げないよ」


ぐさりと刃物が心に刺さった。


知っている。そんなことは知っている。だが怖いものは怖いのだ。どうしようもできない。


「やっぱりどこかのパン屋でアルバイトした方がいいのかな」


「そんなことない。これはどう?僕が教えてあげるからさ。冒険者になる方法」


「本当に?!」


「うん、一回金貨一枚で」


その言葉にむせそうになる。


「...え?」


「後払いで大丈夫だよ」


「................」


彼はずっと笑顔のまま私の返答を待っている。


「......よ、よろしくお願いするわ」


笑顔がさらに満面の笑顔になりギュッと私の手を握った。


「これから毎日できるようになるまで一緒にいようね?」


「毎日?!」


「うん」


「は、はい...」


何故かハメられた気がした。


「金貨をたくさん集めるにはどうしたら...」


頭の中で必死にそんなことを考えていると、隣で目を細くして何かを企んでいるように微笑んでいる彼に気づかなかった。

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