第70話
なんと!ご評価いただきありがとうございます!無事に運転試験にも合格したのに何とありがたいこと!応援誠にありがとうございます!
いつもありがとうございます!
「それより本当に先輩の方は大丈夫なの…?」
「だからもう大丈夫ですって何度も言ったんじゃないですか?みもりちゃん。本当に心配性なんですね、みもりちゃんは。」
「だって…」
巫女様のお手伝いのためバスでの移動中、私は隣のゆりちゃんに何度も先輩のことを聞きましたがその度にゆりちゃんは
「もう大丈夫です。だからみもりちゃんは自分のやるべきことに集中してください。」
っとそう言ってくれました。
それが本当に大丈夫って意味なのか、それとも単なる私のための気休めなのか。
今の私にはゆりちゃんの意図を計り知る材料はあまり持ってないんですが
「うん…じゃあ、今度こそ信じるよ。ゆりちゃんのこと。」
私は今までやってきたようにただ自分の伴侶と言ってもいい大切な幼馴染の言葉を信じ切ることにしました。
「ありがとうございます。でも先輩は決して副会長のことを見捨てたりはしませんから。」
「う…うん…!そうだよね…!?」
風邪のせいで学校を休むことになったかな先輩のお見舞いに行ってきたゆりちゃん。
そこでゆりちゃんは先輩と色んなことを話してきたそうです。
私やゆりちゃん自分のこと、赤城さんとかな先輩自分のこと。
お二人さんに間に起きた異変。そしてかな先輩が赤城さんのことを自分の傍から離さなければならなかった理由。
それは私が赤城さん自信から聞いた話と何もかも全部一致するものでした。
「多分本人達もすごく悩んでいたんでしょう。あの時、あんな形で離れ離れになったことを。」
「うん…そうだと思う…」
きっと苦しかったんでしょう。自分にはどうでもできない状況に押されて好きな人に本当のことは言えずに互いを傷つけ、赤の他人のようになってしまうのは。
私だったらきっと耐えられなかったと思います。
「だって私…ゆりちゃんがいない人生なんて考えたこともないから…」
「みもりちゃん…」
代わりもできたい大切な人。そんな人と自分の意志とは関係なくあんな風にただ存在だけでお互いを傷つける仲になるの、私は嫌です…
「だからなんとかしたい。先輩のことも、赤城さんのことも。」
今もはっきり覚えている赤城さんの寂しそうな顔。
彼女はもう自分にはどうすることもできない自分の心のせいで苦しんで迷っていました。
彼女が迷えば迷うほど、苦しめば苦しむほど先輩にまた傷を与えてしまう。私はその状況がなんとかしたかったんです。
「あなたならそう言うと思いました。」
「ゆりちゃん…?」
そっと私の手を握ってまるでそう言ってくれてありがとうって言っているようなゆりちゃんの話に私は一瞬戸惑いを感じましたがまもなくすぐ分かってしまいました。
きっとゆりちゃんも私と同じ気持ちだったと。
「私は結局あなたのためにしか動きませんから。こんな私に他の人のためなんて今更なんですよ。」
っとこういう役目は私に似合うってまるで自分からはなんにもしなかったと言っているようなゆりちゃん。
でも私はゆりちゃんの優しい心があったこそもっと進展できたと思います。
だってもしゆりちゃんが先輩の本当の気持ちのことを聞いてくれなかったならきっとこのまま先輩は本当の気持ちを伝えられず赤城さんと別れてしまったんでしょう。
だから今ゆりちゃんがかな先輩と赤城さんのことに気を使ってくれたこと、すごく感謝しています。
「いつもありがとう。ゆりちゃん。」
「いえいえ。あなたからもらったことに比べたらお安い御用です。」
「え?私、ゆりちゃんに何かあげたっけ?」
っと聞く私にゆりちゃんはただ
「うふふっ♥内緒です♥」
おちゃめさんみたいな表情で笑うだけでした。
「それにしてもまさかかな先輩が転校まで考えてたなんてまじショックだよーしかも私達には黙って。風邪を引いたことでもないってのはともかく本当に衝撃だったよ。」
「きっと本人もすごく悩んでいたんでしょう。それほど副会長のことが大事ってことです。そんなに怒らないで。ほら、ゆりの汗ばむ靴下あげますからご機嫌直してください。」
いらんわ!!ってもう手に握らせているし!うわぁ!?なにこれ!?ポカポカして脱ぎたてじゃん!?
「かな先輩の転校の件なら私がびしっと叱りつけてあげましたから。だからみもりちゃんはいつも通りにしてください。」
「うん…分かった…」
ゆりちゃんの脱ぎたての靴下のせいであまり話が頭に入らないんですがとにかく普段と同じく行動すればいいってことですよね?ゆりちゃんがそう言いましたから私はただ信じるだけです!
「それよりみもりちゃんの方こそ大丈夫なんですか?副会長、結構気難しい人ですからたまには私も手に余りますが。」
っと今度はゆりちゃんの方から私と赤城さんのことを心配してきましたが私はそれに関しては今度は私の方から大丈夫って言ってあげたかったんです。
だって赤城さん、私のことを信じて自分のことを話してくれましたから。私の気持ちを受け入れてくれましたから。
私はただ赤城さんのその心に自分なりにちゃんと応えるつもりです。
「そうですか。私もお手伝いしますから一緒に頑張りましょうね?」
「うん!ありがとう!ゆりちゃん!」
そうやってゆりちゃんは改めてかな先輩と赤城さんの仲直り大作戦に協力することを約束してくれました。やっぱり私のゆりちゃんはとても優しい子なんです!
なんだかやる気が出てきましたね!よーし!やっちゃいましょう!
「あら?こんにちは。仲良しのご婦婦さん達。」
「青葉さん!」
っと張り切っていたところに私達の前に現れたのは今朝も会った「合唱部」の部長、「伝説の歌姫」の青葉さんでした!
いつの間にか停車しているバス。
その乗り場で彼女は私達と同じく「神社」のお手伝いに行くため私達が乗っているバスに同乗しました。
「奇遇ね。よく会うね、私達。」
「は…はい!お…お疲れ様です!」
「そんなにかしこまらなくてもいいってー私と虹森さんはもう友達でしょ?」
「と…友達…!」
いきなりの青葉さんの登場に慌てている私になんと「友達」って言ってくれるかっこいい青葉さん!
その言葉があまりにも恐れ多い私はどう答えたらいいのかただ迷うばかりでした。
「虹森さんのそういうところ、可愛くて私好きなんだ。ね?緑山さん。」
っと私の隣のゆりちゃんに話しかける青葉さんでしたが
「婦婦…私とみもりちゃんが婦婦…」
ゆりちゃんは未だに先の「婦婦」という単語に捕らわれているままでした。
「あははっ!本当虹森さん一筋なんだね!緑山さんって!お隣、いいかな?」
「は…はい!どうぞお座りください!」
「だからそんなに堅苦しくしなくてもいいって。」
っと青葉さんは私からの控えめの態度のことを遠慮しましたが何と言っても青葉さんはこの屈指の名門の中でも抜きん出ている存在ですから!こうなるのも無理もありませんよ!
「っと言っても私にはあまり自覚とかないから。私はできるだけ普通に接してもらいたいな。あ、飴食べる?」
「あ…ありがとうございます…」
「ほら、緑山さんもどうぞ。」
ちゃんとゆりちゃんにもポケットからの飴を渡す青葉さん。
彼女の制服のポケットから出たのは青葉さんの大好物という桃味の飴でした。
「い…頂きます…!」
包装紙を剥がして口に入れたその桃色の飴は溶ける度にほのかな甘味を口の中に広めつつ些細な幸せを与え、すごくいい気分にしてくれました。
「意外ですね…青葉さんも飴とか好きだったなんて…」
私は青葉さんみたいなすごい人は皆珍しい珍味とかそういう食べ物ばっかり食べると思いましたから…
「そう?でもそれを言うと私の方こそびっくりしたよ。うちの実家は普通な定食屋さんだけどここに来たら皆緑山さんみたいなお嬢様なのに食べるのは私とあまり変わりなくて。
それに私、コンビニとかもよく行くし駄菓子も結構好きだから。セブンの水ようかんって結構美味しいよね?」
「あ…!私、雑誌で見たことあります…!」
確かお母さんが買ってきた雑誌に書かれていたんです。青葉さんの両親は芸人とかじゃなく普通な定食屋さんで芸能界とは無関係な方々なんだって。
「みもりちゃんのお母さん、青葉さんの大大ファンなんです。いつも頑張っている姿が可愛いって。」
「そう?嬉しいなー」
ゆりちゃんが言った通りにお母さんにとって青葉さんは一押しの「アイドル」なんです。青葉さんのファーストアルバム、しかも限定版まで持っているし。あれ、ネットで結構高いんですよ?もうプレミアまで付いて。
昔からアイドルとか可愛いものとかが大好きでしたし私とゆりちゃんの「フェアリーズ」の活動もお母さんの案でしたから。
そしてその娘の私もとんでもないアイドル好きで遺伝っていうのは本当に恐ろしいものですね。
「いつかお会いしたいな。ファンは大切にしないと。」
っと青葉さんはいつかうちのお母さんに会ってくれることを約束してくれました。
「地元では結構有名なんだ。何と言っても「人魚」の定食屋さんって珍しいから。」
娘のために人魚の里から離れて陸地での生活を選んだという青葉さんの両親。
青葉さんの実家は水上のお店らしくてとても評判がいいです。お母さんも行きたがりましたがなんかいつも予約がいっぱい埋まっていて結局一度も行けなかったんです。
「あはは…なんかデビューしてからお客さんが増えてね…いわゆる「聖地巡礼」ってやつかな?」
「す…すごい…」
有名人っぽい…実際「超」って字が付くほどの有名人なんですけど…
「私達の時だってあったんじゃないですか?みもりちゃん。聖地巡礼。」
「あれは単なるガイドだったじゃん…」
っとゆりちゃんは私に昔のことを思い出させてくれましたがあれは単に私達がお客様達を街の色んなところに連れていく観光ツアーみたいなものでしたから…
とてもそういう大げさ物ではなかったんですよ…
「そう?でも私がお客様だったら絶対喜んでたと思うんだけど?だって可愛いじゃん。「フェアリーズ」の二人。」
っといきなりスマホで私とゆりちゃんの古い写真を取り出して私に見せつける青葉さん!
もう探してみたんだ!この人!な…なんか恥ずかしいんですけど!?これ!?
「いいじゃん、別にー虹森さん、今はこんなにボインボインなのにこの時はめっちゃちっちゃかったんだ。可愛い~」
「ボインボインなんて…!」
「みもりちゃんのボインボイン♥」
触るな!コノヤロー!
うわぁ…!なにこれ…!昔の写真とかめっちゃ恥ずかしんですけど…!?しかもよくこんなふりふりした服着られたものなんだ…!
「どうして?お姫様みたいに可愛くて私は好きよ?」
「そうですよ、みもりちゃん♥あ、ちなみに私、今も持っていますから♥この時のみもりちゃんのお・パン・ツ♥」
なんで持っているの!?
「でも…」
青葉さんのスマホの中で子供のゆりちゃんと一緒に笑い合っている昔の自分のことを見ているとなんていうか…
ちょっと懐かしくなりますね。こう胸がキューって…この時の私はこんな風に笑えたなんて…
私、またこんな風に思いっきり笑うようになれるのかな…
「あ!また暗い顔している!ダメじゃない。今から「神社」に行くというのにそんな顔したら。」
「あ…すみません…」
自分も知らないうちにまた暗い感情を顔に映してしまったのかすぐ私のことに気がついた青葉さんは
「ほら、笑って。笑わないと緑山さんがまたパンツとか盗んじゃうかも知れないよ?」
「そうですよ♥みもりちゃん♥」
ゆりちゃんと意気投合して私のことを元気づけようとしました。
私はそんな青葉さんとゆりちゃんの気持ちが嬉しくて嬉しくて…
「今日は大人っぽいワインレッドですね♥みもりちゃん♥」
「虹森さん大胆!」
ってもう捲っているし!
「あれ?そういえば赤城さんがいないわね。」
「あ、赤城さんなら巫女様と生徒会室に用事があるって後で合流するそうです。」
「そうなんだ。」
私達が赤城さんと一緒じゃないことに気が付いた青葉さんは早速私に彼女の行方を聞きましたが赤城さんは他の理由で私達と別の道で「神社」に来る予定なんです。
「多分セミナーの準備なり色々なのでしょう。副会長は色んな方々に頼られていますから。」
「うんうん。できる女だよね?赤城さん。」
この学校に通っているたくさんの生徒達にとって赤城さんが大きな支えとなっているというゆりちゃんの話に積極的に同意する青葉さん。
それに関しては私も異見はありませんがそんな赤城さんがああいう計画を考えていたってことはやはり信じがたいなんです…
「合唱部」「百花繚乱」「Scum」などの大型部を抑えるために他の弱小部を統廃合させ徐々にその弱体化を誘導する。
「わたくしは学校の一番のアイドルになってわたくしのことをあの人に見せたかったんですわ。」
そう言った彼女の気持ちが決して分からないものではありません。
でも私はやっぱり赤城さんのような優しくてかっこいい人が他の皆が傷つくような手段を自ら選ぼうとしているのがどうしても信じられないんです。
「それほどの価値があるってことなんだ。赤城さんにとってね?あの人は決して無駄なことはしないから。」
「青葉さん…」
彼女のことならライバルの自分が彼女自身よりも詳しくて知っているつもりだと話す青葉さん。
それだけの赤城さんへの確信が彼女の中には存在していました。
「あの人は私にはできないほど極めて合理的なのよ。会長もきっと赤城さんのそういうところを見込んでいたと思う。そうじゃなかったならいくら世界的なピアニストだろうとあの「Fantasia」に入れてもらえなかったんじゃないかな。」
「確かに会長ならありえます。」
自分が知っている会長さんなら十分ありえることだと青葉さんの話に納得するゆりちゃん。
ゆりちゃんは会長さんのことを人の本質を見抜く目を持っている数少ない人だと言いました。
「人の頭が見えることとは別に会長には相手の可能性や本質が見定められます。多分今回のことも想定内だったと思います。」
「赤城さんが次のステップに進めるために必要な過程…って感じかな?」
まるで会長さんの真意を見抜いてきたような二人。でも私も二人の意見に薄々納得しています。
何と言っても会長さんは先輩や他の人と同じくとてつもなくお人好しで世話好きですから。ただ自分が出たら単なる偽善にしか見られてしまうかも知れないから自分からではあまり出ない感じです。
「人の考えが見えるってそれほど人の反感を買うことなんです。」
そう言ったゆりちゃんの話は実に本当のことを示していましたが私はやっぱりその事実のことが悲しかったんです。
「会長は赤城さんに教えてあげたかったと思う。あんなやり方で一人で輝くことより皆で成長しながら光を求めることを。」
「光を…」
だから私にあんな頼み事をしたんですね…赤城さんのことを独りに感じさせないで欲しいって…多分私に彼女のことを頼んだ皆が知っていたんでしょう。このままだと彼女は本当の独りぼっちになってしまうってことを。
私は私を信じて彼女のことを頼んだ皆の期待を裏切れませんでした。
「私…やっぱり赤城さんのことを放っておけないんです…」
そう思った私が出した答えはただ一つ。
彼女の大切な人を彼女の傍に戻らせること。それだけが彼女への救いだと私は強く思っていました。
「虹森さん…」
もし誰が頼んでなかったとしても私は多分こうしたかったと思います。だってやっぱりそういうの、悲しすぎますから…
「だからゆりちゃんにも、青葉さんにも二人のことを協力してして欲しいです…!私はやっぱり赤城さんのことを独りにはしたくないです…!」
そう思った私の本当の気持ちを分かってくれたのか
「うん。もちろんだよ。」
「はい。私にもお手伝いさせてください。」
青葉さんも、ゆりちゃんも喜んで私への協力を約束してくれました。
「でも一体何からすればいいのか…」
っと張り切ったのは良かったんですが実際の計画は未だにノープランのまま…
そんな時、
「じゃあ、私にちょっと考えがあるんだけど。」
青葉さんは自分の中にひらめいたある考えのことを私に聞かせてくれました。




