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私は少し彼から逃げるように依頼ボードの前へ向かう。だが、彼はすぐに私に追いついた。
「アーシェにはこんな依頼とかいいんじゃない?」
そう言い、上の方にある紙を楽々と取り見せてくる。
「ブ、ブラックドラゴンの討伐...?」
私がさっき討伐したドラゴンは白かった。肌の色でドラゴンがどれほど強いかわかるらしいが私にはその順番が分からない。
「アーシェならいけるよ」
半分押されるように受付人に依頼をこなすと伝えに行く。伝えて記録してもらうことで他の人とかぶることがなくなるらしい、ディルの情報によると。ふと、そのブラックドラゴンを倒す依頼の紙の報酬金が見える。
「き、金貨10枚!」
これは、やらなければ。
ゴクリと息を飲む。
「場所はドーリュ森だね。あそこなら行ったことがあるから」
ディルは私を引き連れてギルドから出た。路地裏まで連れていくと地面に青白い魔法陣が生まれ、気づいた頃には目の前に森があった。転移魔法か。
「きっとあれだね」
その先には巨大な漆黒のドラゴンが暴れていた。
『グルゥアアァ!』
周りの木々を投げ倒しながら暴れまわっている。
「あれを...倒せと?」
ディルを見てそう呟くと、今までと同じ笑みを返してきた。
金貨10枚かかっているんだ、しょうがない。まだ借金が残ってる。
慎重にゆっくりと気配を消してドラゴンに近づく。まだそれは私に気付いてなく、暴れまわっていた。ドラゴンの尻尾が迫ってきて、それを瞬時的に手で掴む。
『グル?!』
流石に気付いたのか、こちらに殺気を向けてきていた。殺気を向けて満足しているドラゴンだが、私がびくともしないことを知り、怒りを現せた。
大きな爪で私に襲いかかるも、私は爪を手で掴んで止める。
「あれ、思ったより強くないわ」
どちらかというと白より弱い気がする。
「そうだよね、アーシェならいけるよ」
「う、うん!」
爪を避けながら剣を鞘から取り出す。ドラゴンの背中に乗ると上から思いっきり背中を剣で刺した。衝撃波が周りの木を吹き飛ばし、地面にクレーターを作る。ドラゴンの肉体を貫き、ドラゴンの胴体に私よりも大きな穴ができた。
死んだことを確認したあと、体の中にある核を探す。かろうじて衝撃波に巻き込まれていなかった。その真珠のような核を取り出すとディルが隣に立っていてずっと私の作業を見ていたことに気づく。
「血だらけのアーシェもかわいいね?」
ぞくりと背筋に寒気が走った。
「わ、私ってそんなに血だらけだったかしら?」
核をディルから教わったアイテムボックスに収納するとギルドへ戻る転移魔法を一人で発動し、一人で戻った...はずだったのにいつの間にか魔法陣にディルが入っていたのだ。
「ディルってずっと私にくっついてるわよね?」
「借金があるからね」
なんとも言えない。なんとも言えないことが悔しい。