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「じゃあ、その前に努力賞として『エンド』が何か教えてあげる」
「え、でもそれは私が勝った時に教えてもらえるものじゃ...」
「いいんだよ」
にこりと、普段通りの微笑みを浮かべてくる。
「......」
会場から出て、私たちは宿へと向かった。その前にレイが急用があるとのことでどこかに飛んでいってしまったので今はディルと二人っきりだ。宿に向かう途中、美味しそうなレストランがあり、思わず見つめているとディルと一緒に入ることになった。
「何が食べたい?」
メニューには美味しそうなシチューやらパスタやらが載っており、正直全て食べたい。そんなことをしたら食べきれないので食べたいものを絞った。
「鶏肉のステーキで...」
「わかった」
ディルは店員を呼ぶと、彼が選んだミートソースパスタと、私の鶏肉のステーキを店員に伝えた。
「ふぅ...」
店員が去ったことを見届けると、ディルは私に向き合う。
「『エンド』、だったっかな?」
そして彼はエンドのことを話し始めた。
『エンド』とは、創造神に選ばれた人間、ということらしい。その名前がついた理由は、世界を破壊することも容易いからだという。なぜ、『エンド』のような存在が必要になるのかというと、『エンド』は歩く空気浄化機みたいなものらしい。『エンド』がいることによって元が黒く澱んでいた世界が、浄化されると言われた。だから、創造神は神をも殺せる『エンド』の存在を許したのだ。神は地上には非常時以外干渉できないとされているから。
そしてもう一つ、『エンド』は二人いる。二人の『エンド』は互いに惹かれ合うのだという。だが、私の場合は神様が少しミスをしてしまい、自分が『エンド』だという記憶を忘れ、才能を持っていることを忘れ、あのような扱いを受けてしまったのだと。
「神様の、ミス...か」
もしもミスをしていなければ、私は虐められなかったのか。思わず窓の外の青い空を見上げる。あの上に神様がいるのかもしれない。私たちを今も見つめているのだろうか。
「なんか、しっくりくる」
否定とか、認めないとか、そんな意見は感じない。それどころか、なぜか「そうだった」と懐かしさすら感じてしまうほどに。きっと彼の話たことは全て本当なのだろう。
だが、私たちが惹かれ合う?それは多分何かの間違いだ。
「ディル、全部分かった。ありがとう、教えてくれて。そしてあなたの話からあなたは私に...その、惹かれているって考えてもいいの?」
「うん、その通りだよ。僕は行動でもたくさん表したと思うんだけどなぁ」
「それは...」
私は咳払いを一度した。
「とにかく、あなたの告白は受け取れないの。ごめんなさい。私はこれから一人で旅に出ようかなって思ってて。パーティーを作ったばかりだけど、ごめん。これは決定なの」
「君自身の?」
「私自身の」
ディルは悲しく笑った。今はもう閉じている傷が頬をあげたことにより、上がっている。それを見つめるのが嫌で目をそらした。
「そっか」
ディルはそれを言うと、黙った。
私は窓の外を空を見つめている。先程のディルの笑顔が、頭から離れない。あの悲しような笑顔に心が握り苦しめられているような感覚が生まれた。こうなることは知っていたが、いざ言ってみるとダメージは想像していたよりも大きい。私は深呼吸を一度だけした。外には楽しそうに、平和そうに笑っている王都の人々が行ったり来たりしている。
「それは、しょうがないね」
長い時間の後、ディルはさらに口を開けてそう述べた。私は彼の方を向くと、背筋に寒気を感じた。一瞬、彼の目が暗かった。死んでいた、とまではいかない、だが、正常でもなかった。
ただの見間違えだ。そう、そうでありたい。
これ以上そのことを考えまいと、頭の中で違うことを回転させている。すると、食事がちょうどよく運ばれてきた。
パスタとステーキの匂いが鼻の中に広がり、幸せな気持ちが黒い気持ちの上に被さる。
「美味しそう!!」
早速ナイフとフォークを手にとり、ステーキを食べた。途中で手を止め、お手洗いを使いに行く。
そこから戻ると、ディルがすでにパスタを全て食べ終わっていた。
「早いね」
「そう?」
私も彼を待たせんと急いでステーキを口にした。




