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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第3章「カナナ」
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第75話

いつもありがとうございます!

「青葉さん。」

「はい。何でしょう。」


急にうみを呼び止める巫女ルビ。

普段あまり表情を出さない彼女であるが今日に限って彼女の顔には影がかかっていた。


「去年私はあなたの意見を受け入れて副会長と中黄さんの和解計画に協力しました。その時は正しい判断でしたし「オーバーロード」、「お母様」もそう判断しましたから決して間違った選択だったとは思いません。」


全アンドロイドのネットワークを構成し、統括している「完全自律型管理システム」、通称「オーバーロード」。

現在世界政府の管理下で運用されているアンドロイドには精神的な面を担当する「ブラックボックス」が内蔵されていてこれはアンドロイドの機能において非常に重要なところを占めしている。

そして「オーバーロード」はその「ブラックボックス」を通して情報を獲得、判断して命令を下す。


「ブラックボックス」は外部から決して操作ができないように非常に複雑な構造になっていて無理矢理に取り出そうとしたらその場で爆発する仕組みとなっている。

何より彼女達は自分達の精神を担当する「オーバーロード」を「お母様」と呼ぶほど敬畏していて彼女を守るため非常時彼女との繋がりを抹消することを最優先事項として心得ていた。


その中でも「完全沈黙兵器Ribbon」は他のアンドロイドとは違ってある程度の自律的な判断ができる高度モデルであった。

だが最終的に全てを決定するのは彼女達の親分である総括ネットワーク「オーバーロード」であり、彼女達は「オーバーロード」の命令には逆らえず自動的に従わせられるようになっていた。


唯一「オーバーロード」の支配の元から離れているアンドロイドは巫女ルビの妹である「神官」「黄玉(トパーズ)」と「完全破壊兵器」「デストロイヤー」だけだが黄玉は何十年も行方不明であり「デストロイヤー」はその危険極まりない性能のせいで完全分解されとっくに昔に廃棄処分となっていた。

何より「デストロイヤー」が処分された一番の理由は「オーバーロード」の制御が全く利かなかったということだったこと。

それほどアンドロイドにとって「オーバーロード」の重要性は疑いの余地もなく極めて高かった。


「彼女に協力してください。」

っと上からの命令を受けた時、全く納得できなかったわけではない。

「オーバーロード」は自分達の存続と世界との均衡を天秤にかけて「大家」ではなく「神樹様」を選んでお互いの共存を図った。


共存のために様々な可能性を模索しなければならない「オーバーロード」。

そしてななとかなの件について彼女は自分達からも協力する価値があると判断し、娘たる存在であるルビにそれの協力を命じた。


だが本当のところ、彼女はあまりその命令に関しては気が進まなかった。


去年「オーバーロード」はうみからの提案を正しい案件だと判断し、ルビにそれに協力するように命令を下した。

だが秘密裏に進められた計画だったため二人は圧倒的な時間不足に悩まされ結局実行までは間に合わなかった。

彼女はそのことを今もずっと気にしていた。


「先あなたから今年も例の計画を進めたいと言われた時、私とシスターは「オーバーロード」に拒否の意見を提出しました。副会長はもう限界です。そんな彼女と中黄さんを仲直りさせても余計に彼女を苦しませるだけです。」

「でも「オーバーロード」はそれを受理してくれなかった…ということですよね?」


っと知れった顔で聞くうみの質問に彼女は何も答えなかった。

いや、正確に言うとそのままだったので言い返す言葉が見つからなかった。


「…さすが青葉さんです。」


あっけなく却下された申請。

巫女ルビ、シスター「青玉(サファイア)」の不服の申込みをあっさりと却下した「オーバーロード」は一度下した命令を撤回しなかった。


「たとえ間違った命令だろうと私達はそれに従わなければなりません。私達はそういう仕組ですから。だから協力はします。ですが私とシスターは今後自分の立場を利用しても副会長に元の場所へ帰ってもらいます。もちろんあなたにも。」


決意に満ちた目。

たとえ人工的に作られた義眼とレンズの目だがうみはその中に宿っている確かな意地を覗くことができた。

これ以上の陸地生活はななにも、そして自分にも良くない影響を及ぼすことになりかねない。

そうなったら取り返しがつかなくなってしまう。


それを分かっていたこそ彼女は一刻も早く彼女達を元の場所へ送り返したかった。


「ありがとうございます。巫女様。」


そんな彼女の心を分かっているこそ言えるお礼。

うみはただその心だけは純粋に嬉しかった。


「でも私も、赤城さんも巫女から心配してもらうほどやわな人ではありませんから。」


淡々とした口調。

それは決しておごりや自慢ではない、極冷静な自分とななへの自分自身の考えであった。


「私達にはなすべきのものがあるという共有点があります。そのためなら自分のことなんていくらでも見捨てられます。」


たとえ相手の目の前で毒を飲まされることになってしまって成し遂げなければならない目標。

そのために自分自身などとっくに大昔に捨ててしまった二人。

その事実が改めて思い知らされたルビはただその深くて強い信念で輝いている青目を見つめることしかなかった。


「それに巫女様のお母様はとてもすごいお方ですから。彼女はいつでも正しい選択をすると私はそう信じています。」


そう言ったうみの目には既に全てが見えていた。


世界の均衡と共存を大事にしている「オーバーロード」ならきっとこのままなながかなと仲直りができず帰ってしまうことを何より恐れると。

たとえそのことによってななの身に何が異変が訪れてもななならきっとそれも含めて全部受け入れるということ。


ななのことをよく理解しているからこそ持てる確信。

うみはただななと同じくいつか訪れる破滅の時を待っていた。


***


「話しかけてみてって言われても…」


っと先の青葉さんからの話にすこぶるハードルを感じている私。

でも今の状況から考えると仕方がないことだと思います。


だって…


「あの人…確か…」


っと私の目に入った彼女はこのお嬢様だらけの学校の中でもダントツ目立つスーパーセレブの一人でしたから。


葵色の長い黒髪。

少し傾いた日から放たれる橙色の陽光に照らされて輝くツヤさたっぷりのみずみずしい褐色の肌はあまりにも艶めかしくて内在された人の本性を一気に引き起こしてしまう。

飲み込まれそうか紫水晶の瞳はまるで口を開けている魔界の深淵そのもの。

だがその致命的な美しさに人々はまた引き寄せられてしまう。

おしゃれな黄金の装身具。そして異国的な濃いめの化粧。


彼女の名前はこちらの言語で「黒木(くろき)クリス」。

種族は「夢魔(サキュバス)」で「Scum(美化部)」所属の広報係の1年生。

彼女は「Scum」の一推しアイドルでありながら魔界の人達にとっても最も高貴な身分と通用されている彼女の実家は魔界の王の一家。

つまり彼女自身は魔界の()()()なのです。


正確に言うと彼女はもう魔界の王様である「ファラオ」なのです。

でも正式に王座を譲ってもらうにはまず成年になる必要があるらしくて今は私達と同じ学生の身分なのですがあのただならないオーラと気品…その上、抑えきれず自然にダダ漏れている凄まじい色気…

さすが「魔界王家」の夢魔のお姫様っていうところなのでしょうか…


でも…


「一緒にする子に話しかけてみて。きっと私達のことを助けてくれるから。」


っと青葉さんは私にそう言いましたが私は今もその意味が全く把握できてないんです。


先の青葉さんのその話はきっと何か意味があるってなんとなく私はそう確信しています。

でも彼女と私が話をかけることによって彼女が私達の力になってくれるのかその関係性があるのかは全く見つからなくて…

普通に話を掛けたらそれでいいと思いますが青葉さんのその言葉がどうしても引っかかっちゃって…

一体私が彼女にどう話しかけたら彼女が私達の力になってくれるのでしょうか…


「あ…あの…」


ってなんか向こうから来た!?


「あ…!は…はい…!」


彼女から話を掛けてくることが全く予想できなかったせいか、それとも少し考え込みすぎたせいかとにかく思い切り慌てて彼女の呼びに応える私に


「きょ…今日はよろしくお願いしますね…?虹森さん…」


しおらしい笑みで今日はよろしくって話を掛けてくる黒木さん。


派手な見た目とは違ってなんだか私と似たような喋り方…

ってどうして私の名前を…?


っと少し戸惑っている私に


「す…すみません…!自己紹介がまだでしたよね…!」


今度はちゃんと自分のことを紹介しようとする律儀なお姫様。

私はそんな彼女におこがましいですがどことなく懐かしい親密感を感じたのです。


「く…「黒木(くろき)クリス」と申します。本名は他にありますがここではそういう名前となっています…に…虹森さんと同じ普通科1年で今年入学したばかりで至らないところもあると思いますがど…どうぞよろしくお願いします…」


なんだかすごく緊張しているような顔…

でも彼女は最後まできちんと私に自分のことを教えてくれたので私はそれに応えるために今度は自分から彼女に自分のことを知ってもらうことにしました。


「私は「虹森(にじもり)美森(みもり)」です。普通科1年で幼馴染の子と一緒にこの学校に通っています。」

「し…知ってます…「緑山(みどりやま)百合(ゆり)」さん…ですよね…?」

「ど…どうしてそれを…?」


でも私が自分のことをまだ最後まで言ったわけでもないのに私のことだけではなく既にゆりちゃんのことまで知っていた黒木さん。


それを聞いた私はふと彼女に対して大きな好奇心を抱えてしまいましたが


「わ…私…虹森さんと緑山さんのことが…子供の時から大好きだったので…」


案外その答えは私とゆりちゃんの過去に関わっていました。

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