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受付人は結果の報告をしに急いで試験場を出た。休憩がてらに私たちを見ていた冒険者たちは驚いた顔を隠せていない。
「...これが、ディル様の力。あの竜巻の中で生き残れるとは。俺、Sランク目指すの諦めたわ」
「だな。俺もBランクで十分な気がした」
「だからSランクってこの世界に数人しかいないのか...理由がはっきりしたよ」
全員肩をガックリ落としている。彼らの会話が聞こえてしまった。
「ディル、Sランクって世界に数人しかいないの?」
「知らなかった?」
私が知らなかったことに少し驚いている彼から、多分これは常識なのだろう。あの屋敷にいて常識が分からなくなってしまった。少々勉強が必要になりそう。
「知らなかった」
私とディルは試験場から離れる。その間、休憩用のベンチで座っていた冒険者たちから見られていたことに気づいたが、無視した。
「「あの女なんなんだよ...」」
ーー
「は〜い、これがSランク冒険者用のカードです!」
プラチナのそのカードはまさにSランク用と名乗るに相応しかった。そんなキラキラしているカードを見つめていると、ディルに列ができちゃうと言われすぐに離れる。テーブルを一つ見つけるとそこでまたカードを見つめる。
「そんなに興味があるの?」
「ま、まあ。初めてのSランクカードだし」
そうだね、と笑いながらディルは返す。
「でも...」
私のカードを取り、私の注目を彼に移らせる。
「どっちかと言ったら僕を見てくれたら嬉しいな」
グイッと顔が近づいて来てまさに鼻と鼻の先に彼がいた。その黄色く輝く目に全てが吸い込まれるような気がする。
どう反応すればいいか分からず、彼の目を混乱で見つめていると急にグイッと後ろ引っ張られた。誰かと見ると、そこには憎たらしいような表情を浮かべた妖艶な女性が立っていた。私を鋭く睨んだ後、私の肩を押して椅子から突き落とす。
「ディル様〜」
小尾にハートでもつくような高音な声でディルに話しかける。彼女の特徴である大きな胸を強調しながらディルに近づいた。そして胸を腕に当てるように彼の腕を掴む。
「...」
彼は反応してない。
もしかして、あの子がタイプなのか。なら応援をしなければいけない。人の恋を邪魔するような人は好かれないと恋愛小説に書いてあった。床からゆっくりと立ち上がると足に痛みが走る。
「...『ヒール』」
多分痛んだそこをせっかく使えるようになった魔法で治すとディルがそれに気づいたのか血相を変えてその女性を突き飛ばした。