第77話
最近何回の話を何人様が見られたか分かる機能があることを分かりました。
1話から最新話まで読んでくださった方々がいらっしゃることを知った時は本当に嬉しかったです。
やっぱり勉強と仕事、投稿を毎日まとめてやるのは結構厳しいですね。でもおかげさまで楽しく書いています。
いつもありがとうございます!
「な…なんというか…私が現場に現れたら緑山さん、すっごく睨みつけて警戒してましたから…何か目で「また現れましたね…あの泥棒猫…」って言いつけているような…そのせいでちょっと苦手になっちゃってというか…」
っとすごく言いにくそうな顔でゆりちゃんに対する正直な感想を話すクリスちゃん。
その上その状態は今も続いているらしいです。
「みもりちゃんに会うには今日が初めてなんですが緑山さんなら部活のこととかで何度も会ったことがあります…でも目もくれなかったし未だに嫌煙されてるんじゃないかと…」
「そうだったんだ…」
クリスちゃん、めっちゃ落ち込んでる…
多分今もクリスちゃんは自分のどこが悪かったんだろうと悔やんでいると私にはそう見えました。
ゆりちゃんと付き合ってきたのも今年でもう12年以上になりました。
だから私はゆりちゃんの心理が丸出しに見えるほどよく知り尽くしているつもりです。
でもまさかこの魔界の姫様のことまで敵視していたとは思いもしませんでした。
ゆりちゃんが私のことで他人に敵意を向けることなんて今に始まったことではありません。
男の子はもちろん同じ女の子にまで少しでも私に好意を表す人がいたら全力で全ての接近を遮断する。
そして私がどこへ行っても必ずついてくる。
「みもりちゃんは私だけを見てください。他の人なんて目もくれなくても結構です。」
っといつも私に対して凄まじい執着心を表したゆりちゃん。
でも自分なりの基準があって少し大きくなってからはそこまで私に執着しないようになったはずだと私はずっとそう思っていました。
たまに怖くなる時はあります。
例えば夜中にふと目が覚めた時、その上から私のことを見下ろしている時とか私が使ったお湯を飲んでいることとか体育授業の後、汗でじめじめになった私の靴下をしゃぶっていることとか見ている間、ゾクッとしたことなんて確かに存在します。
でもそれも含めて全部私が好きな上でやったことなだけでゆりちゃんなりの愛情表現でもすからゆりちゃんに慕われている私はちゃんとそれを受け止めて理解してあげなきゃって思って…
…ってなんかクリスちゃん、めっちゃ引いたような顔してるな…
「あ…いいえ…みもりちゃんって変なところで慈悲深いなって思って…」
私…今のクリスちゃんの言葉ににふと自分がそろそろそういうことに無感覚になっているのではないかと心配になってきました…
まあ、とにかくそういうゆりちゃんの気持ちをしっかり受け止めてあげるのが私の役目だと私はそう思います。
だってゆりちゃんは自分の人生の殆どを私のために使っていると言っても過言ではありませんから。
去年だってあの家から私を助けるために一人でどれだけ苦労をしたのか…
それにゆりちゃんは自分にいらないと思ったらそれがどんなものであろうとも未練も持たずあっさりと捨てたれる性格の子ですから。
惜しいってことなんて一秒たりとも感じず一思いで振り向いてしまう決断が強くて情けのない子。
お父さんにそっくりなその性格のことを知っているからこそ持てる確信。
そんなゆりちゃんが一度も諦めることなく変わらず私のことを大切にしているってことが私は本当に嬉しいです。
だから少し重すぎる愛情表現でも私はいくらでも受け止めてそれに応えてあげるつもりです。
でも私はまたゆりちゃんには私以外の友達を作って欲しいという気持ちもあります。
ゆりちゃん、表には愛想よく振る舞っていても実際に自分の心を譲ったりすることなんてめったにありませんから。
先輩達に対してはそうじゃないと思うんですがまさか昔のファンであるクリスちゃんにあんな態度を取っていたとは…
私…少しゆりちゃんのことを甘く見てたようですね…
ゆりちゃんならてっきり喜んでくれると思ったのにクリスちゃんのことをそう思っていたなんて…
私…地味にショックなんですよ…
っと落ち込んでいる私に会えて平気そうに振る舞って
「ま…まあ…!でもそれだけみもりちゃんのことが大事ってことですから私はあまり気にしてません…!あんまりそんな風には思わないでください…!」
決してゆりちゃんのことを貶したり恨むことなくむしろゆりちゃんのフォローしてくれる優しいクリスちゃん。
クリスちゃんはゆりちゃんから受けた不愉快な気持ちさえ上回るほど「フェアリーズ」の私達のことを大切にしていました。
「結局緑山さんから見れば私なんてたったのファンの一人に過ぎませんから。それに私には緑山さんからみもりちゃんのことを横取りしようとする泥棒猫って思われても言い返せない理由もありますし。」
「言い返せない理由…?」
っと聞く私にただひたすら切なくてどことなく寂しそうな笑みを向けるクリスちゃんはそれについて今はまだと最後までは話してくれましたが私はその悲しそうな笑顔はとても心苦しく感じられてしまったのです。
「でも私はやっぱりゆりちゃんにはクリスちゃんとも仲良くして欲しいかな…せっかくのファンだしもうちょっと優しくあげてもいいと思って…」
「みもりちゃんがそう思ってくれるだけでも私は十分嬉しいですから。でもできればいつか緑山さんともお友達になりたいですね。」
っと寂しそうに笑っているクリスちゃんのことを見てその時の私はゆりちゃんとクリスちゃんのことを結びつけてあげたいと本気で思うようになってしまったのです。
「ダメだよ…!できればじゃなくてできるんだ…!私達だって赤城さんとかな先輩のこと、仲良くさせようとしているんだもん…!」
「え…?ななお姉ちゃんのこと…ですか?」
「しまっ…!」
勢いで思わず今回の計画をクリスちゃんに暴いてしまう私。
でも吐いた唾は飲めないという言葉の通り私の今の話をしっかりと聞き取ったクリスちゃんは既にびっくりした顔で私達の計画に驚いていました。
「みもりちゃん…本当にななお姉ちゃんのことを…?」
そしてもう一度今の言葉のことについて聞いてくるクリスちゃん。
もしこのままこの話が赤城さんのところに流れてしまったらせっかくの仲直り大作戦が全部台無しになってしまう。
そうなったら協力してくれたゆりちゃんと青葉さん、何よりかな先輩と赤城さんの本人達に合わせる顔がないと思った私は
「お…お願い…!クリスちゃん…!今のは忘れて欲しい…!」
慌てて今の失言のことを聞き逃して欲しいとお願いしましたが
「その話…もっと詳しく話してくれませんか…?」
何故かクリスちゃんはとても真剣そうな顔でこの話のことを自分にも教えて欲しいと私にそう言いました。
***
「「Scum」の黒木さんって赤城さんと仲良しなんだよね?」
「なんですの?急に…」
巫女ルビの補佐役として今回のセミナー準備の指示をすることになったうみとなな。
彼女達はまず一度社務所へ戻った巫女の代わりに自分達でそこな辺の巡視をすることにしていた。
「そこ、段差あるから気をつけてね。」
「少々斜めになってますわ。まっすぐになるようにもう一度確認してくださいませ。」
それぞれの持場で任された仕事のために懸命に励んでいる生徒達。
その生徒達の働きがちゃんと発揮できるように側で指示してあげるのが見習い巫女であるうみと生徒会副会長のななの仕事であったが
「何?偉そうに。」
「すっかり上から目線ね。こき使いやがって。」
残念ながら二人はあまり生徒達で思わしくは思われない存在であった。
魔界の全幅の支持を受けているうみはその分神界からの反感を買い、全部活の統廃合を目論んでいるななは同じ魔界の生徒達の間でもあまり良い評価が得られなかった。
当然一部の生徒を除いた多数の生徒達は彼女達の指示に従順には従わず、他の上級生からの指示に従うだけであった。
「まあ、こうなるよね。」
「わたくしの立場から考えたら当然な反応ですわ。」
自分達の指示をすっかり無視して各自に仕事に専念する生徒達を見て少し苦そうな笑みで現状を飲み込めようとする二人。
平然そうにしているがこの舌の上に残ったモヤッとした味のような気持ちだけは仕方がなかった。
「結局これもまたわたくしが、あなたが己の道を貫いた結果ですから文句は言えません。まあ、あなたほどの人でしたらわざわざわたくしから言われるまでもありませんが。」
「まあねえ。」
淡々と現状を受け入れるうみ。
睨まられて憎まられるのはもう慣れている自分にとってこのくらいのことはなんてことでもない。
崇高な目的のため、そして自分一人だけのワガママのためこの道を選んだ自分にもう後悔する道なんて残されていないということは彼女自身が一番知っていた。
だが決して振り向かない。
振り向くところか立ちはだかるものは全てねじ伏せてみせる。
それがこの道を歩む時に自分自身に誓ったたった1つの約束であった。
全てはたった一人の少女のため。
ただ彼女のために自分は自ら修羅の道を歩みことにした。
そして自分と同じくたった一人の好きな子のことを胸を焦がすほど思いながら彼女に学校一番のアイドルになった自分を見せるために自分を学校の敵に回したななのことに自分は相身互いの感情まで抱えてしまい、彼女のことを救ってあげようとした。
今後の自分にはどうしてもできない愛する人との再出発。
うみはななに自分の夢を託し、その代償行為として自分だけの勝手な満足感を得ようとしていた。
それがまた自分のことをどうしようもなく恥ずかしく感じさせてしまったがそうそうでもしないと自分の心が壊れてしまう、そんな気がした。
それは別としてななにはどうしてうみから急にクリスのことを話題にするのかそれがまた理解できなかった。
「クリスとは幼馴染ですわ。親が友人だったゆえわたくし達も自然に。ちょうど先の虹森さんと緑山さんのような。まあ、さすがにあの二人のような関係ではない普通な姉妹みたいな感じですが。」
「なんかあの二人とは一緒にされたくないと思っている感じね…赤城さん…」
さり気なくみもりとゆりのような幼馴染ではないと必死でアピールするななを見てなんとなく分かると共感するうみ。
彼女から見てもあの二人の関係は幼馴染と言えるには多少異常だったようだ。
「当然ですわ。わたくし達は清らかで健全な義理の姉妹な関係ですから。」
「それ、緑山さんが聞いたら絶対こう言うよ?「うふふっ♥私はただ純粋な気持ちでみもりちゃんに私の愛を伝えるだけですから♥」とか。」
「なんかすごく似ていて逆に怖いですわね…今のって…」
恐ろしいほど似ているゆりの声真似。
声だけではなく微妙な仕草や表情まで完璧にコピーしたうみの演技に改めて「青葉海」という少女の才能に気づいてしまうななであった。
「普通、そこまではやらないんだよね…?幼馴染っていうのは…」
「まあ…」
そして二人はゆりがみもりを見ながら思っている「幼馴染」という単語の意味を振り返るようになってしまった。
「クリスはとてもいい子なのですわ。年はわたくしより下ですが器の大きさはわたくしには比べないほど大きい。その上、魔界の王「ファラオ」としての資格も、人徳もちゃんと備えていてきっと将来慈悲深くて強い我らの王になってくれるでしょう。あまり自分の話をしたり自己主張が少々足りないところは少し不安ですが。」
信頼に満ちた目。
ななは心の底から彼女のことを誇らしく思っていた。
そしてそのことをななと同じくよく知っていたうみは
「うん。私もそう思う。」
彼女にみもりのことを近づかさせたのが正解だったと思った。




