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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第3章「カナナ」
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第79-2話

いつもありがとうございます!

「あれは…」

「緑山さん?」


そろそろ計画に取り掛かろうと思った頃、そこに見えたのは


「みもりちゃんのバカ…全部みもりちゃんが悪いのに…」


何故か思いっきり腹を立たせていゆりの姿であった。


だがうみ達が話を掛ける前にも


「なんですか、一体…あんな偉そうな顔で良くも私にあんな口を…」


ゆりは彼女達のことを無視してそこを通り過ぎるだけであった。


明らかに何かあったような顔。

それもあの大好きなみもりに関わることというのを一瞬で察知したうみは


「もしかして黒木さんのことなのかな…」


先程自分からみもりに言い伝えたことをもう一度振り返るようになった。


***


「へえー黒木さんってあの二人のことが大好きなんだー」

「は…はい…でもお姉ちゃんには内緒にしてください…」


先日行われた「部活実績会議」。

そこでゆりとみもりのことをずっと気にしていたクリスのことに気がついたうみは彼女があの二人の古いファンだということを知るようになった。


「なんで?黒木さん、あの二人と仲良くなりたくないの?」


少し理解ができない行動に疑問を表すうみ。

だがそこには彼女なりの理由というものが存在していた。


「だって「フェアリーズ」は私にとって「好き」って言葉で言い切れないほど尊い存在ですから…だからアイドルとして認められるまではあまり言わないようにしているっていうか…もちろん仲良くなりたいって思ってるんですけど…」

「黒木さんなりの哲学があるんだね。」


あまりにも尊くて口にするのもおこがましく感じてしまう圧倒的な存在感。

数多いローカルアイドルの中で特に目立つ活躍もなかった「フェアリーズ」だが彼女達の真剣さはその魔界のお姫様の心に大きな印象を焼け付けていた。


「でもせっかく同じ学校になったから仲良くなった方がいいと思うよ?虹森さんも、緑山さんもとてもいい子なんだしきっと黒木さんのこと、すごく喜んでくれるよ。」

「そ…そうでしょうか…」


そんな彼女のことが気になったのか自分から一肌脱いであげることにしたうみ。

元々の性格のこともあるが彼女は好きという気持ちは誰にも止められないとことを誰よりも知っていたのでクリスの気持ちを応援せざるを得なかった。


「私が手伝ってあげるから一緒に頑張ってみない?緑山さんの方はちょっとハードル高いかも知れないけど虹森さんなら楽勝楽勝~結構ちょろい人だから全然イケるよ~土下座で頼んだらパンツも見せてくれそうだしー」

「ちょ…ちょろいんですね…虹森さん…」


実際ゆりは結構みもりの前で頭をねじ伏せて


「お願いです…!みもりちゃん…!パンツ見せてください…!一生のお願いです…!」

「ええ…!?なんでまた…!?わ…分かったから教室で土下座するのは止めて…!って一生のお願いちっさっ…!」


下着を見せてもらった。


「まあ、実際緑山さんは結構やっているらしいし…あの人、上級生や他の人には全く頭下げないのに虹森さんの前ではめっちゃ弱くなるから。

まず虹森さんとまず虹森さんと仲良くなれば後はなんとかなると思うかな、私は。」

「なるほど…でも私…虹森さんと何の繋がりもありませんしいきなり押しかけて自己紹介とか絶対無理ですよ…」


なんとしても彼女にみもり達と仲良くなってもらいたかったうみ。

だがあまり自分のことを人に表すのが得意ではないクリスにはそのことさえとてつもないハードルで感じられていた。


その鬱な顔に


「もー仕方ないな。私が手伝ってあげるから元気出してよ。」


うみはもう少し彼女のために踏ん張ってみることを約束した。


「見習い巫女」という立場を利用してほんの少しだけいじっておいたセミナーの各生徒達の担当箇所。

ななやゆりのような生徒会の関係者においては全くの権限外だったがみもりやクリスのような一般生徒なら少しいじったところで大した問題はない。

そう思って夜遅く神社に忍び込んで巫女ルビのパソコンを操作したうみだが


「何してるんですか。青葉さん。」


残念ながら彼女は現行犯としてその場で捕まえられてしまった。


「あー…ちょっと手伝ってあげたい後輩ちゃん達の担当箇所、ちょっと変えようかと思って…」


到底あの「天才歌劇少女」とは思われないほどのぎこちなさ。

だがあの「オーバーロード」の前では生半可な芝居や言い訳は通じないということをよく知っていたうみはここはただ素直に話した方がいいと判断して自分の行動をありのまま説明した。


「黒木さん、虹森さんと仲良くなりたいって言ってたから先輩としてちょっと応援したくて…」


呆れるほど純粋な気持ち。

巫女ルビはそんな彼女に一度だけため息をついた後、こう話した。


「そういうことなら私にちゃんと話してください。これ、他所から見ると完全にアウトですよ?職権乱用間違いないですし。」

「す…すみません…」

「まったく…あなたという人は…」


まるで小さな妹に叱るような口調。

だが自分にとって実際うみはほぼ妹のような存在だと彼女はそう思っていた。


今はだいぶ劣化してぼやけている妹「黄玉(トパーズ)」の記憶。

母たる存在である「オーバーロード」は娘達に彼女に関わる情報の閲覧を禁止し、接続を完全封鎖した。


娘達が彼女に影響を受けないように、そして二度とそのようなことを繰り返さないように大切な娘を皆の記憶から消してしまった「オーバーロード」。

だが初期に作られた「モデル・リボン」だけは例外として彼女に関する記憶の一部を保存していた。


優しくて正義の心が強かった「黄玉(トパーズ)」。

だが彼女は姉妹達の中でも最も多くの人達を自分の手で殺した。

兵器として生まれた呪われた運命に抗えずただ仕込まれた最優先プログラムに従ってその役目を全うしたトパーズ。

褐色の肌と明るい金髪がお似合いだった末っ子の妹はその元気な笑顔がとても可愛かったが自分には望まなかった戦場に身を投げられてから彼女はたった一度も笑わないようになってしまった。


そして褪せたフィルムの中からぼやいている妹の残像をいつの間にか目の前にいる見習い巫女の人魚の少女から重ね見た自分のことに巫女はただ戸惑っていた。

だが決して彼女のことが嫌いというわけではない。

自分の視線ではうみもまた自分の望まない戦場に身を投じた哀れな一人の少女に過ぎなかった。


「分かりました。そういうことなら私がやっておきますからあなたは寮にお戻りください。」

「巫女様…」

「その代わり他言無用でお願いします。それとあなたには前にも話した今年のプロモーション撮影会の件を引き受けていただきます。」

「そこですぐ条件とか付けちゃうんですか…まあ、分かりました…」


ちゃっかりと「神社」のためにうみの協力をもぎ取ってくる巫女ルビ。

どうやら彼女は自分達が引退した後、「神社」の次世代千両役者として彼女を引き立てるようだ。


「あなたがいれば絶対「神社」の方が勝ちます。シスターの「教会」なんかに負けてられません。絶対シスター、いや、お姉様にギャフンと言わせてあげますから。」

「なんか目が怖いんですよ…?巫女様…」


戦意を燃やす巫女ルビ。

お互いのプライドを掛けた姉妹達の争いはもう始まったばかりであった。

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