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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第3章「カナナ」
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第73話

いつもありがとうございます!

「うわぁ…もうこんなに集まっている…」


長い石の階段を上ってやっと上に着いた私達は私達より一足先に神社に集まっている生徒達を見てその数に驚きを隠しきれませんでした。


「神社」の巫女様のお手伝いをするため放課後にも駆けつけてきた社務所の前に集まっている大勢の第3女子校の生徒達。

2年生達を筆頭にしてきちんと着替えまで済ませた彼女達は皆きれいな白衣と緋袴で自分達を着飾っていました。


穢れのない無垢で清純した姿。

まるで北大陸の言い伝えに出る真っ白な雪原に咲く彼岸花のように彼女達の姿はとても尊くて美しいものでした。

それに皆すごく可愛くてみずみずしくてこれだけでももうこんなに壮観になるなんて…

今日は色々感動することが多いかも…


「あ!青葉さん!」

「御機嫌ようー青葉さん。」


そしてそんな彼女達の間でも青葉さんの存在感は圧倒的なものでした。


「なんでそんなに遅かったんですか?皆待ってましたよ?」

「ごめんねーちょっと用事があって。」


青葉さんの登場に一気に動き始める生徒達。

特に彼女のことを憧れの視線で眺めている1年生達の雰囲気は爆発寸前でした。


「本物の青葉さんだわ…」

「きれい…後で家族皆に自慢しちゃおう…」


もはや彼女のことを神に匹敵する畏敬の視線で見つめている1年生達。

それほど彼女の存在はこの有名人だらけの学校の中でも圧倒的でした。


「ごめんね?待たせちゃって。」


何より彼女の最も怖いところはその恐ろしい親近感!

「百花繚乱」の速水さんがその高圧的で堂々とした威勢で相手をねじ伏せるタイプなら青葉さんは相手の心に潜り込んでその全てを掌握する。

この学校のトップを目指すという遠大は目標を持ってながらも彼女は同級生だけではなく1年生達にもすごく優しいくてもう入学ばかりの1年生達の間にも青葉さんに従いたいと言っている子はたくさんいます。


その証拠としてほら。


「あ…!い…いいえ…!私達は大丈夫ですのでお気になさらずに…!」


たった今青葉さんから待たせてごめんなさいって言われた音楽科の1年生の子達が今でも恐れ入りすぎて死にそうって顔をしているんじゃないですか。

青葉さんに声をかけられたら誰でもあんな風になっちゃうのです。私も多分あんな感じだったと思うし。

あ…ゆりちゃんならちょっと違うかも…


「緑山さんって初めて会った時、全然動じなかったんだから。まあ、私としてはその方が楽だから別にいいけど周りの反応がちょっとあれでね?」

「あ…なんか分かるかも…」


先のバスで私にゆりちゃんとのちょっとした小話を聞かせてくれた青葉さんはあんなにびくともしない人は初めてだってすごく驚いていました。

まるで自分のことが全く知らない人でも会ったようにゆりちゃんは青葉さんのことに全然反応しなかったそうです。


「そうでしたっけ。極めて普通な初対面だったと覚えてますけど。」

「いやいや。緑山さん、なんか私に全く興味なさそうだったから。なんかこう石でも見ている感じっていうか。私、あの時、あれ?私ってそんなに有名じゃないんじゃない?とか思っちゃったくらいだったから。」

「んー確かに渡しって基本的にみもりちゃん以外はあまり興味も持たないタイプですからそうだったかも知れませんね。でも私的にはそれが普通ですからそんなに思い詰めなくてもいいです。」


っと大したことではないってゆりちゃんは言いましたさすがにこちらの反応を見た後にはやっぱり信じがたいかも。


「みもりちゃんの巫女服…♥もう我慢できません…♥」


でもその一言で一発で納得してしまう私でした。


「チッ…芸能人だからといってなんでも勝手にしてもいいってわけじゃねぇっつの…」

「後からのこのこ現れてこっちには何の謝りもしないわけ?偉そうね。」


でも皆が青葉さんが好きってわけではないってことを今日ここに来て改めて私は知るようになりました。


百花繚乱(風紀委員会)」が先頭になっている神界の生徒達は他の生徒達とは違って彼女のことをあまり嬉しそうには思いませんでした。

そういうところか彼女こそ倒すべきのラスボスって思っているくらいです。


明らかに敵視している空気。

彼女のことを睨んでいる神界の人達の目には憎しみや嫌悪の感情がいっぱい詰まっていました。

肝心な青葉さんご本人はあまり気にしてないようですがこのビリビリした空気…私は超苦手かも…


青葉さんが「合唱部」から神界の生徒達を追い出した以来、魔界への神界の生徒達の感情はどんどん悪化する一方でした。

神界の入部も、活動も全部防いでしまった青葉さんはもはや神界にとって共通の敵。

青葉さんによって自分達の未来を防がれたことに彼女達は大きい怒りを抱えていました。


第3女子校は他の学校とは違って部活を重んじる学校です。

授業では学べないものを先輩や皆との部活で身につけ、未来のための糧にする。

特に「百花繚乱」や「Scum」、「合唱部」などの大型部はそこに属していたということだけでも彼女達が社会に出た時、大きなアドバンテージになります。


でも青葉さんが合唱部の今後の活動に神界の生徒は要らないと公表した後、この学校は一変してしまいました。

屈指の名門、第3女子校での活動の機会を失った神界の生徒達は青葉さんの方針に反発、直ちに「百花繚乱」の下に集って返り討ちしようとしました。

その一環として使われているのが現在最も女の子達に人気であるアイドルであり、私はそれがとても悲しかったです。


アイドル活動によって皆の結束力の強化を図り、外への広報も可能となる。

そのためには相手のことを徹底的にぶち殺さなければならない。

今の第3女子校のアイドルはそんな悲しい目的で行われるのが殆どでした。

私はそれが悲しくて苦しくて仕方がないんです。


でも一番苦しいのはその全てを青葉さんが仕組んだことでそんな青葉さんのことをどうにかできなくて苦しんでいる先輩のことでした。


「だって先輩…いつも苦しそうだったから…」


青葉さんのことが出る度に何故かすごく悲しそうな顔になってしまう先輩のことを見たらもうこんなに胸が痛くて…

青葉さんはあんなに優しくていい人なのになんでそんなことをしなければならなかったのか…

なんとかしたい気持ちは山々なんですがどうすればいいのか…


「はいー皆、注目してくださいー」


おっと。こうしている間、もう始まりそうです。

青葉さんのことも気になりますが今は目の前のことに集中しなきゃ…!


私が少し考え込んでいた間に社務所の奥の方から現れた巫女様はきれいな声で私達の注目を集めて今日のお仕事の説明を始めました。


「本日お忙しい中、お助けいただき感謝いたします。私は当神社の「宮司(ぐうじ)」である「巫女」「紅玉(ルビー)」です。セミナーの準備が間に合わなくて困っていたところ、このようにたくさんの方々がお助けのために駆けつけてくださって恐れ入ります。皆様にはまず自分の担当の箇所のご確認お願いします。各自の持ち場と仕事についてはこちらの張り紙で確認できます。1年生の方々は経験者の2年生の指示に従ってください。2年生の方々には来年のためにもご指導よろしくお願いします。」


っと1年と2年にそれぞれの言い残しの言葉をお預けした後、壁に貼っておいた皆の名前とやるべきことが書かれている張り紙のことを示す巫女様。

でも人混みで遠くて私にはあまりよく見えませんね…


「みもりちゃんは庭のお掃除ですね。私は副会長と一緒に巫女様のサポートです。」


ってゆりちゃん、あれ見えるの!?


ちょっと見ただけであんなに遠いところまで、しかもそこに書かれている字まで完璧に読み上げるゆりちゃんのすごい目!

ゆりちゃんがすごいっていうのは今更のことなんですあんなに遠いところの字まで読めるなんてやっぱすごいかも…


「まあ、長年鍛えてきた小技の一つなんです。私は子供の頃からみもりちゃんのことをずっと観察してきましたから。どこからでも対応できるように。」

「へえーそうなんだー」


ってなにそれ!?普通に怖いんですけど!?


でも庭のお掃除…か。

神社でのお手伝いにしてはちょっと地味なところもあるかも…

でもやるからにはちゃんとやらなきゃ!


「かな先輩…?」


っと張り切っていた私の目については今朝風邪を引いたって学校をお休みしてたかな先輩でした。


他の生徒達を一緒にもう巫女服への着替えを済ましておいたかな先輩は普段とはまた別の雰囲気だったので私はとても新鮮だと感じました。

いつもやっているツインテールの髪型ではなく丁寧に結びあげた金髪と端正な巫女姿が不思議な感じでマッチされているかな先輩は大勢のきれいな生徒達の間でもぐっと目立ちましたが


「あ…モリモリ…」


私のことに気づいた時の先輩は何故かすごくぎこちない表情をしていました。


「先輩、お体の方はもう大丈夫ですか…?」

「あ…うん…まあ…」


なんだかすごく言いにくそうな顔…

どうやら私に風邪を引いたって嘘をついたことを気にしているようです。


見れば見るほど嘘が苦手な人。

後輩に嘘をついたことに内心恥じらいを感じていたのか先輩はなかなか私と目を合わせてくれませんでした。

ここはやっぱり知らないフリをして気遣ってあげた方が良さそうかも。


「ひどい風邪じゃなくて本当に良かったです。こう顔が見られてほっとしました。」

「う…うん…ありがとう…」


初めて出会った時の逞しい姿が全く思い出さないほど控えめの先輩。

そんな先輩に自分はあまり人を軽気付けるに向いてないのかなっと一瞬怯んでしまう私でしたがここで私が引いちゃったら先輩がもっと落ち込む。

そう思って私は例の計画のためでもまずなんとか先輩を元の調子に戻そうと決めました。


「でもさすが先輩です!巫女服ももうこんなに完璧にこなすなんて!」

「そ…そうかな…?でもモリモリの方がもっと似合うと思うよ…?ほら、モリモリって髪も真っ黒だしお人形さんみたいに可愛いじゃん?」

「ええ…?そ…そうなんですか…?」


な…なんだか逆にこちらが褒められちゃったかも…うう…なんかこれ、ちょっと恥ずかしい…


「ごめんね?心配掛けちゃって。でももう大丈夫だから。」


多分私のことを安心させてあがたかったと思う先輩の言葉。

でも先輩は何故か以前よりもまして心を決めたような強い目をしていました。


私はそんな先輩にただ


「はい。」


そう言いながらゆりちゃんが言った先輩の「大丈夫」を信じることにしました。


「じゃあ、私は倉庫整理の指示役があるから後でね?あ、服は中で着替えられるから。」

「あ…!はいっ…!ありがとうございます…!」


っと奥の方を示し先輩はそれを最後に何人かの1年生達を連れて倉庫の方へ向かいました。

私はそんな先輩の背中を少し複雑な気持ちでしばらくぼーっと眺めてしまいましたが


「みもりちゃん!早く着替えましょう!ゆりが手伝ってあげますから♥」


その後、私の巫女姿に張り切っていたゆりちゃんの手に引っ張られてその複雑な感想もそんなに長くは持ちませんでした。

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