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さっそく彼は私をギルドへと引き連れた。ギルドの中に入ると、視線をたくさん感じた。まるでみんなが私たちのことを見ているかのように。
「ねえ、視線を感じるのって私だけ?」
「皆見てるからね」
「なんで...」
自分が新人だから?それだとしてもこんなにジロジロ見られる必要はない。じゃあ、どうして。
疑問に思っていると、冒険者二人の会話が偶然耳に入ってきた。
「ディル様だぞ。あのSランクの...」
「あぁ、隣の子も可愛いな...ディル様の恋人か?」
ボフッと顔が真っ赤になる。
「大丈夫?」
振り返ったディルは、赤い私を見て手を私の額に当てた。
「熱ってわけじゃなさそうだね」
「だ、大丈夫よ!それよりも今から何するの?」
「アーシェのギルド登録をしようと思って」
「手伝ってくれるの?」
コクリと彼は頷く。
また手を引かれ受付に並ぶ。私たちの番になり、登録用の紙をもらい、名前などなどを記入して受付に手渡した。
「あとは、そうですね」
受付人はチラリと私の方を心配そうに見つめる。どうしたのかと首を傾げると受付人は続けた。
「試験が残ってるのですが...戦えますか?」
「あ、剣術とかは...できません」
「魔法使いですか」
「いや、その魔法もそんなうまいわけではなくて」
私の苦笑いに受付人も苦笑いを返す。
「アーシェならいけるよ。自分を信じて」
ポンとディルの手が肩に置かれ、自然と安心してしまう。ふと、自分はできるのではないかと考えてしまったがすぐにそのような甘い考えを捨てた。
「そんな簡単に信じてたら昔後悔しなかった」
屋敷で虐げられていたころ、自分を信じればいいとポジティブに考えたことは何度もある。自分を信じて反論しろ、なんて思ったことは十回以上ある。その中の一つも成功しなかった。成功しなかっただけならまだしも、さらに虐められてはもうやる気もなくなる。
ディルも私の過去が辛かったことが分かったのか、それから口を開かなかった...と思った。
「それは昔。昔を引きずっててもいいことないよ。何事もやらないとわからない」
「そんな考えでひどい目にどれほどあったか」
多分今回もそうなんだ。
「じゃあさ」
ディルは続ける。
「今回だけ自分を信じて、成功したらそれでいい。失敗したらもう何も言わないよ」
「...今回だけね」
その条件なら飲み込めると納得する。
私は受付人に連れていかれた。どのギルドにも必ず試験場と訓練場があり、今回は試験をするのでその名の通り試験場へ向かう。試験場内には試験を受けている冒険者が複数いた。皆必死だった。受付人はこの試験で自分がどのランクに属するのかが決まると説明していた。だから皆出来るだけランクを高くしたくて必死なのだ。
「アーシェさんは..........っ!」
受付人は一枚の紙を取り出すと、驚いたように目を見開いた。口をパクパクさせ、周りから救いを求めるようにキョロキョロ見渡している。
一体何が書かれているのだろうか。そんなにも驚くことなのか。
「ディ、ディル様との試験を受けてもらいます...」
「.......え?」
ディルって...あのSランクのさっきまで一緒に行動していた凄腕冒険者のディル?
いやいや、同じ名前の他の冒険者でしょ。
と、混乱で自問自答していると、私の知っているディルが試験場に入った。
「アーシェ。よろしく」